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異世界行ったら……  作者: 片馳 琉花
第3章 黒の大陸 編
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39.うみねこ亭

そして剣の鞘を収めている腰のベルトから、今俺たちに配ったような御守りを外す。


「黒珠の近くに、もしこれとハマる御守りが落ちていたら持って帰ってきて欲しい」


差し出された御守りを受け取る。

これは二つでひとつの形になるような御守りみたいだ。


「昔、あの近くに落としてきてしまったみたいなんだ。もし見つけたらでいいから、頼む」

「わかりました!」


俺はその御守りを自分の腰のベルトに結ぶ。


「悪いね。本当は自分で探しに行ければよかったんだけど……」

「気にしないでください。あ、でも見つけられなかったらすみません」

「あ、無理はしないでくれよ。身の安全第一で行ってきてくれ」

「はい!」


あまり引き止めるのも悪いから、と言うケインさんに他にもいろいろ道中のおやつなんかのおすそ分けをしてもらい、そのまま見送られると俺たちは船の用意されてるという港町に向かう。


「ピスカに着くのは夕方くらいかな」

「そうだな、日が沈む前には着けるだろう」


ロバートとエレンの会話から、港町の町の名前が『ピスカ』だとわかる。


「確かそのピスカに着いたら宿屋に行って『テセウスのさんの遣い』だって伝えろって言われてたよね。宿ってひとつしかないのかな?」

「そんなに大きな町ではないからな。黒の大陸に渡れた頃は貿易港としても賑わっていたようだが今は基本は漁師の町だ」

「漁師の町、か。そういえば船って馬は乗れるのか?」


にーちゃんとエレンが話している時にふと疑問が浮かんだ。

普段漁師がいるような港だと、漁港ってことだろ?

もしかして船も思ったより小さかったり……?


「馬は……置いていくしかないだろうな……途中までは船に乗せていけたとしても、黒の大陸の手前で船を乗り換えるだろう?恐らく馬は小舟には乗れない」

「え?!じゃあ黒の大陸着いたら歩きってこと?!」


まさかの旅行プランだった……

よかった、マジックバッグがこの世界にあって……

旅の荷物を持って歩いて行くとか多分俺無理。


「歴史書によると、黒の宝珠は大陸のこちら側の方にあるらしいからそんなに歩かなくてもたどり着けるだろう」

「ま、こっちに近いからこそ、黒珠の異変がすぐこっち側にも出ちゃうんだろうけどね」

「東の森の瘴気溜りの異常発生といい、少なからず影響は出始めているだろうな」


ロバートとエレンで真剣にそんな話をしている。


「異常発生ってことは、今まではあの規模の瘴気とかの被害はなかったってことか?」


俺とにーちゃんはこっちの歴史がまだあまりよくわかっていないせいか、あの瘴気溜り発生の異常さがいまいちピンとこない。


「規模で言えばあったかもしれないが、あんな森の入口付近で起きたことはなかったと思う」

「俺もあんなに視界を遮られるほどの瘴気は見たことがないよ。瘴気耐性があったからいいようなものの、なかったらと考えると未だに体が震えるもん」


あの時のことを思い出したのかロバートが片手で肩をさすっている。


「あれが頻発する前に大元の瘴気のもとを浄化してこないとな」


エレンがまだ見えぬ地平線の先の黒の大陸の方を見つめ、そう呟いた。


途中で何度か休憩を挟み、エレンが言った通り夕方になる少し手前で、港町ピスカへと到着する。

町の入口で馬を降り、手綱を握りその紐を引いて町中を歩く。

ドラコはと言うと、首輪をつけ、そこに繋いだ手綱を引いて同じように歩く。

王都と違い、こういう町だとたまに馬以外の動物や大人しい魔物を運搬用に連れて歩くらしく、ドラコのこともそんな何かの動物か魔物だと思われているらしい。


……森林竜(シルワドラコ)だってバレたら面倒そうだけど……


そんな町の人達はドラコのことはあまり気にしなくても闇騎士(ダークナイト)姿のにーちゃんが珍しいのかチラリと視線は送ってくる。ただ、こちらの町までは闇騎士(ダークナイト)の噂は届いていないのか大騒ぎにはならなかった。

もしかしたら全身鎧を纏っているから見ていただけかもしれない。


だって、この町の人……

みんな筋肉がすごい……

鎧なんていらないんじゃない?ってくらい筋肉で武装してる。


そのせいか女の人もみんな恰幅がよくて強そうに見える。


そんな町中を少し歩いていくと、街の建物の中で一番大きくて立派そうな建物の前でロバートが立ち止まった。


「……うみねこ亭。ここだ」

「え、これ宿?」


あまりの立派な佇まいに思わず萎縮して足が竦む。

これ、宿屋って言うより役場みたいな大きさなんだけど……


怯みつつ、そっとその大きなドアを押し開く。

開けた先に広がっていたのは……


「うわぁ……!!」


俺とにーちゃんの声が重なった。

そして二人でアイコンタクトを取る。


「これ……」

「あ、疾風(はやて)も思った?!これってさ、」

『めっちゃギルドっぽい!!』


最後は俺とにーちゃんでハモる。

そう、ログハウス調の壁に覆われ、部屋の中は左半分が酒場、と言うか食事処。右半分がカウンターと掲示板がある役所のような部屋の配置。

よくゲームとかマンガで見るギルド!って感じの造りだった。


俺とにーちゃんのテンションが上がったのを見てロバートが首を傾げた。


「二人とも、ここ来たことあるの?」

「いや」

「ないけど?」

「え、でもギルド知ってるんでしょ?」

『ギルド?!』


俺たち二人に気圧されてロバートが一歩下がる。


「え、そうだけど。ここ、宿屋兼この町の商業ギルドだよ」

「マジかー、ヤバい。俺めっちゃテンション上がってきた」

「僕もちょっとワクワクしてる」

「二人ともここでそんなにテンション上がるの?!」


入口の近くで三人で話していると、いつの間にか受付を済ませたエレンが俺たちのもとに戻ってくる。


「いつまでもそこにいると邪魔になるぞ。部屋は二階の奥だそうだ。馬は裏に厩舎があるからそこに繋いでおけばいいらしい」

「わ!エレンごめん」

「悪ぃ」


受付で預かった宿の利用者に渡されるという木札を俺たちに配ると、エレンはさっさと階段へ足を向けた。


「私は少し早いが一旦休む。()()()()は伝えたからその内船の案内人も来るだろう。夕食頃には起きる」


例の伝言とは、『テセウスさんの遣い』と伝える、と言うやつだろう。

一番年下なのに一番しっかりしているエレンに全て任せてしまった……


申し訳なく思っていると、特に気にした様子もなく、「じゃ、おやすみ」と二階へ上がって行った。

少し気まずげに三人で目配せすると、にーちゃんが


「とりあえず、裏の厩舎に馬を連れていこうか……」


と力なく言ったので、俺達も後に続く。

外で一度待たせていた馬たちの元へ戻ると、ドラコは最近馬と共にいることが多いので何故か馬に馴染んで一緒に日向ぼっこをしていた。


「おまたせ、ほら裏に行くよ」


繋いでいた手綱を引き、建物の裏へと回る。

厩舎には先客がいて、その人たちも馬を預ける手続きをしているようだった。

その後に並ぶように近づいて行くと……


そこには……

振り返った先客が、こちらを見て笑顔になる。


「久しぶり、ハヤテ」


懐かしい顔が俺たちを出迎えてくれた。

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