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異世界行ったら……  作者: 片馳 琉花
第3章 黒の大陸 編
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20.漁師のごった煮

その悔しそうな顔を見て、俺はどうにか似たようなものを作れないかなと記憶の糸を辿る。

……そういえば……


「レモンならこっちの世界でも手に入るかな?」

「レモン?それなら店で買えるけど」


ロバートがそう答えるとケイレブが食いついた。


「レモンがあれば飲めるのか?なら俺そこの店まで買いに行ってくるわ。飲んでみたいし」


席を立ったケイレブをそっとにーちゃんが引き止める。


疾風(はやて)、はちみつはどうするんだ?てかこっちって蜂とかいるのかな……」

「それなんだけどさ」


俺は昔近所の子供が遊びに来た時に、かーちゃんが出した飲み物を思い出した。


「昔かーちゃんがはちみつレモンよく作ってくれてたんだけど、遊びに来た子が小さくてはちみつは飲ませられないってなった時に、メープルシロップで代わりに作ってくれたんだ。それが結構美味かったんだよ。メープルシロップっぽいのならこの世界(こっち)にもあったからそれでいけるかなって」

「メープルシロップ?そんなものあったの?」


俺はレモンを買いに行こうとしていたケイレブに、もうひとつ買い物を頼む。


「もし薬草とか買えるなら、回復薬の花を買ってきて欲しい。加工前の蜜があるやつ」

「回復薬の花の蜜?花の部分はいらねぇのか?」

「うん、蜜が欲しいかな」

「了解!ひとっ走り行ってくるわ。あ、飯来たら食ってていいぞ」


そう言ってケイレブが店を出て言って直ぐにオセアノさんが美味そうな匂いの皿を運んできた。


「待たせたな!特製漁師のごった煮(アクアパッツァ)だ」


ゴトリ、と目の前にたくさんの貝と魚が一尾まるっと入った皿が置かれる。ふわり、とニンニクの香りが鼻を掠めた。


「うわぁ、美味そう……」


思わず声が出ると、オセアノさんが大きく口を開けて笑った。


「ハハッ!美味そう、じゃなくて美味いぞー!これは俺からの出発祝いだ、遠慮なく食ってくれ!……ん?」


少し店内を見回し、オセアノさんは空いた椅子を見た。


「ケイレブのやつどこいったんだ?」

「あ、ケイレブなら今ちょっと買い物行ってて……すぐ戻ると思います」


にーちゃんがそう説明していると、目の前のロバートが料理に釘付けになっていた。


「とりあえず冷める前に食おうぜ!せっかく出来たてなんだし」

「お、そうだ!食ってくれよ、今付け合せのパン持ってくるから」


オセアノさんがパンを持ってきてくれたので、ケイレブには悪いけど一足先に食べさせてもらうことにした。


「いただきまーす」


三人で声を合わせ、各々料理を口に運ぶ。


「う、美味いー……魚の身がホロホロと口の中で解ける……」

ガーリック(ガァリーク)が効いてて美味い!」

「これ、魚と貝からいい出汁が出てるのかな?」


俺たちが美味い美味いと食べてる姿を見てオセアノさんも満足気に頷いていた。


「そうだろ、美味いだろ。()()俺の故郷でよく食べられてるやつなんだけど、簡単だし美味いしでうちの食堂の看板メニューなんだ」

「オセアノさんの故郷……海沿いの街とかなんですか?」

「そ。魚とか貝とかよく採れるから漁師のごった煮(アクアパッツァ)はよく食ってたな。同じような地元のヤツらにはこのメニュー『懐かしい味』って人気なんだけど……」


そこでちょっとオセアノさんは考える仕草をした。


「俺はさ、他とちょっと違う味にしたいんだよ。色々試行錯誤してはいるんだが、元々がシンプルな味付けだから、何をやっても結局元の味付けに戻っちまってなー」


そんな話をしながら料理を食べていると、バタンとドアを開けケイレブが戻ってきた。


「ただいまー!お、今日は漁師のごった煮(アクアパッツァ)か!俺これ好きなんだよなー!」


買ってきたものが入っていると思われる紙袋を空いているテーブルに置き、ケイレブは豪快に料理を食べ始めた。




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