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異世界行ったら……  作者: 片馳 琉花
第3章 黒の大陸 編
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36.出発前夜

話を聞いていた団員たちに、ざわ……と、どよめきが走った。

にーちゃんが闇騎士(ダークナイト)だった、というところではない場所で。


「バリー副団長と……特訓……?」

「しかもマンツーマンで……」

「……は!だからあんなに体型が変わって……!」

「副団長と特訓とかもう刑罰だろ……」


聞こえてくるセリフは不穏なものばかりだった。


「え、そんな引かれる感じ……?僕、『騎士団の団員たちならみんなやってる』って言われながらトレーニングしてたんだけど……」


そんなにーちゃんの漏らした呟きに団員たちは無言で首を横に振った。


「シノブ……お前、メンタルだけなら騎士団内トップレベルかもしれないぞ」

「あぁ、剣の技術とかは別として、体力も多分ある」

「闇の鎧装備すればいつもの魔法アレルギー出ないんだろ?ならかなり最強じゃないか?」


バリー副団長の特訓に耐えた、ということの方が、闇騎士(ダークナイト)だった、ということより騎士団の団員たちには驚きが大きかったようだ。

「あの特訓に耐えられたのなら黒の大陸くらい楽勝か?」なんて声も聞こえる。

……にーちゃん、どんな特訓してたんだよ……


思ってもみない方向から、黒の大陸行きのお墨付きをもらったにーちゃんは、団員のみんなからもみくちゃにされながら「頑張ってこいよ!」と声援を貰っていた。

照れながらも「ありがとう」と返すにーちゃんの姿を見て、オセアノさんの食堂で見たかった光景はまさにこれなんだよ!と一人感慨に耽っていると、背後から羽交い締めにされた。

ビックリして振り返ると、バリーさんが右手に俺、左手にロバートを掴んで団員たちの輪の中に引きずっていく。


「時間があればお前たち二人も鍛えてやれたんだがな。明日出発じゃ時間も取れやしない。頑張ってこいよ!」


……明日出発で助かった……特訓回避!

とロバートとアイコンタクトで会話していると、バリー副団長は、そのまま俺たちを持ち上げて団員たちの方へ放り投げる。


「え?!」

「うわぁ!!」


落ちる!と思ったその時団員たちにキャッチされ、そのままロックバンドのライブのダイブのように団員たちの上をコロコロ転がされた。


「お前たちも頑張れよ!」

「無事に帰ってこいよ!」


団員たちの声援を受けながらコロコロ転がり、同じようにもみくちゃにされていたにーちゃんのもとへ送られる。


「すごい熱気だな」

「うん……」

「期待に応えないとね」


みんなの気持ちを受け取り、改めて気合を入れた。


「よーし、じゃあ夕飯は豪華に肉を用意したから黒の大陸に行く前にここで英気を養ってってくれ」


肉、の単語に団員たちがさらに活気づく。


「え、副団長俺たちの分もあるんすか?!」

「あるぞ!団員(おまえ)たちは東の森捜索があるから、こちらも気合い入れて調査してもらわないとな」

「了解です!」


肉は宿舎の外に用意されてるそうで、みんな勢いよく外へ飛び出して行った。

そこからはあっという間にバーベキューの準備が進み、あっという間に設営を終わらせた団員たちは各々肉を焼き始めていた。

宿舎の前庭の至る所で、肉の焼けるいい匂いがする。


団員(みんな)の手際の良さについていけず、俺たち三人が呆気に取られていると、リアンが手招きをして呼んでくれた。


「突っ立ってるとあっという間に肉終わるぞ!早く食えよ」

「あ、ありがとう」


誘われるままリアンのところにおじゃますると、俺のあげたハーブソルトがそこに用意されていた。


「リアン、これ」

「おー!そのハヤテからもらったやつ、使ってくれ!てかそれやべぇな、いつもの肉がそれかけるだけでなんかいい肉みたいになるんだよ」


そう言って焼きながら肉にハーブソルトを掛けている。周りをよく見てみればどのグループにも似たような調味料が置いてあるのが見えた。

……あれ?俺こんなに作ったっけ?

不思議そうに各グループのハーブソルトを見ていた視線に気づいたのか、リアンがニヤリと笑って教えてくれた。


「俺がそれもらった時、ほかの団員たちに見つかってさ。でもこれは俺がハヤテにお礼にもらったものだからあげられないって言ったら団員の誰かがどこからかハーブソルト(それ)の作り方聞いてきたらしくて、それからあっという間に騎士団(おれたち)の中に広まったんだ。今なら誰でも持ってるんじゃないか?」


誰でも持ってる?!マイハーブソルトってこと?!みんな気に入りすぎでしょ……

でも……


わいわいと肉を食べて盛り上がっているみんなの顔を見ると、そのどれもが楽しそうに、美味しそうに食べていたので見ているこっちも嬉しくなる。


「よかった、みんな喜んでくれたみたいで」

「いやまじ感謝。ハーブソルト(これ)のおかげで俺、食事がもっと楽しみになったからな」

「かけると美味いもんな。でもあまりかけすぎるなよ?!塩分取りすぎると身体に良くないからな」

「そうなのか?じゃあそこは気をつける」


そんな他愛のない話をしながら、出発前夜は和気あいあいと過ぎていった。


明日はいよいよ黒の大陸に出発……

どんな場所かイマイチまだよくわからないけどみんながいればなんとかなる気もする。

よし、気合い入れていくか!!



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