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異世界行ったら……  作者: 片馳 琉花
第3章 黒の大陸 編
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54.扉の先にあるモノ

「ロバート、扉ってこれか?」


ロバートの後を追いたどり着いた先に確かに扉があった。

ただとても頑丈そうで一人で開けて入るにはかなり力が必要そうな作りの扉だ。


「そう、それ」

「ここにエレンが一人で……?ならよっぽどの事が起きたってことだろうね」


にーちゃんが軽く扉を押してみるものの、ちょっとやそっとの力では開かないらしい。


「これ結構全身で押す感じだよ……エレンこれ一人で開けたのかな?」


にーちゃんが一度扉から身体を離し、ゴンゴンと扉を叩く。

エレン……前ににーちゃんが攫われた時、ジョンを軽々と吹っ飛ばしてたからな……軽々と開けられそうではあるけど……


疾風(はやて)、ちょっと手伝って」


にーちゃんと二人で扉に体重をかけゆっくりと押し込んでいく。

すると徐々に扉が開き、部屋の中が少しづつ見えてくる。中には地下に続く大きな螺旋階段が現れた。


「これ、降りたのか?」


ランタンで部屋の中を照らしてみても、この螺旋階段以外見当たらず身を隠すような場所もなさそうだ。


「この階段、降りてみよう」


そう言うとロバートはどんどん螺旋階段を降りて行こうとする。俺は咄嗟にロバートの腕を掴んだ。


「ちょ、ロバート待って!もう少し周りを調べないと……」

「そんなことしてる間にエレンの身になにか起きたらどうするのさ」


俺の腕を振り払いロバートはさっさと階段を降りていってしまった。

俺とにーちゃんも慌てて階段を降りる。


「一人で先に行くなって」

「もう少し慎重に降りよう……って降りるの早っ」


階段を降り切ると先を行くロバートの姿が目に入った。近づいていくと不意に横に人の気配を感じ、慌てて振り返る。


疾風(はやて)?」


にーちゃんもつられてそちらを見た。

そこには剣を構えた人の石像が置かれていた。なんでこんなところに?

その石像をよく見ようと手を伸ばしかけたところで、ロバートの叫ぶ声が耳に入る。


「エレン!!」


慌てて手を引っ込め、ロバートの声のした方へ向かうと、立ち止まっているロバートの視線の先には、地下のフロアの真ん中に倒れているエレンの姿があった。


「エレン?!」


思わず駆け寄ろうとする俺の手をにーちゃんが掴む。


疾風(はやて)待って!おかしい!」

「おかしいって、なにが?」


にーちゃんの様子に駆け出すのを躊躇い、にーちゃんを振り返る。


「エレンの周りに明かりは見当たらない。僕たちのランタンでもあそこまで光は届かない。なのに何であそこにいるのがエレンだってわかるの?」

「あ……」


言われて部屋の中をぐるりと見渡す。光源となるような窓もランプも見当たらない広い空間。

なのにその真ん中に倒れ込むエレンの姿だけやけにはっきりと見えた。


「何ぼさっとしてるの?!エレンのところ行かないと!」

「あ!ロバート待てって!」


俺とにーちゃんが止める間もなくロバートはエレンの元へ走って行く。すると、エレンの姿は見えるのに、ロバートの姿は途中で見えなくなってしまった。


「仕方ない、気をつけながら進もう」

「おっけー」


エレンとロバートを放っておくことも出来ず、俺とにーちゃんは周囲を警戒しながら少しづつエレンへと近づいてく。


──気をつけろ。そこは何か変な感じがする。


不意に闇の鎧の魔石(ニガレオス)がそう警告した。


「変?」


──うまく言えぬが妙な魔力が……我の魔……届き……


ノイズが混じり、やがて闇の鎧の魔石(ニガレオス)の声が途絶える。


「うわぁ、また言うだけ言って消えた……」

「仕方ないよ、魔力少ないみたいだし……」


変な感じがすると言われても俺たちだけではどうすることも出来ず、ただ恐怖心だけが募った。

闇の鎧の魔石(ニガレオス)の言葉を胸に刻みつつ、ゆっくりとようやくエレンの元にたどり着いた時は精神的に疲労困憊だった。

それでもゆっくりはしていられない。


「エレン……起きて」

「う……」


エレンの横にひざまづき、にーちゃんが声をかけるとエレンはゆっくりと目を開けた。そしてにーちゃんと目が合うと、がば!と起き上がる。


「シノブ!大丈夫か?!どうしたんだ?!」

「え、いやそれこっちのセリフなんだけど……」


寝ぼけているのか突然変なことを言い出したエレンに俺とにーちゃんが困惑していると、エレンはさっきまでの状況を話し始めた。


「二手に別れたあとロバートと壁を確認しながら歩いていたら扉を見つけたんだ。重そうな扉だし、二人で入っても何かあった時に困るから一度シノブとハヤテと合流しようということになって」


ここまではさっきロバートに聞いた通りだ。でも……


「その扉を離れようとした途端、中からシノブの声がしたんだ」

「僕の?!」


エレンは頷く。


「助けて!……と。それを聞いたロバートが、反対側の扉から入った二人に何かあったんじゃないかと言って、二人で扉を開けて……そこからの記憶が無い」

「いや、こっちに扉はなかったよ」

「そもそも僕、助けてなんて言ってないし……」


それに……


「ロバートの話と違う」

「うん。さっきロバートは扉は開けてないって言ってたのに……」


チリ……とまた胸が少し焼け付く感覚がした。

すると暗闇からロバートが姿を現す。


「エレン、無事だったんだね」



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