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異世界行ったら……  作者: 片馳 琉花
第3章 黒の大陸 編
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46.希望を背負い、前へすすむ


──その二匹であれば結界を抜ける際に闇の魔力で覆ってやれば連れて行けるだろう。人と魔物は勝手が違うからな。


「魔物?マシロも?」


──そやつも動物にしては知能が高いし身体も丈夫だ。少なからず魔物の血が入っているだろう。それであればこの黒い霧も抜けられるであろうな。


「へぇ」

「え、何?ハヤテ、闇騎士(ダークナイト)は何と会話してるの?!」


闇の鎧の魔石(ニガレオス)と意思の疎通ができることまではテセウスさんから聞いていなかったのか、ジェシカが闇の鎧の魔石(ニガレオス)に思わず声を出して確認しているにーちゃんを、不審なものを見る目で見ている。


「あぁ、あれは闇の鎧の魔石(ニガレオス)……闇の鎧と話してるんだ。マシロも多分黒の大陸に連れて行けるってさ」

「闇の鎧と会話……闇騎士(ダークナイト)ってなんでもアリなのねぇ。てか、白馬も連れて行けるのね。一緒に行けてうらやましいわ」


頬に手を当てうらやましそうにマシロを見るジェシカに、俺は胸を張って言った。


「俺たちがあの黒いモヤをどうにかすればみんな黒の大陸(むこう)に行けるようになるんだろ?ジェシカが黒の大陸に行けるように俺たち頑張ってくるよ」

「いや、アタシは()アナタたちの助けになるよう行きたかったんだけど……でも、そうね。一緒に行けなくてもここからサポート出来ることもあるだろうしアタシたちも頑張るわ」


力強くジェシカが頷きガッツポーズをとる。

そこに舵を取っているはずのライアンが飛び込んできた。


「ジェシカ、船が進まなくなった。何かにぶつかったと言うよりは風で押し戻される感じだな」


みんなで甲板に出てみると、辺りはかろうじて周りの景色が見えるくらいの薄暗いモヤに包まれていた。たしかに船の進行方向にぶつかるような岩などはない。ライアンの言う通り進もうとすると何か見えない力で押し戻されているようだ。

甲板の先からジェシカが身を乗り出し、船の穂先から向こうに手を伸ばす。


「あぁ、ほんとね。風みたいなものに押し戻されるわ。反発力の高いクッションみたい」

「へぇー、俺も触ってみたい」


ジェシカの表現に興味をそそられ、ジェシカと場所を代わってもらったあと、俺もその場所へ手を伸ばす。

すると、ジェシカが触っていた辺りを手はすり抜け、完全に伸ばしたような状態になる。


「あ、あれ?」


その手を振り回してみても、何かに当たる気配はない。


「なんでぇー?」

「それが結界みたいなヤツなんじゃねぇの?」


ちょっとどいてみ、と今度はライアンと場所を代わりライアンが手を伸ばすと、やはり何かに阻まれて手は伸ばせないらしい。


「ここが限界線ね。ボートを下ろすわ」


そう言うとジェシカは甲板の脇に括り付けられていたボートの紐を解き、床に置く。

そして魔力を集中させると、ふわり、とボートを浮かべ海面へ下ろした。


「さて、アタシたちが出来るのは今はここまで。後はアナタたちが頼りよ」

「あぁ、ありがとうジェシカ、ライアン」

「二人ともありがとう!」

「ありがとうございました」


俺、ロバート、にーちゃんが順番にお礼を言い、自然と視線はエレンに集まる。


「……っ」


さすがにこの空気の中、何も言わないわけにはいかないエレンは声を振り絞る。


「……行ってくる」


そんなエレンにジェシカは微笑みながら言った。


「行ってらっしゃい」


ぽん、とエレンの頭をひとなでし、ジェシカは手を叩く。


「さ、じゃあみんなも船の上に下ろすから集まって!」


ジェシカの掛け声でみんなひとかたまりになる。


「船の上に森林竜(シルワドラコ)と馬は下ろせないから、アナタ達は海の中よ。すぐに泳げるようにしておいてね」

「クォ!」

「ヒヒン!」


ジェシカの声に応えるよう返事をするドラコとマシロ。

その返事をキッカケに俺たちの体が宙に浮いた。


「そっと下ろすけど、一応衝撃に注意して」


ふわふわと漂いながら船の甲板から海の上へと移動し、そのまま下へ下ろされる。

あと少しで船に足がつく、というところでドサッと落とされた。

ドラコとマシロはバシャンと海の中に落ちるもののすぐに顔を出し船の周りを泳ぎ始める。


「……これ、黒の大陸の港町までまだ距離ありそうだけどこのオールで漕ぐのかな?」


船の中には手漕ぎ用のオールが用意されていた。

それじゃあ、順番に漕いでいこうか、と声をかけようとしたところで上から手綱が降ってくる。


「それ、渡し忘れてたわ!せっかく泳げるんなら森林竜(シルワドラコ)と白馬に連れて行ってもらいなさい」


船の上からのジェシカの助言を聞き、ドラコとマシロに確認すると二匹とも「任せろ」

とでも言うように機嫌が良くなったので手綱をかける。


──その手綱を伝うように闇の魔力を流してやれ。ずっとの必要は無い。この結界を抜ける間だけだ。


闇の鎧の魔石(ニガレオス)の言葉に従い、にーちゃんはマシロに、俺はドラコに闇の魔力を流す。

その魔力が心地いいのか二匹の機嫌はさらに良くなった。

そのまま力強く船を引っぱり泳ぎ出す。


「気をつけて言ってきてねー!無事に戻るのよー!」

「待ってるからなぁー!!」


背中にジェシカとライアンの声を受け、俺たちの乗る船は黒の大陸の結界の中へと進み始めた。


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― 新着の感想 ―
[一言] 謎? みんなで乗っている”船”は結界に拒まれ、乗員が闇属性だけになった途端、”小舟”は結界を通る? つまり、結界は乗員の属性を判別して、一時接触している物体にも影響を及ぼす? とか、真面目に…
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