表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界行ったら……  作者: 片馳 琉花
第3章 黒の大陸 編
144/226

22.薬草の効能

そんなことをしていると、料理の試作品ができたのか大皿を持ったオセアノさんが厨房から出てきた。


「お?なんだそのレモンの山は……」


持ってきた大皿の置き場がなかったので慌ててレモンを紙袋に戻してテーブルの上を片付ける。


「ほら、試しに薬草を漁師のごった煮(アクアパッツァ)に入れてみた。薬草ってすげえのな、なんか香りが変わって味にも深みが出たんだよ」


テーブルの上にドン、と置かれた大皿には見た目にはさっきと同じ漁師のごった煮(アクアパッツァ)。ただしよく見ると薬草が入っている。

みんなでその大皿を囲み少しづつ口に運ぶ。


「あ、美味い」


入っている薬草のおかげか、さっきまで多少残っていた魚の臭みが取れてスッキリとした味になっていた。


「いつもの磯っぽい味もいいけど、これはこれで食いやすくていいな」


食べ慣れていると思われるケイレブも絶賛している。

うん、これほんとに美味い。


「あー、ハヤテと言ったか?相談なんだが、()()ここの料理として出してもいいか?」

「へ?いや、オセアノさんが作ったんだしここの料理だろ?」

「いや、俺じゃ料理に薬草入れるなんて考えつかなかったからよ」

「俺はほんとなんもしてねぇしな……いいよいいよ!美味いもんはみんなで食った方がいいしさ、他の人にも食べさせてやってよ」

「ありがとよ!じゃー、アイデア料代わりにハヤテたちはここの料理、タダで食わしてやるからいつでも食いに来てくれ」

「え?!それはさすがに悪いって言うか……」


タダ飯をたかりに来るのはさすがに……と思っていると、ケイレブが横槍を入れた。


「ハヤテ、遠慮とかしなくていいぞ。多分、あわよくばまた新しいメニューのアイデアもらおうとしてるだけだからな、このオッサン」

「バレたか」

「あ、じゃあそれなら……」


薬草を料理に入れる、ということを助言しただけでは対価に合わないなと思ってた俺は、オセアノさんにレモン水の作り方も伝授しておいた。

材料自体はこの辺で手に入るものだし作り方も難しくないしで、オセアノさんはさらに大喜びしていた。


「悪いな、居座っちまって」


しばらく店内で色々な話をして、オセアノさんは夜の営業の仕込みがあるというというところで俺たちは店を出た。


「いや、ケイレブ。こっちも引き止めて悪かったな。黒の大陸から帰ってきたらいつでも飯食いに来てくれ。……必ず戻ってくるんだぞ」


オセアノさんは俺とロバートの肩を叩き、そう言うと店へと戻って行った。

あー、そうか……にーちゃんは闇の鎧着てたから一緒に行くってわからなかったのかな……


ちらりとにーちゃんの顔を伺うと、本人は特に気にした様子は見られない。けどなんか俺は『にーちゃんも一緒に行くんだから一緒に応援してもらいたかったな』と胸の辺りが少しもやっとする。


「さて。じゃあ買い物の続き、行きますか!」


ケイレブに案内され、商店街をウインドウショッピングして回る。

普段の買い物なら目的のものだけ買ってパッと帰るだけなんだけど、この世界は珍しいものが多すぎてついつい色んな店を見てしまう。

……なんかいつも付き合わされてた、かーちゃんの買い物の気持ちがわかる気がしたわ……


ロバートもこんなにじっくりと商店街を見て回ったことがないみたいで俺とにーちゃんと同じようにテンションが上がっていた。


「いやー、色々なものがあって飽きないね」

「あんまり買えないのがつまんねぇけどな」


テンションがあがったロバートに俺も相槌を打つ。

この世界(ここ)のお金は緑珠守護団にいた頃、守護団の仕事の一環で見回りに出たり、掃除屋(ラートゥス)を倒した時に持ち帰った素材を売った金が少し懐に入ったりした。

なので多少は持ってるけど、これから旅に出るのに物はたくさんは持てないから、と泣く泣く買うのを諦めた物たちが走馬灯のように頭の中を駆け巡る。

戻ってきたら絶対買いまくってやる……!


「そういえば結局疾風(はやて)、リアンに何買っていくの?」

「それなんだよなぁ……」


にーちゃんに聞かれ、改めて考える。

ロバートはバリー副団長に街で人気の菓子を買って帰ることにしたみたいだけど俺はどうしようかなー。

視線を巡らせていると、ふと肉屋が目に入る。

……そうだ!


「なぁケイレブ。騎士団の食堂って使わせてもらっても大丈夫なもん?」

「食堂?まぁ団員たちの飯作りの邪魔にならない時間なら基本解放されてるぜ。飯だけじゃ足りないヤツらが自分たちで作ってたまに食ってるし」

「お、マジ?なら俺リアンに()()買ってくわ」

()()?」


そう言って俺は店の軒先にぶら下がっている新鮮な肉の塊を手に入れた。


「お、肉か!」


俺が手にした肉を見てケイレブの瞳の奥がキラリと光る。


「これはリアンのだからな?」

「わーかってるって」


味見くらいはさせてもらうけど、と言った呟きは聞かなかったことにする。


ある程度買い物を終えて、肉も手に入れたところで俺たちは王宮へと戻ることにした。


「今だとちょうど夕飯の仕込みやってるかなー?あ、でも戻る頃には仕込み自体は終わってるかもしれねぇから一応厨房に、顔出してみるか」


帰りも再びケイレブの後ろに乗せてもらい、王宮に戻ったあと厨房に案内してもらうことにした。これはやっぱりケイレブにもお礼するべきかな……

でも、このちょっといい肉はリアンの分しかないから今日は味見で我慢してもらおう。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ