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異世界行ったら……  作者: 片馳 琉花
最終章 緑珠奪還 編
201/226

1.帰還

本日より最終章【緑珠奪還編】スタートです。

最後までよろしくお願いします。

途中に休憩を挟みながら俺たちはピスカの町を出て街道をひた走る。

あと少しで王都に入る、というところで何人か人影があるのが見えた。

あれって……


「なぁ、あそこにいるのバリー副団長じゃないか?」


目を細めロバートがじっとそちらを見つめそう言い出した。


「あ、やっぱり?」

「他にも何人かいるね……あ、リアンだ」


ロバートに続き、にーちゃんもその人影を確認しているとリアンを見つけたらしい。と同時に向こうもこちらに気づいたらしく、そのリアンが手を振っていた。


「おー!おかえり!」

「リアン!バリーさんも……てか騎士団のみんなも?!こんなところでどうしたの?」


近づいてみればバリー副団長を始め騎士団の団員たちが数名こちらをニコニコと見つめている。


「昨日テセウス様に連絡を入れただろう?それを聞いて動けるものだけで迎えに来たんだ。色々聞きたいこともあったしな」


バリー副団長が一歩前に出て表情を引きしめた。


「先日、雷鳴とともに黒い雲と風が王都を襲った。あれが瘴気で間違いないか?」


俺たちは顔を見合せ、頷く。


「そうか。……わかった、詳しい話は戻りながら聞かせてもらう。とりあえず王都へ戻るとするか」


そう言い馬を王都に走らせるバリー副団長にエレンが黒の大陸での出来事とピスカでの出来事を話していく。

そうこうするうちに俺たちは検問所へ辿り着いた。

中にはケインさんともう一人、知らない顔の人が俺たちを待っていた。


「おかえり。無事に戻ってくれてよかった」


ケインさんにそう声をかけられ、俺は、あ!と腰の御守りを外しケインさんに渡す。


「これ、頼まれてた御守りです」

「これは……!」


俺が渡した御守りを大事そうに両手で持ち、穴があくほど凝視している。


「ハヤテ……これはどこに?」

「神殿の黒珠の間の入口あたり、かな。石像の近く」

「石像……?そんなものあったかな……なんにせよ本当にありがとう。とても大事なものなんだ。見つけてくれてよかった」


ケインさんは本当に宝物のようにその御守りを扱うと、そっと懐にしまう。


「ところでケインさん、あの……ジョンは?」


もう一人、知らない門番がいるということはジョンはまだ地下牢に入れられているのか?


「ジョンは……これから王都に戻るんだろう?その時テセウス様に聞くといい」

「あ、分かりました」


少し言いづらそうにしていたのでここでは深く聞かず、あとでテセウスさんに聞くことにする。


「ほら、ハヤテ戻るぞ」


ケインさんと話し込んでいると、バリーさんに急かされた。


「あ、じゃあ俺もう行きます」

「おう、気をつけて戻ってくれ。御守り、本当にありがとう」


ケインさんに見送られ、俺たちは王都へと足を踏み入れた。


「今回特例を出してあるからこのまま馬で街を抜けるぞ」


バリー副団長の言う通りランプの街は俺たちが馬とドラコで走りやすいよう交通規制がされているらしく馬車が一台も走っていない。

そこを勢いよく駆け抜けていくんだけど……


「なんかめっちゃ見られてる」

「視線が刺さって痛い」

「これ、シカトしてっていいもん?!」

「適当に手を振り返しておけばいいだろう」


俺たちが走り抜ける横で、街の人たちがめちゃくちゃ俺たちを見てくる。


「黒の大陸の霧を晴らした英雄様たちだろ、もっと堂々としておけー。姿勢が悪いぞ!」


バリー副団長に喝を入れられつつ、人の視線に不慣れな俺たちはどうしたらいいかわからないまま走り抜ける。エレンだけは時折笑顔で手を振り返し着実にファンを増やしていた。

……エレン、恐るべし……


「つ……疲れた……」


自分で走った訳でもないのに妙な疲労感に包まれつつ、俺たちはどうにか騎士団の厩舎へ辿り着く。

ヘロヘロになりながらも、ここまで一気に駆け抜けてくれたドラコとマシロに俺は魔力水を振舞った。


美味しそうに魔力水を飲み終わると、二頭は寄り添うように厩舎の中で丸まって休む。


「おつかれさん」


二匹の頭を撫でると、俺たちは今は懐かしいテセウスさんの執務室へ向かった。


コンコン。


「失礼します」


重厚な扉を開け、中へ入るといつも書類に埋もれているテセウスさんが、書類が一切置かれていないまっ更なテーブルに座って俺たちを出迎えた。


「おかえり。君たちの功績は素晴らしいものだ。黒の大陸とも交易が再開するのも時間の問題だな。あちらから脱出してきた民たちは、生まれ故郷に戻れることをとても感謝している。大々的にパレードでも開きたいところ、だが」


テセウスさんの表情は、スッキリ、とはいかなかった。


「魔石を通して端的な報告は受けたが、詳しくもう一度話を聞いてもいいかな?」


応接用のテーブルに案内され、さっきバリー副団長に報告したことと同様の話をテセウスさんにも報告する。


「バリー」

「は!道すがらその報告を受けまして、先程王都のかもめ亭に使者を送っております。また、騎士団から数名とピスカにて待機命令を出していた緑珠のジェシカ、ライアン両名に黒の大陸の偵察に行くよう指示を出してあります」


テセウスさんに名前を呼ばれただけで、スラスラと報告をあげるバリー副団長。

……すごい、いつの間にこんな指示を出してたんだろう。


「そうか、ありがとう。あと薬草の件、もし町の薬師達の分が足りなくなったらうちの薬師棟から在庫をわけるよう伝えておいてくれ。ただし、緑珠の例の薬の分は避けておくように、と」

「かしこまりました」


テセウスさんの命令を受け、バリー副団長が執務室から出ていく。

残されたのは俺たち四人とテセウスさん。

そのテセウスさんが、俺たちに改めて向き直り、口を開く。


「君たちに報告がある」


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