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異世界行ったら……  作者: 片馳 琉花
第3章 黒の大陸 編
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53.分かれ道

「うわ、くっら……」


神殿の中は暗闇に包まれていた。手を伸ばせば指先さえ見えない。


「この辺りは灯り(ライティング)の魔石も切れてるみたいだな……」


通路の色んなところにロバートが灯り(ライティング)の魔力を放っているみたいだけど、そのどれもが灯りがつくことなく霧散していく。


「思ったよりも暗いな。これは浄化の魔石探すのにかなり時間がかかるぞ……」

「あまり時間かかると外に残してきた二匹が心配だよ」


エレンの言葉に、にーちゃんが不安げに扉を振り返る。

ドラコとマシロは、中で何かあった時に狭い室内で身動きが取れなくなると危ないので扉の外で待ってもらっている。

さっき、ここらの魔物は黒衣の帝王(ニガレオス)が一掃していたからしばらくは大丈夫だと思うけど……


神殿の奥へと足を進めながら、念の為通路の脇の扉を何個か開けてみたけど、物置だったり空っぽだったりしてあまり収穫はなかった。


「今のところ通路が一本道だから助かっているが……わかれたら困るな」


手持ちのランタン型魔石ランプでどうにか先を照らしつつエレンがそう呟いた途端、フラグが回収されてしまった。


「T字路……」


少し進んだ先、目の前に現れたのは左右に分かれるT字路だった。


「どうする?みんなで同じ方に行く?」

「いやでもそれだと時間が倍かかる。黒衣の帝王(ニガレオス)の残り魔力がどれほどあるかわからないが時間を省略できるならした方がいい」


エレンの案は正しい。けど、何かあった時二人づつだと心許ない。

かと言ってここでどうするか悩む時間もあまりない。

時間だけが過ぎていく中、結論が出せずみんなの中に焦りが滲み始める。


……あ、そうだ。


「少しだけ通路の先を確認したいんだけど」


そう言って虎杖(フォローピア)を取り出すと、その先端から光の玉が飛ぶイメージで灯り(ライティング)の魔法を右の通路の先に飛ばす。気分は魔法使いだ。

光の玉は少し先に行くと弾けて消える。その弾け方を見ると右の通路は少し進んだあと左に折れるみたいだ。

同じように左の通路に光の玉を飛ばすと、今度は通路は右に折れる。

どうやらこのT字路の壁の向こうが部屋のような空間になってるっぽい。


「……もしかしてこの壁の向こうが黒珠の間とか?」

「いや、黒珠の間は最奥と言っていたからここはまだ手前なような気がするが……」


訝しむエレンの肩を、ロバートがガシッと掴む。


「うん、ここで考えててもしょうがない。そんなに大きなは部屋でもなさそうだし左右から別れて進もう!多分ぐるっと回り込んで向こうで会えるでしょ!みんなで同じ方行ってもいいけど反対側に何か入口とかあっても困るじゃない?」

「うーん、そうだね。確かにそんな複雑な作りはしていなさそうだしロバートの言う通りかもしれない。二手に分かれて進もうか。いざとなったら闇の鎧の魔石(ニガレオス)が会話を通訳してくれるだろうし」

「あ、そっかその手があったか」


闇の鎧の魔石(ニガレオス)の便利機能を思い出し、俺はぽんと手を打つ。

問題は魔力使うとこだけど……


──まぁこの距離ならばさほど魔力は消費せん。大丈夫だ。


俺の心の声を聞き取ったのか、闇の鎧の魔石(ニガレオス)がそう言ってくれたので俺たちは二手に分かれて回ることにした。


遠距離攻撃と近距離攻撃のペアということで、俺とにーちゃん、ロバートとエレンで左右からこの空間を回り込む。


「じゃ、またすぐに会おう」


にーちゃんと左の道を進み、先程光が弾けた角を曲がる。


「あ、窓がある」


この通路は光を取り入れるためか、外には出られなさそうな小さな小窓が壁に何個かついていた。

窓から外に目をやると、神殿から少し離れた場所に塔が見える。

あれは……?


──あれは『聖炎(せいえん)の塔』だな。


「聖炎の塔?」


──塔の最上階に、古より伝わる聖なる炎が灯されていると聞く。まぁ我は見たことは無いんだがな。その炎は昔から消えることなく燃え続けているらしいぞ。


「へぇ、昔から燃え続ける炎か。どんな原理なんだろ」


なんとなく気になりその塔を見つめていると、先を進むにーちゃんに促される。


疾風(はやて)、何ぼーっとしてるの?ほら、行くよ」

「あ、待って」


通路は小窓以外特に変わったところはなく、空間の部屋に入れそうな扉も見つけられないまま、次の角を右へ曲がる。


ドンッ!


「うわっ!」


先に曲がったにーちゃんに何かがぶつかり、相手が尻もちをついた。


「いたー……」


にーちゃんの脇から倒れたものを見てみると、それはさっき別れたばっかりのロバートだった。


「なんだ、ほんとにすぐに再会できたな」

「ほら、俺の言った通りだったでしょ?てかちょっと手を貸して……」

「はいよ」


尻もちをついたままのロバートがこちらに手を差し出したので俺はその手を掴んで立ち上がらせる。


チリ……


「……ん?」

「どした?」


一瞬胸の奥がざわついた気がした。けどそれはほんの一瞬のことで、すぐにその違和感は消える。


「いや、なんでもない……」


気のせいかと思い首を捻っていると、にーちゃんが周囲をキョロキョロした後ロバートに声をかけた。


「エレンは?」

「あれ?さっきまで後ろにいたんだけど……もしかして先に部屋に入っちゃったのかな?」

「部屋?」


ロバートが言うには、反対側の通路には扉があって、その部屋に入る前に一度俺たちと合流しようという話になったらしい。


「でも、エレンはいなくなった……?」

「みんなで行こうって言ったんだろ?なのにエレンだけ先に入ったりするかな?」

「……もしかしたらその部屋に入らなきゃならないような何かが起きたとか?」


ロバートはそう言うとくるりと身を翻し、反対側の通路に歩き出す。


「エレンが心配だ。早く部屋に入ろう!こっち!」

「あ、ロバート!」


にーちゃんもすぐにロバートの後を追い反対へ向かう。

俺も、と後を追ったところで再び、チリ……と胸騒ぎがした。


なんだ?


立ち止まり、胸の当たりをさすってみても今はその胸のざわめきは消えている。


疾風(はやて)、早く!」

「あ!今行く!」


通路の先からにーちゃんに呼ばれ、俺はその胸騒ぎを気にしながらも二人の元へと走っていった。

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