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異世界行ったら……  作者: 片馳 琉花
第3章 黒の大陸 編
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48.霧に覆われた港町

「知ってはいたけどやっぱり人はいないね」

「つか人がいない町ってこんな感じなんだな」


ロバートと一緒に船の周りを少し歩く。

陽が沈むにはまだ早い時間にもかかわらず、立ちこめる黒い霧のせいか町は少し薄暗い。


「周囲の様子がわからない以上、夜に町を離れるのは危険だな」

「とりあえず町の外れまで探索して、今夜の寝床探そうか。明日の日の出とともに港町(ここ)を出よう」


エレンとにーちゃんの提案に従い、俺たちはとりあえず建物の中を調べる。

町の人達は慌てて飛び出して行った人が多いのか、荷物を持ち出す余裕がなかったらしく、覗いた部屋は人の痕跡がまばらに残っていた。


ここの人たち、早くこの町に戻ってこれるといいな……


そんなことを思いながらふと壁に目をやると、そこは掲示板のようだった。


あ、この建物って……この町の役所(ギルド)か?


壁に貼られた掲示物はほとんどが破れてはいたが所々読むことも出来る。


【薬草……本くださ……報酬……】

【……の森……の毛皮求む……爪もあれば尚良……】

【黒衣……帝王……雫】

【神殿……黒珠……魔力……清掃】


清掃?色んな依頼があるんだなー。


「ハヤテ、これ!」


何となく壁の用紙を読んでいると、役所(ギルド)の食堂の方を見に行っていたロバートが何か見つけたようだった。

その声に誘われるようにエレンとにーちゃんもロバートのもとに集まる。

ロバートは食堂のテーブルの上に置かれた一枚の紙を指さしていた。

新聞のようなそれは壁の掲示物と違い、痛みは少なくかろうじて内容が読み取れる。


「【号外】神殿の黒珠の間にて瘴気漏れの予兆あり。町人は早めの島外脱出を。神殿は人払いされ、王都の使者が神殿に向かい浄化作業にあたる……?」

「これ、この後瘴気の爆発が起きたんじゃないかなぁ?」

「確か浄化作業をしたけど浄化しきれなかったって聞いたことがある」


そこからずっと瘴気が漏れ続けているわけか。

いくら瘴気体制があるとはいえ、少し怖いよな。黒珠って今どうなってるんだろう。

俺がそう思っていたように、みんなもそこに思い当たったようで視線がかち合う。


闇の鎧の魔石(ニガレオス)、お前の本体も神殿にあるんだろ?今そこはどうなってるんだ?」


唯一今の状況を知っていそうな闇の鎧の魔石(ニガレオス)に聞くのが手っ取り早い、そう思いついて聞いてみた。


──どうなっているのか、か。その答えは……わからぬ、としか言えぬな。


「わからない?」


──そうだ。我と本体はある意味別の個体だからな。本体が休眠状態に入っているため現状については情報が入って来ぬ。結界に関しては、かけた当初の記憶の断片のようなものが残っていたからその記憶を読み取っただけだ。


「そんなぁ」

「やはり手探りで向かうしかないようだな。それより今日の寝床はこの役所(ギルド)が妥当だと思うがどう思う?」


闇の鎧の魔石(ニガレオス)の話を聞きながらもこの建物の様子を調べていたエレンが二階を指さした。


「そうだね、この町にも宿はここだけみたいだし、他の人の家に入るのも気が引けるからそれでいいと思う」

「僕もそれがいいかな。ホコリっぽいのはどこに行っても変わらないし。それにここなら広いし床も丈夫だからドラコとマシロも一緒にいられるだろ?ただもう少し町の中を見たいかも」

「それは俺も賛成」

「ではもう少し周りを探ろうか」


みんなで周りを警戒しつつ一度役所(ギルド)の外に出る。

うっすらと明るかった陽の光も今は沈み、外は完全な夜になっていた。


「街灯の魔石、まだ使えるかな」


そう言うとロバートが通りの街灯に向け魔力を放つ。

じんわりとした灯りが街灯に灯った。


「お、少し暗いけどないよりはマシだね」

「ロバート、ありがとな」

「いいえー」


薄暗い街灯の灯りを頼りに役所(ギルド)の周りを調べながら歩く。


「まぁ、これといって何かあるわけでもないな」


細い路地に灯り(ライティング)の魔法の灯りを放り投げつつ、細かいところも調べながら探索していると、


……カサリ


背後に何か気配を感じ振り返る。

ただ振り返った先には何もいない。

気のせいかと思い、俺は首を傾げる。

……ホラー映画だとここからまた振り返った時にバン!って出てくるんだよな。向こう、見たくねぇな……


手に汗を握りつつ、そっと元々の方を向き直す。

そこには、先程と変わらず辺りを調べる三人の姿が。


はぁーーー……と安堵のため息を吐き、みんなのところに行こうと一歩踏み出しだ瞬間、俺の足元を何かが駆け抜ける。


「ギャーーーーーー!」

「ウワーーーーーー!」


俺のあげた悲鳴に驚き、つられてロバートも悲鳴をあげる。


「なになになにーーー!」


エレンにしがみつき、足をバタバタさせているロバートの足元をネズミが走り抜けて行った。

……何だ、ネズミかよー……


「ハヤテ!なに!?」


半泣きになりながら尚もエレンにしがみついているロバートに俺は謝った。


「悪ぃ、なんでもない」

「なんでもないの?!もぉー!脅かさないでよ……アンデッドでも出たのかと思ったじゃん……」


あ、この世界ではお化けと言うよりアンデッドか。


エレンから手を離し脱力するロバートの背中を叩きながら「悪い悪い」と再度謝る。

それ以降、とりあえず不審なものは見つからなかったのでみんなで役所(ギルド)に戻り一番大きな部屋で休むことにした。


寝る時ににーちゃんが鎧を脱ぐのを頑なに拒否したのはお化けにビビったんじゃなくて警戒を解かないためだと……思いたい。

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