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異世界行ったら……  作者: 片馳 琉花
第1章 緑珠守護団 編
24/226

24.知識は力②

23話のタイトル、今回のタイトルに合わせて変更しました。内容は変わっていません。

「ほら、前に言ったでしょ。宝珠動かしちゃうと災害起きたり疫病流行るって。俺の村も疫病でやられちゃってさ。俺はどうにか回復したんだけど家族はダメだったんだよね」

「……他の村の人達は……?」

「んー、何人かは回復したけど結局村としてはやって行けなくなって散り散りになったかな。俺はその頃まだ十歳のガキだったし、他に行く宛がなくて路頭に迷いそうになってたんだけど……たまたま近くを巡回してた宝珠騎士団に拾われて、そのまま王都に連れてってもらったんだ」


あまりに辛い過去をあっけらかんと話すロバート。明るく振舞ってるけどいつもより下がった眉が、どうにかその辛さを乗り越えたことを物語っていた。

十歳で親もいなくて、知らない場所で生きていくなんて、相当辛かっただろう。


「まぁ、宝珠の災害は仕方ないとはいえ、なんで俺が……とは思ったけどね。だからこそ俺みたいなのを増やさないためにも宝珠は守っていかないと!」


ガッツポーズを取り、笑顔で前を向いて生きていくロバートの姿を見て、俺も早く緑珠守護団(ここ)に馴染むよう、さらに努力しようと決めた。

そのためにはやっぱり知識が足りない。


「宝珠って緑珠守護団(ここ)の他にも色々あるんだろ?どれくらいあるんだ?」

「とりあえずわかってる限りで6つ。王都にあるのは光珠。守ってるのは俺らの本隊の王立騎士団。あとは、ここが蒼珠」


指したのは、海の真ん中にある島だ。


「で、ここは紅珠。ここが俺らの緑珠」


紅珠はどうやら火山帯の山の中にあるようだ。

そして緑珠守護団(ここ)の森はかなり大きい。王都に行くのに三日って言ってたけど、森を抜けるだけで二日はかかりそうなんだけど……

そしてこの森と同じくらいの砂漠がある。


「この辺りの砂漠地帯に黄珠があって、あとはこの大陸に黒珠」


黒珠のあると言う大陸は地図上黒く塗られ、地形がほとんど分からなかった。


「黒珠だけは守護団が居ないんだ。なんせこの大陸に行けないから守りようがないんだよ」

「大陸に行けない?」

「そう。何か特殊な結界みたいのがあるらしくて、下手に近寄ると波に飲まれちゃうって聞いたよ」


ん?


「誰も行けないなら、なんで黒珠があるってわかるんだ?」


俺の疑問に答えるべく、数冊の本に手を伸ばすロバート。


「昔の文献見ると、一昔前まではあの大陸と交流があったみたいなんだ。その時に黒珠を見た人がいる。ただ、ある時を境に闇に閉ざされてしまったらしい。多分その時に黒珠になにかあったんだと思うけど」


えぇ、大丈夫?魔王とかいない?


「王都にある本隊がさ、光珠の守りをしつつ、黒珠のもとへどうにか行けないか色々やってると思うんだよね。もし黒珠気になるなら王都の本隊に紹介状出せるからね」

「いや、行かないし!」


逆に近寄りたくないんですけど……

俺がお断りを入れるとロバートは安堵の表情を浮かべた。


「よかったー、せっかくハヤテ緑珠守護団(ここ)に馴染んできたのに王都に行かれちゃうかと思ったよー」

「俺、まだ緑珠守護団(ここ)の人たちに恩返し終わってないから。もっと頑張って、早くみんなの役に立ちたいんだよ」

「恩返しだなんて……!俺たちもハヤテが来て、毎回驚くことやってくれるから前より楽しく過ごせてるよ。だからそんなに気にしなくていいよ」


バン!と、ロバートは俺の背中を叩く。


「いってぇー!」


思ったより痛かったことに段々おかしくなってきて、俺が笑い出すとつられてロバートも笑い、なぜか二人で爆笑し始めてしまった。


「おう、お前ら楽しそうだな」


ずし、と俺の肩が急に重くなる。見上げてみれば俺の後ろに隊長が立っていた。

痛い痛い、潰れるー!


「隊長、ハヤテ潰れてるっす!」

「おー、悪い悪い!力加減がわからなくてよ」


いや、絶対わざとだった……


「隊長、とりあえず明日俺とハヤテで森を一周してくるっす。多分ハヤテならできそうな気もするんですけど一応。もし一周できれば巡回に混ぜても大丈夫だと思うんで」

「そうだな、それで頼む。俺たちは緑珠確認した後、森の主(スフェーン)の様子見てくるわ。最近ずっとあの辺り彷徨いてるからよ」

「了解っす。じゃぁ……」


くるっと、こちらを向きロバートが声高に言い放った。


「ハヤテ、明日は森を走って一周するよ!」


へ!?

森ってさっき地図で見ためちゃくちゃデカいやつだろ?

それを馬じゃなくて走って一周!?


「走ってって……あの森だろ?あの馬で何日もかかりそうな……」

「そりゃ普通に行ったら何日もかかるよ。だけど今日川でやったみたいに風魔法纏って走れば何倍も違うから。ただハヤテの体力と技術面は心配ないとして、問題は魔力なんだよなぁ。魔力回復薬何本持っていけば足りるかな……たくさん持ってくと走りづらいよね?」

「あぁ、俺の魔力量、カスカスだもんな……」

「本当はもっとゆっくり増やしていってあげたかったんだけどねぇ」


うーん、と二人で考えてみるも一晩で魔力は増えないし、結局魔力回復薬に頼らなきゃいけないのは目に見えてる。

マジックバッグみたいに無限にものを入れられるバッグがあればいいけど、ここにはないみたいだし。

なんとか小さくできねぇかな?

頭の中で、回復薬をおにぎりのように、ギュッギュッ、と握っている妄想をしていて、ふと思った。

ギュッと圧縮……?

とりあえず試してみるか?


「なぁロバート。今魔力回復薬持ってない?」

「いやー、俺必要な時ヘンリーせんせーのとこもらいに行くから持ち歩いてないんだよね」

「じゃあもらってくる!」

「あ、待って」


席を立った俺の手を掴んで待ったをかけると、ロバートは向こうの席で談笑をしていたライアンへ声をかける。


「ライアン、魔力回復薬ちょうだい」

「魔力回復薬?いいけど何すんだ?」


腰に下げていた小さいカバンから魔力回復薬を出すと、ほいっ、とこちらへ投げる。

それをキャッチし、ロバートは俺に手渡した。


「はい、回復薬。それどうするの?」

「ちょっと実験。あ、これ失敗して無駄にしたら怒られる?」

「何やったかにもよるけど、まぁ最悪ヘンリー先生の手伝いすれば大丈夫だと思うよ」


それくらいならいくらでも手伝うぜ!

なら、と、魔力回復薬のビンを両手で包み、火の魔力を身体に巡らす。

イメージは、魔力回復薬の水分の蒸発。

ビンの中で水分のみ蒸発させ、回復薬の成分のみ凝縮させていく。

しばらく意識を集中させ、手の中のビンを見てみると……


──カラン。


ビンの中に青い塊が出来上がっていた。




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