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異世界行ったら……  作者: 片馳 琉花
第3章 黒の大陸 編
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15.出立式

「明日ってめちゃくちゃ急すぎませんか?そもそも出立式って何をするんです?」


にーちゃんが俺も思っていた疑問をテセウスさんに聞いてくれた。


「うーん、平たく言うと『祝福を受ける』かな?」

「祝福?」

「旅の無事を祈って、旅立つ人に祈りを捧げるんだ」

「あー、何となく理解しました」


要するにあれかな?ドラマとかの撮影で、『ドラマが成功しますように』って撮影前にみんなで神社でお祈りしてもらう的な。まぁこの世界に神社とかはないだろうからあんな日本式ではないと思うけど。

にーちゃんも同じような物を想像したらしく頷いている。

問題はロバート。何故か表情が強張り、冷や汗をかいていた。


「そうか、そうだよね。出立式やるよね……俺、人前苦手なんだけど……」

「なに、そんなに時間は取れないから大掛かりにはならないよ。気軽にしていてくれ」


そうテセウスさんは言っていた。

……言っていたんだ……


「ねぇ、なにコレ」

「ちょ、顔上げられないんだけど」

「僕、気配消していい?」

「往生際が悪いぞ、三人とも。私なんてなんの前準備もなく連れてこられたんだ。腹を括れ」


翌日、あさイチで再びテセウスさんの執務室に呼び出されたかと思えばあっという間に俺とロバートとエレンはなにやら着慣れない正装をさせられた。

エレンは徹夜で薬を作っていたところ、突然呼び出されたらしく着の身着のまま連れてこられ着替えさせられていた。にーちゃんは今日この後のスケジュールを聞いた途端動かなくなり、まるで闇騎士(ダークナイト)の鎧のせいで置物の甲冑のようになっている。

そして俺たちは屋根はないけれど立派な装飾が施された馬車に乗せられ、今王宮前の立派な通りをその馬車でパレードしている。

沿道にはたくさんの街の人達が並び、各々白く輝く綺麗な花びらを俺たちに振りまいていた。

その馬車の上でもう一度呟く。


「ねぇ、なにコレ」

「ほら、お前ら。笑顔が足りないぞー。もっと笑顔で街の人からの祝福を受けておけよー」


馬車の御者台からこちらを振り返り、ケイレブが俺たちを窘める。


「なぁケイレブ……俺、こんな大掛かりなパレードをするとか聞いてないんだけど……」

「何言ってんだよ、祝福は与えてくれる人数が多ければ多いほど、旅の無事が祈れるんだ。黒の大陸の瘴気の浄化なんて、どんな危険が待ち構えているかわからないんだからこれくらい祝福を受けておかないと」


平然とそんな返しをされるけど、馬車上の男三人は緊張でそれどころじゃない。唯一キラキラを飛ばしながら沿道の黄色い声援と祝福を笑顔で受けているのは徹夜明けでボロボロのはずの最年少の少女、エレンだった。

いやまじでエレンはやっぱイケメンだよ……

俺、敵わないよ……


「テセウスさん、大掛かりにしないって言ってたのに……俺、人前苦手だって言ったのに……」


ロバートはそう言いつつ、半泣きになりながらも手を振っていた。

俺も途中から、無理やり笑顔を貼り付けて選挙カーの人のように手を振り返す。

にーちゃんは完全に闇騎士(ダークナイト)の置物になっていた。


一通りのパレードが終わり、目的地の王都の神殿へ馬車が着き、俺たちが馬車から降りると神殿前の広場にもたくさんの人達が集まっていて、さらに降り注ぐ花びらが増える。


パレード前にテセウスさんから聞いた説明によると、この花は『聖なる花』と呼ばれていて、この国では神事の時に使われるなにやらありがたい花だった。

一般の人が旅立つ時は家族とか友達に花びらを振りかけてもらうくらいらしいけど、今回の俺たちの場合、何が起こるかわからない場所へ向かう上に国を挙げての旅になるからと、たくさんの人から祝福を受けられるようにこのパレード形式にしたらしい。

昨日の今日でこれだけの準備をするなんて……

そりゃ朝見かけたテセウスさん達、死にそうな顔してたわけだ。


花びらのシャワーの中、アレックス団長とバリー副団長に先導され俺たち四人が神殿の中へ足を踏み入れると、とたんに空気が変わる。

ひやり、と澄んだその空気は、緑珠の祠で感じたあの神聖な空気と似ていた。

そのまま神殿の奥へと進んでいくと、突然吹き抜けの中庭のような場所へ出る。

その中央には大きな木が一本生えていた。

その木には、さっきまで振りかけられていたあの白く輝く花が無数に咲いている。

もしかしてこれ、聖なる花のなる木?


俺はその木の放つ聖なるオーラに圧倒され、ただただのその木を見上げていた。





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