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異世界行ったら……  作者: 片馳 琉花
第3章 黒の大陸 編
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49.ギルドで過ごす一夜

交代で睡眠をとることにした俺たちは、大部屋にベッドが二つある部屋で順番に仮眠をする。


「俺は後でいいよ」

「俺も。見張りやっとくよ」

「すまない、では先に休んでくる」

「何かあったら起こしてね」


ベッドで横になる二人を確認し、俺はロバートに声をかけた。


「ロバート、俺ちょっとドラコのとこ行ってくる」

「あぁ、結局階段登れなかったもんな」


ドラコとマシロは一階のロビーで休ませることにした。

さすがに階段は登れなかったから……

階段を降りると降りた先に二匹仲良く寄り添って丸まっているドラコとマシロの姿が見えた。


「クォ!」


俺の気配を感じとったのか、ドラコが顔を上げしっぽを振る。

俺はそっと近づき、ドラコに話しかけた。


「ドラコ、寝る前に水飲むか?」

「クォ!」


立ち上がり水を飲む仕草をしたので俺は手のひらに魔力水を出して飲ませてやる。その姿を眺めていると、ふと視線を感じた。

顔を上げてみれば、うらやましそうにこちらを見るマシロと目が合う。


「マシロ、お前も飲むか?」


手のひらに溜めた魔力水をマシロの口元に持っていくと、恐る恐る舐め、そのまま飲み始める。


「そっか、喉乾いてたんだなー」


マシロが満足するまで水を飲ませると、俺は二階の部屋に戻ろうと腰をあげた。

その足元をまたネズミが駆け抜ける。


「うわっ!」


足元を取られもつれてしまい、思わず尻もちをつく。

床についた手が、ささくれだった床で少し切れて血が滲んだ。

不幸は続くようで、先程のネズミの後を追いかけていた仲間のネズミに指を少し噛まれてしまった。

ただ、不幸中の幸いと言うべきか噛み跡は小さく、血もすぐに止まったので、さっきの切り傷と併せて回復魔法で治しておく。


「これくらいなら魔力そんなに使わないな。てか魔法マジ便利……」


異世界魔法の恩恵に預かりつつ部屋へ戻ると、手持ち無沙汰げにロバートが部屋のソファに座っていた。


「あ、ハヤテおかえり」

「ただいま。アンデッドは出なかったか?」


さっきのロバートの慌てぶりを思い出し、揶揄う。


「もう、あれはハヤテのせいでしょ!」

「つかアンデッドってやっぱいるのか?」

「うん、滅多に見かけないらしいけどね。浄化でしか完全に沈黙させられないから会ったら厄介だなぁ」

「うへぇ、でもいるんだ……そんなん言ったらさ、黒の大陸(ここ)なんて雰囲気的にめっちゃいそうじゃね?」

「やめてよー」


肩を抱えて縮こまる大袈裟なジェスチャーをロバートがするから俺も真似して肩を抱える。


「でもいちばん厄介なのはラースかなぁ?」

「ラース?」

「うん。これくらいの……」


と、ロバートは手で二十センチくらいの楕円を作る。


「小さい魔物で、呪いをかけるんだよ」

「うわ、呪い?!かけられたらどーなんの?」

「呪いを解く方法はないんだ。浄化の魔法でも治せない。徐々に体力を奪われて死に至る」

「え!?死ぬの?!」

「だからそれくらいの魔物には近づかないでやり過ごすんだ。場合によっては死んでも呪いを撒き散らすんだって!……まぁ人前には滅多に出ないらしいけど」


こっわ!

えぇ、神殿にそいついないといいなぁ……


「まぁこっちには遠距離攻撃出来るエレンとシノブがいるから出会ってもどうにかなるでしょ」


明るく笑うロバートを横目に、俺はカバンの中から虎杖(フォローピア)を出し、腰のベルトの取り出しやすい場所に差す。

……ナイフでやばかったらこの虎杖(フォローピア)で高圧の水かけてやろう……


日付の変わる頃、にーちゃんとエレンを起こし仮眠を交代する。

交代後も特に異変は無かったようで、朝陽が昇る頃に起きた俺とロバートは出発の準備を整え役場(ギルド)を後にした。


「なんかマシロも疾風(はやて)に懐いてたね」


マシロは俺の魔力水をお気に召したようで、さっきもドラコと一緒に催促された。


「ハヤテのその水、なんなんだろうね?俺たちがそれでお茶飲んでも特に変わった感じしないのに」

「成分分析の時もそこまでの変化はなかったんだがな。多少薬草の影響受けやすいくらいで」

「僕が魔石使って出した水はそこまで食いつきよくないのに。なんか悔しい……」


じと、とにーちゃんがうらやましそうにこっちを見ているのが闇騎士(ダークナイト)の兜越しでも伝わってくる。そんなこと言われても、俺だってわかんねぇよー……

軽い嫉妬の視線を受けつつ俺たちは町外れまで連れ立って歩く。

港町を出てからは俺とロバートはドラコ、にーちゃんとエレンはマシロに乗って移動をすることにした。


「うは、俺森林竜(シルワドラコ)乗るの初めてだ!思ったより安定してるんだね」


ロバートはドラコに跨ると早々にテンションが上がっていた。


「背中ももっと硬いかと思ったけど弾力あるし、乗り心地悪くないなー」


乗りながら撫でられて、ドラコも満更でも無さそうだ。

嬉しそうにしっぽを振っている。


「ドラコ、二人乗りだけど頑張って運んでくれよ」

「ここから北に向かうんだよね。距離はどれくらいかなぁ?」

「そうだな。昔の地図を見る限り、さほど離れていないように見える。王都から東の森より少し遠いくらいか?」


そっか、それくらいなら明るいうちに目的地まで着きそうだ。

着くなら明るい内がいいもんな。

いや、決して昨日ロバートが言ってたアンデッドやラースとやらが怖いんじゃないけど。

うん、怖くない。


「じゃあとりあえず北の方角に出発!」


チラリと頭をよぎった怖い妄想を振り切るように大きな声を出して、俺はドラコを走らせた。




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