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異世界行ったら……  作者: 片馳 琉花
最終章 緑珠奪還 編
202/226

2.眠り薬を作るには……

「その前に……実は、その瘴気を伴った落雷に打たれた者の意識が戻らないんだが、何か回復させるのに心当たりはないか?」

「落雷に打たれた?!」


え、雷に打たれたってこと?!

意識ないどころの騒ぎじゃなくない?命に関わると思うんだけど……


「怪我とかは大丈夫なんですか?」

「あぁ、回復薬でそこはどうにか。それに元々自身の魔力に雷の耐性を持っていたようで大事には至らなかったんだ」


にーちゃんが問いかけるとテセウスさんはそう答える。その答えを聞いて、は、と顔を上げたのはエレンだった。


「もしかして、それって……?」

「あぁ、ジョンだ」

「ジョン?!」


思わぬ名前に俺たちは驚く。

ケインさんが言ってたジョンの状態はテセウスさんに聞けってこういうことか……

でもなんでジョンが雷に?地下牢にいたんじゃなかったっけ?


一人だけ何故か心当たりがありそうなエレンは、何かを考え込んでいる。


「……与えた回復薬というのは?」

「事前にエレンから報告を受けていたからね。通常のものでなく上級回復薬を与えてみたんだが目覚めない」

「そう、か。わかった、ちょっと様子を見てこよう」


エレンがそう言って部屋を出ていこうとするので慌てて止める。


「エレン?!……まさか……ジョンにトドメを刺しに行く気じゃ……」


黒の大陸出発前の様子を思い出し、血の気が引く。


「様子を見に行くと言っただろう?私のことをなんだと思ってるんだ」


呆れた顔で振り返るエレンに、ロバートがポツリと呟く。


「……シノブに害する者に容赦しない狂戦士(バーサーカー)……」


ガツン!


「いてぇー!」


容赦ない一発をロバートの頭に叩き込むと、エレンは部屋を出ていった。

縋るような気持ちでテセウスさんを見ると、「大丈夫」と一言。


「実は君たちが黒の大陸に出発する前日にエレンから話があってね……」


テセウスさんの話によると、ジョンには類稀なる薬師の才能があったようで、それを見出したエレンは、薬師として面倒を見るよう各方面に念押ししてから旅立ったらしい。


「え、あのエレンが……」


今にもジョンを射殺すような目で見ていたエレンからは想像つかないけど、それすら超えるような才能がジョンにはあったということか。


「だから出発の時、寝てなかったんだね」

「そういや、やることあったからっつって寝不足な顔してたな」


目の下にクマを作っていたエレンの理由はこれだったか、と思い当たる。


「彼も、心を入れ替えたようで君たちが出発してから毎日真面目にバリーと特訓していたんだよ」

「え?!薬師なのにバリーさんと特訓?!」


にーちゃんが少し声を固くして驚く。


「まぁ、自分で薬草の採取ができるように、とエレンがバリーとの特訓を組み込んで行ったんだけど。ドミニクみたいに戦闘に向かない薬師もいるから特訓は必ずしも必要ではなかったんだけど、これがジョンに対する罰則になるかなと私も許可したんだ」

「……やっぱりバリーさんとの特訓は刑罰扱いなんだ……」


落ち込むにーちゃんの肩を叩き、ドンマイ、と励ます。


「じゃあその特訓中に雷に打たれたんですか?」

「いや、ジョンは私を落雷から守ってくれたんだ。私の身代わりに打たれたようなものだから、なんとしても助けてやりたくてね」


テセウスさんは、困ったように眉尻を下げる。

ジョン、テセウスさんを庇ったんだ……

やっぱり根っからの悪いやつじゃないみたいだ。

そう思っていると、にーちゃんも同じことを思ったらしくアイコンタクトで、やっぱり良い奴だろ?と言う目をする。


「まぁ、ジョンに関してはエレンに任せるとしよう。あの子は目の付け所がいいからもしかしたら回復の糸口を見つけてくれるかもしれないからな」


テセウスさんはそう言うと、席を立ち、俺たちについてくるよう言った。


「先程言った、報告の件。森の主(スフェーン)の薬のことなんだが……とりあえずちょっとここから移動しよう」


テセウスさんと共に向かった先は研究棟。

その一室にドミニク所長やヘンリー先生の姿を見つける。

ふ、と顔を上げたヘンリー先生がこちらに気づいた。


「あ!ハヤテくん!」


中へ入ると、ヘンリー先生は俺たちに走り寄ってきた。


「おかえり!無事に戻ってきてくれて嬉しいよ」


俺たちを順番にハグすると、本当に嬉しそうに笑顔で出迎えてくれた。

そこにテセウスさんの声がかかる。


「ハヤテくん、例の頼んでいた薬の材料だけど、手に入ったかい?」

「あ!」


言われて俺は慌ててマジックバッグから採取してきた黒珠の欠片を取り出し、テセウスさんに渡す。


「これで合ってますか?」

「あぁ、間違いない」


これで材料が揃った。あとは森の主(スフェーン)の薬の完成を待つだけ!


のはずなのに、テセウスさんとヘンリー先生の表情はどことなく浮かない。


「……もしかして、まだ何か問題が……」


二人の表情からそう判断し、恐る恐る声をかける。

すると、ヘンリー先生は頷いた。


「実は……そうなんだ。色々試作していく中で薬の調合の計算をしてみたんだがどうもこのままだと魔力が足りない」

「魔力が足りない?そうするとどうなるんですか?」

森の主(スフェーン)に飲ませても、一瞬で目が覚めてしまうということだよ」

「一瞬?!」


さすがに一瞬眠らせただけでは魔力を吸い出すのは難しいだろう……


「どうしたら魔力を上げられるんですか?」

「とりあえず持ち帰ってもらった黒珠の欠片を使ってどれだけここから魔力が上がるか、だな。他にも魔力が上がるものが追加であれば良かったんだが……」


テセウスさんの言葉に、一瞬なにか思い出した。


魔力が上がる……材料……?


「あ!」


突然俺があげた大声に、周りは驚く。


「……っくりしたぁ。ハヤテ急にどうしたの?」


ロバートに聞かれ、俺はマジックバッグをごそごそすると目的のものを掴みテセウスさんの目の前に突き出す。


「あの!森林竜(シルワドラコ)の角とかどうでしょう?!」


パッと開いた手のひらの上には、以前拾ったドラコの角がコロンと乗っかっていた。



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