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異世界行ったら……  作者: 片馳 琉花
第2章 王立騎士団 編
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1.出会い

いつもありがとうございます。

ここから忍目線の第2章始まります。

本当は別の作品としてわけるつもりでしたが、そんなに長くならなそうなので(ハヤテの時も言ってた)第2章として、繋げることにしました。

シノブもどうぞよろしくお願いします。

ちなみに、わけるつもりだった別作品時のタイトルは、


闇騎士(ダークナイト) その名前で 呼ばないで


です。

ダァン!


「……できた!」


それは、三歳から通っている体操教室で初めて月面宙返り(ムーンサルト)がキレイに決まった日の事だった。


「まま、あのおにいちゃん、すごいねぇ!!」


声のした方を見てみれば、僕の方を見て、キラキラとした瞳で一生懸命拍手をする男の子。

後で先生に聞いてみれば、自分より二歳歳下の子で、小学校に上がるから色々習い事を探している中で、ここにお試し体験で来ていたらしい。

そして正式にこの体操教室に入会することが決まった。

入会のキッカケは、僕の決めた月面宙返り(ムーンサルト)がカッコよかったからだと聞いて嬉しくなった。


次の週から練習に来るようになった子の名前は疾風(はやて)

教室で顔を合わせると、子犬みたいに僕のところに駆け寄ってきた。


「あ!おにいちゃん!」

「こんにちは、疾風(はやて)。今日からよろしくね。僕の名前は(しのぶ)。漢字で書くと忍者の『忍』って言う字だよ」

「にんじゃ!?かっこいいねぇ、ぼくにんじゃすき!おにいちゃんのなまえはにんじゃの『にん』?」

「そうだよ」

「おにいちゃんは『にん』ちゃん?……にーちゃん!!」


ぶは!


ニコニコの笑顔の疾風(はやて)の頭を撫でながら僕は吹き出した。


「にーちゃんって……それ、お兄ちゃんと呼び方そんなに変わってないじゃん!」


それから僕と疾風(はやて)は教室で会う度おしゃべりをした。

僕の練習を、自分の練習そっちのけで夢中になって見ていた疾風(はやて)が先生に怒られたり、疾風(はやて)が出来ない技を僕が教えてあげたり……


そんな日が一年ほど続いたある日、僕は先生から別の教室に行ってみないかと勧められた。

その教室はスポーツ特待生育成に力を入れていて、成果を出せれば特待生枠で進学も出来るから、と。僕も男子新体操に興味があったし、そちらの方が設備も良かったから移る決意をした。

疾風(はやて)との最後の練習日、目に涙をためて「向こうでも頑張ってね」と言われた時は、僕も泣きそうになった。


新しい教室に移り、色々な大会で賞をもらえるまで実力をつけた僕はその教室の推薦枠で無事、スポーツ特待生としてエスカレーター式の中学に進学することが出来た。

順風満帆に見えた僕の体操人生が急な終わりを告げたのは高校一年の時。

練習中の着地に失敗して、しばらく怪我で練習に参加出来ない日々が続いた。

怪我が治り、ようやく練習に復帰したものの、無意識に怪我した場所を庇ってしまい、その少しのズレが団体競技には致命的なズレを生んでしまっていた。

団体の新体操はシンクロが命。一人がズレるとチーム全体のズレに繋がる。

そこからチームメイトの嫌がらせが続き、僕は部活に顔を出さなくなった。

スポーツ特待生として入学していたため、先生たちから部活に出ろ、成果を出せ、と言われるのが煩わしくなり学校にも行かなくなり、学校も退学した。

そのまま一年以上部屋に引きこもりゲームや動画に明け暮れていたある日、ふと見ていたゲーム実況動画の合間に流れてきたオススメ動画。

そこから聞こえてきたのは、


『パルクール集団:チーム『忍-SHiNoBi-』!今日のパルクール講座が気に入った方はチャンネル登録よろしくぅー!次回はうちのチームのリーダー、Hayateのフリースタイル講座!次回もお楽しみにぃー!!』


と言う明るい声。

ハヤテ?

懐かしい名前に思わずクリックして再生してみると、映し出された次の動画には、体操教室で一緒だった疾風(はやて)が華麗な技を決める姿が。


「……すごいな……」


疾風(はやて)が技を決める度、暗闇しかなかった僕の心に光が差した。

あんなに小さかった子が、今はこんなに輝いている。

僕が今あの子に再会したとして、その時『疾風(はやて)、久しぶり!忍だよ!』と、胸を張って名乗れるだろうか。

なんだか途端に恥ずかしくなった僕は、家族に謝り地元の高校に再入学の手続きをしてもらった。

また一年からのスタートになるけど、今はとにかく前に進もう。

いつか疾風(はやて)に会っても恥ずかしくないように。


とはいえ、長い引きこもり生活で人との接し方がわからなくなってしまっていた。

高校に入学し、はや一ヶ月。

未だにクラスメイトとの交流はない。

そもそも何故か話しかけるとほとんどの人が高確率で驚くのはなんでだろう?

驚かせると悪いから、とますます声をかけにくくなり気配を殺して過ごすようになった。

なるべく人の目を見ないように、と俯き気味に登校するのが日課となったある日の朝、学校近くの土手で朝から元気に騒いでいる陽キャ集団にぶつかられそうになった。

思わず睨みつけたものの、そこに居たのはあの疾風(はやて)


──まさか、同じ学校だったとは……


まだ、陰キャから抜け出せない自分は合わせる顔がない、と早足にその場を去りいつも通りの一日が過ぎたその日の放課後。


「服部!」


担任から呼び出しをくらった。


「どうだ?学校慣れてきたか?」

「……はぁ、まぁ……」


担任の先生にすら目をまだ合わすことが出来ず、会話もままならない。

僕の事情は既に聞いているのか、それ以上の詮索をしてこないので助かった……が。


「服部はなぁ……歳上なのを気にしてるのかもしれないが、もう少しクラスのみんなに馴染めるといいんだがなぁ。別に一人になりたい、って訳でもないだろ?」

「……はい」

「一人になりたいって言うなら無理に、とは言わないが、もし違うのなら何か部活に入ったりとかしてみないか?クラスで馴染むのが難しかったら、まずは趣味の合いそうな友達から作ると案外そこからいい方向に向かうかもしれないぞ?」


これ、部活のリストな。と渡されたプリントには色々な部活がピックアップされていた。


「前の学校では男子新体操やってたんだっけ?ただうちには新体操部はないから、それ以外で面白そうだなと思う部活があったら見学に行ってみろ。とりあえず今日帰ったらそれ、目を通してみてくれよな」

「……はい」


プリントを手に職員室を後にすると、家へ帰る支度をする。

……あ、そうだ。いつもやってるオンラインゲームで新しいエリアが解禁するって言ってたよな。新しい武器とか出るかな?帰りにコンビニでギフトカード買って帰ろう。


──それが全ての始まりだった。

向かった先のコンビニでレジに並んでいると、後ろに並んだ人から視線を感じたので振り返る。

そこにいたのは水やサンドイッチを抱えた疾風(はやて)だった。

僕の目は驚きに見開かれる。

疾風(はやて)がいた事に、では無く、その後ろから迫り来る大型トラックを見て。


「──……!!……うしろっ……!!」

「え?」


思わず叫んだものの、間に合うはずもなく、疾風(はやて)が振り返った瞬間そのトラックはガラスを突き破り

僕と疾風(はやて)の眼前に迫ってきた。


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