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異世界行ったら……  作者: 片馳 琉花
第3章 黒の大陸 編
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65.その手触りは思ったよりもふもふ

「よし、狼煙も上がったしこれでジェシカたちに伝わったかな」

「そしたら俺達もあの港町に戻らないと。てかドラコとマシロはどこいったんだ?」


一安心したロバートと共にぐるっと周辺を見てみてもあの二匹の姿が見えない。


「神殿に入る時は入口の扉の前で大人しく待っていたんだがな」

「あ、黒衣の帝王(ニガレオス)の本体の方ちょっと気にしてたでしょ?だから僕たちが神殿の中に入ったあと漏れ出た瘴気を見て黒衣の帝王(ニガレオス)の様子見に行ったとか?」

「あー、ありえる!」


にーちゃんの言葉通り、眠っている黒衣の帝王(ニガレオス)の元へ向かうと、眠る黒衣の帝王(ニガレオス)を気にするようにドラコとマシロが周りをウロウロしていた。


「ドラコ!マシロ!」


そう声をかけるとこちらに気づいた二匹は嬉しそうに走り寄ってくる。


「よしよし、黒衣の帝王(ニガレオス)が心配で見に来たのか?偉いなー」


ドラコの欠けた角の当たりを撫でると、気持ちよさそうに『もっと撫でて』と角を押し付けてくる。

にーちゃんもマシロに頭をグリグリされてふらついていた。


「うわっ!」


そしてとうとうバランスを崩し、倒れ込んでしまう。


「ちょ、大丈夫?」

「うん」


手を差し伸べて立ち上がらせようとすると、やっぱりすごく動きづらそうに立ち上がった。


「あー、重い……」


ぽつり、と、にーちゃんが零した愚痴に、アレ?と思う。


「重いって……にーちゃん、闇の鎧(それ)重いの?」

「うん……あ、あれ?そっか。重いのおかしいな?」


適合者には羽根の様に軽い。


それが闇の鎧の謳い文句だったはず。

それが重い……?


「もしかしてその鎧も浄化の影響受けてるのか?」


エレンが言ったその一言に、にーちゃんは合点がいった顔をした。


「あー、闇の魔力が使えないから鎧が重いのか!だから浄化の後ずっと身体が重かったんだな……物理的に鎧が重くなってたのか……」


確かにずっとにーちゃん、身体が重いって言ってたもんな。

てことはまだ魔素は復活してないのか。


「これから港へ戻るが、その間に魔素が復活すればいいがな」

「そうだね、あまり距離がないとはいえ乗馬しながら重い鎧は体力使うしね」


そんなロバートのセリフに引っかかることがあり俺は質問する。


「なぁ、来る時はにーちゃんの闇の魔力で鎧を軽くして来たわけだろ?でも今そんな重くてマシロ、二人も乗せられるのか?」

「あ」


状況を理解していないマシロは耳をぴるぴるさせながら、無邪気ににーちゃんの後頭部を頭でぐりぐりして遊んでいる。


「魔法使えれば風魔法で浮かして紐で括って移動もできるけど、それなら普通に闇の魔力で鎧の重さ軽減できるわけだしな」

「うわぁ、ここに来て問題ぶち当たったねぇ」


ロバートも目を丸くさせ、困った、と腕を組む。

俺も同じように腕を組み、後ろの壁へ寄りかかった。


もふっ。


思ってもみない感覚に慌てて壁から離れ、振り返るとその壁だと思ったものは黒衣の帝王(ニガレオス)の丸くなった羽の部分だった。


……え、待って。

思ったよりも柔らかくてもふもふしている……


俺は誘惑に勝てず、そっと黒衣の帝王(ニガレオス)の本体を撫で回した。


──やめんか。


「うわぁー!」


慌てて手を引っ込め、わたわたしていると俺の動きを三人が不審な目で見ていた。


「ハヤテ……何してるの?」

「いや今声が……」

「声?何もしてないぞ?」


ロバートに声をかけられ答えると、エレンが声なんか聞いてないという。


「え、いや今なんか声したって!」


ぽす。


引っ込めていた手を何となくまた黒衣の帝王(ニガレオス)に宛てがい、羽の感触を楽しんでいると再び声がする。


──ええぃ、羽を撫で回すでない。くすぐったいわ。


「え、これ黒衣の帝王(ニガレオス)?!」


声の主が黒衣の帝王(ニガレオス)と気づき、俺が声を上げると三人も顔を見合せ眠っている黒衣の帝王(ニガレオス)の羽を撫で始めた。


──触るなと言っておるだろうが!しかも増えよって!


黒衣の帝王(ニガレオス)!あれ、なんで?」


──……もうよい、触るのは許可するが撫でるでないぞ、こそばゆい。……ん、あぁ、そうか。声が届かなかったのだったな。


「そうだよ、こっちが色々聞いても無視してくれちゃってー」


ぷぅ、と口をとがらせロバートが抗議をする。


──いや、すまん。魔素が途切れて声が飛ばせなくてな。触れてあれば話もできるんだが。それはそうと、浄化成功したようだな。だからこそ魔素が浄化され声も届かなかったわけだが。これであれば大陸に結界を張らずとももう大丈夫だろう。ただ……


「ただ?!」


黒衣の帝王(ニガレオス)が不穏な言葉を紡いだ。


──瘴気がばらまかれたあとすぐ浄化魔法も後を追って浄化していたが、恐らく瘴気の方が先に発動した分、多少は向こうの大陸に届いているだろう。それがどれほどの規模かはわからぬがな。


「え?!じゃあ早く戻って状況確認しないと……」

「ねぇハヤテ。黒の大陸(ここ)の浄化の魔石は魔力使い切ってあの石像に返したでしょ?テセウス様から預かった方は?」


ロバートに言われ、首元のネックレスを取り出す。

完全に魔力は失っていないものの、色はくすんでいて、浄化の輝きは今はもう面影もない。


──かなり浄化の力を消耗しているな。王都にある白の宝珠の魔力の元でしばらく回復させないと浄化は使えなさそうだ。


「え?じゃあもし瘴気の影響出ててもすぐに浄化出来ないってこと?」


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