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異世界行ったら……  作者: 片馳 琉花
第3章 黒の大陸 編
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52.しばしの別れ

「いやー、まさか闇の鎧の魔石(ニガレオス)が黒衣の帝王だったなんて」


先程放たれた黒炎で魔力を吸い取られ倒れた魔物たちを避けつつ、その黒衣の帝王(ニガレオス)の元へ向かうとロバートが感嘆の声を上げている。


黒衣の帝王(ニガレオス)がいれば黒珠の浄化なんて楽勝なんじゃないの?」


一瞬でこの当たりを焼き尽くしたあの黒炎の威力を思い出し、そう黒衣の帝王(ニガレオス)に尋ねると、残念そうに首を振る。


「そう簡単では無いのだよ。魔力量はあっても浄化魔法が使えなければ我とて手も足も出ん。溢れた瘴気を押し留めるのが精一杯だ」

「浄化魔法が……使えない?」

「そうだ。浄化が使えるのは人の子らだけだ。前にも言ったように我らと人は魔力の質が違う。いくら自力で浄化魔法が使えない人の子とは言え、その魔力を使えば魔石を通し浄化魔法が発動するであろう。我らでは魔石を通しても魔法発動せん」


そういえば、ここにいる四人とも浄化魔法が使えない。魔石を通して黒珠を浄化するしかないってことか。

俺は首元から浄化の魔石がついたネックレスを取り出す。

それを見た黒衣の帝王(ニガレオス)が「あぁ」と声を上げた。


「浄化の魔石を持ってきたのだな。ただそれでは……恐らく完全に浄化は出来ぬぞ。せいぜい今溜まっている瘴気を吹き飛ばす程度だ」

「え?!」

「完全に浄化するのであれば、神殿内に納めてある魔石を使うしかあるまい」


神殿内の魔石……それがテセウスさんの言っていた黒珠の近くにある浄化の魔石なのか?


「その魔石って神殿のどこに納めてあるんだ?」


エレンが黒衣の帝王(ニガレオス)に在処を尋ねると、黒衣の帝王(ニガレオス)はバツの悪そうな雰囲気を醸し出した。


「それがな、先の瘴気爆発の際に爆発に巻き込まれたのか今はその存在を感じることが出来なくてな。直前まではあったのは確かだから神殿内にあるはずなんだが……」

「え、じゃあまずはその浄化の魔石探さなくちゃなんないのか」

「そうなるな」


魔物に対しては黒衣の帝王(ニガレオス)のおかげで心配が無くなったけど、結局浄化を終わらせてみんなの元に戻るためには問題が尽きない。


「じゃ、僕たちは神殿に着いたらその浄化の魔石を探すから、とりあえず魔物たちは黒衣の帝王(ニガレオス)に任せるね」


にーちゃんが黒衣の帝王(ニガレオス)を見上げそうお願いする。すると、黒衣の帝王(ニガレオス)はその大きな身体をさらに縮こませるように声を絞り出した。


「いや、それがな。先程倒した魔物の魔力で今はこうして動けているものの、結界を維持している我の魔力がそろそろ底を尽きそうなんだ。魔物たち相手に魔力を使う余裕はもうない。しっぽで払うくらいなら出来るが建物も壊してしまうから……」


黒衣の帝王(ニガレオス)充電(まりょく)切れのお知らせ。

いや、マジで?

頼みの綱だったのに?


「というわけで神殿に着いたら結界の維持に集中する為、身体は休ませてもらう。意識は再び闇の鎧の魔石に戻そう」


強い味方がついたと思ったら結局俺たちだけに戻ってしまった。

まぁでも元々のメンバーに戻っただけだし仕方ない。

浄化の魔石が神殿内のどこかにあるとわかっただけでも良しとしよう。


そんな話をしているうちに、遠くに微かに神殿と思しき建物の屋根らしきものが見える。


「あそこに見えるのが神殿だ。一番奥の間が黒珠のある『黒珠の間』。今も尚、黒珠の間を中心に瘴気が溢れている。中心に行くほど瘴気が濃くなるが故、その瘴気につられた魔物も入り込んでいるかもしれぬ。気を引き締めて向かって欲しい」


神殿から少し離れた場所に黒衣の帝王(ニガレオス)は足を折って座り込み、翼で身体を隠すよう丸くなった。

鳥みたいで少し可愛い。


「あまり力になれずすまない。我はここでしばし身体を休める。頼んだぞ、人の子ら」


そう言うと黒衣の帝王(ニガレオス)はゆっくりと目を閉じた。


──よし、では行くとするか!


「わぁ!」


一瞬寂しいような気持ちにさせてもらう間もなく頭の中に闇の鎧の魔石(ニガレオス)の声が響く。


ドラコとマシロは、眠りについた黒衣の帝王(ニガレオス)の本体を振り返りつつ、俺たちについて一緒に神殿へと向かい足を進めた。


そこは『神殿』と言うにはあまりにも暗い雰囲気を持つ建物だった。

禍々しい、とでも言った方がしっくり来るかもしれない。


「ここ……入るの?」

「ここまで来て入らないという訳には行かないだろう。なんのためにここへ来たと思ってるんだ」


尻込みするロバートを横目にスタスタと入口へ向かったのは俺たちの中で一番男前な気がするエレンだった。


「ちょ、エレン待って……」


後を追うように俺たちもあとへ続く。


ギィィィィィィィィ……


エレンが扉を押し込むと、もう何十年と開いていなかったと思われる扉は錆付き軋んだ音を響かせ開く。

むせ返るような埃とカビ臭さの中、その禍々しい気配を放つ神殿の中へと俺たちは足を踏み入れた。


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