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異世界行ったら……  作者: 片馳 琉花
第1章 緑珠守護団 編
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19.リュックサックを取り戻せ!

「あ、僕のリュックサック!」


離れて見ていたヘンリー先生の目にもリュックサックは見えていたようで、慌ててこちらに駆け寄ってきた。

でも一歩間に合わず、リュックサックごと池の主(シルルス)は再び水の中へ潜って行ってしまう。


「あぁぁ……」

「あったな、リュックサック。どうする?ロバート。また水の中潜っちゃったけど」

「もう1回水面に出てくれれば取れそうなんだけどなぁ」


ギィィィィィ……ギィィィィィ……


「な、なんの音?!」


突然周囲に響く、木の床板を踏んだ時のような、木の軋むような音。


「ありゃ、池の主(シルルス)に警戒されちゃったか……」

「え、これアイツの鳴き声?!魚なのに鳴くの?!」

「そりゃ警戒したら鳴くだろ。さて、どーすっかなぁ」


魚なのに鳴くんだ……

でも魚だろ?!

魚……あ!!


「ねぇ、ヘンリー先生。蓮もどき(ネルムボ)の茎って丈夫?」

「ネルムボの茎?まぁまぁ丈夫かな?ナイフ使わないとなかなかちぎれないし、種類によっては火山地帯で生えるものもあるみたいだから熱とかにも強いと思うよ」

「じゃあさ……」


俺が思いついたのは、ネルムボの茎の先にさっきの捌いた魔魚(レモラ)を括りつけてエサにし、岸までおびき寄せるというものだった。


「なるほど、動くものならエサだと思って追いかけてくる可能性はあるね」

「試してみよう!」


とりあえず池が大きいから、真ん中まで届くように何本か蓮もどき(ネルムボ)の茎を繋げて延ばし、その一番端に魔魚(レモラ)を外れないようキツく結びつける。


「あ、エサ(これ)どうやって池の真ん中に投げ入れようか……」


投げた程度では到底届く距離ではなかった。

どーすっかなー……


「それなら俺が真ん中辺りにそのエサ投げ込むよ」


ロバートがそう言うと、周辺につむじ風が起き、ふわりとエサ(レモラ)が持ち上がる。

そのままエサ(レモラ)は、つむじ風に乗って池の真ん中まで運ばれていき、ロバートが魔法を解除したことで、


ポチャン!


と、池の中へ沈んで行った。

しばらく待って、岸の蓮もどき(ネルムボ)の茎を、くいくいっと引っ張ってみる。

少しづつ何度かそれを行い、池の主(シルルス)エサ(これ)につられてこちらまで来ることを期待したが、姿を現すことはなく、エサの魔魚(レモラ)は手元へ戻ってきてしまった。


「やっぱダメかぁ……」

「捌いて少し時間経っちゃったから鮮度落ちてたかな?」

「また新しい魔魚(レモラ)捕まえる?」

「いや、実は魔魚(レモラ)ってなかなか捕まらないんだよ。食べると美味しいんだけどね」

「え、美味しいの?!」


そんな話をしつつ、次の作戦を考える。

さっきのエサ(レモラ)は、血も流しきってたし、単調な動きだったからエサと認識しなかったんだよな。

要は生きてる動くものなら追いかけてくる可能性があるワケだ。

俺が泳ぐの得意だったら自分が囮になるんだけど……


「……あ、これならどうだろう」


頭にふと浮かんだのは、水の上を走る忍者。

『右足が沈む前に左足を出す。そうすれば理論上沈まない!』そう言って学校のプールで1歩目から水に沈んでいたのは北斗だったかな……アイツ……アホだな……

でもそのアホな北斗のおかげでもうひとつ浮かんだアイデア。


「水面と足の間に風魔法起こして、水に落ちないよう水面走ってれば、それにつられて池の主(シルルス)こっちに来ないかな?」

「え、それハヤテが囮になるってこと?!危ないからダメだよ!」


ダメダメ、とロバートがストップをかけてくる。

けど、


「でもそれしか次のアイデアないだろ?ダメ元でやってみる!」


そして俺は勢いよく池へと走り出した。


風を纏え(ウィング)!」


水の上へ踏み出した足の下に、ジェシカに教わった方法で風を起こす。

二歩目、三歩目……と、順調に水の上を駆けていき、中心に着いたあたりでクルクルとその場を何周か走る。


すると、底の方で何かが、ゆらり、と動いた。


──かかった!


更にもう何周かした後で、岸の方へ向かう。

水面のやや下あたりを、俺を追うようにして池の主(シルルス)がついてきているようだ。

よし、このまま岸の方まで引き寄せて……


「ロバート!池の主(シルルス)ついてきたぁぁぁーーーー!!」


言い終わると同時に水面から、


ザバァァァァ!


池の主(シルルス)が顔を出した。

その勢いで空中に投げ出されてしまったので、演習場の二の舞は踏まぬよう、足元を意識して体勢を持ち直す。

岸まではあと少し。

勢いはこのままで、俺は水面の上を駆け抜けた。

浅瀬になる直前、一度大きく池の主(シルルス)は跳ね上がる。


「よっしゃ、ナイスタイミング!」


全身が水面から飛び出すほどの大ジャンプだったため、リュックサックが水面から出たところで、ロバートが風魔法を放ち、上手くヒレから外れたリュックサックは岸辺の方へ落ちた。


バシャァァァァン!


池の主(シルルス)も勢いよく水面へとダイブする。

そのまま、再び池の奥へと泳ぎ去ってしまった。


池の主(シルルス)の姿が見えなくなったところでリュックサックへ駆け寄る。

池の主(シルルス)のヒレは結構鋭かったみたいで、リュックサックの布地は所々切れてしまっていたが、中に入っていた荷物は無事なようだった。

……てかなんか、木でできたクーラーボックスみたいのが入ってるんだけど……

まさかコレがマジックバック?





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