14.魔力飴効果
3章12話二人のワタリビト
にて、重大なミスを発見したので加筆しました。
(エレンがいつの間にかいなかったことになっていたので辻褄を合わせてあります……申し訳ありません!)
「もし魔力の揺らぎが発生したら、おそらくそうなる」
え?!
「待って、もしそうなったら黒の大陸と守護の森の瘴気は……?」
「浄化されることなく溢れ出し、ここら一体は瘴気が溢れる。それにより瘴気中りが流行り、多くの人が病に倒れる……だろうね」
「あれ……もしかして思ってる以上に俺たちって時間が無い……?」
テセウスさんの言葉にロバートが呆然と呟いた。
そのロバートの質問にテセウスさんは答える。
「まぁ今のところ魔力も瘴気も大放出の前兆はないけど、カウントダウン自体ははじまっているかもしれないね。ここから黒の大陸へ渡る港まで約三日。港から黒珠の辺りまでは船に乗って一週間ほど。のんびりはしていられないかもしれないな。アレックス」
「はい」
「やはり出立式の日取りを早めるとしよう。各部署にそう伝達しておいて。あとついでにさっき出ていったエレンを見かけたら、出発が早まるから薬の用意をよろしく、と、伝えておいて」
「かしこまりました」
そういうとアレックスさんはバリーさんと連れ立って部屋を後にする。その姿を見送りロバートが尋ねた。
「あの、テセウスさん。薬って?」
「ああ、聞いてると思うけどシノブくんは回復魔法がかけられないからね。専用の回復薬を持っていかせる。エレンも同行するから薬草さえあれば向こうでも作れると思うけど、あの大陸が今どうなっているか分からない以上こちらでできる限り準備はしておいた方がいいからね。だからハヤテくんのアイデアがものすごく助かったんだ」
「俺の?」
「液体を個体にする方法、考えてくれただろう?あれは回復薬を持ち歩かなければいけない人たちにとって、今までの苦労を覆す発明なんだよ。本当に感謝する」
ぺこり、と頭を下げられ俺は慌てて首を振った。
「うわ、頭をあげてください!国のお偉いさんに頭下げられるのはちょっと……!」
「あの液体の回復薬を個体に?疾風、そんなこともできるんだ」
テセウスさんに恐縮していると、にーちゃんからは羨望の眼差しで見つめられる。
いや、まじで恥ずかしいんだけど!
「あ、そういえば……」
俺が恥ずかしさに悶えていると、テセウスさんが何かを思い出したように手を叩く。
「さっきも言った通り、なるべく早めに黒の大陸に向かってもらう事になると思う。そこでさっきちょっと小耳に挟んだんだけど、ハヤテくん馬に乗れないって本当かい?」
「え、あ、はい」
「そうか、じゃあ誰かと相乗りで行くか。ここへはロバートと相乗りで来たのかな?」
「いや、実はドラコに乗せてきてもらいました」
「ドラコ、ってあの森林竜かい?!」
「そうです」
テセウスさんは驚きの表情をうかべる。
「森林竜が懐いているとは聞いていたけど、乗せてくれたのか。それは本当に珍しいね」
「そうなんですか?」
「森林竜は姿もなかなか現さないからね。その上手懐けてるだなんて、ハヤテくんの人柄かな?でもそうか、それならハヤテくんはその森林竜での移動でもいいかな?森林竜なら体力もあるし、いざとなったら速度も出せる。懐いているから最高の相棒だと思うよ」
ドラコを置いていかなくても済みそうな提案に、俺は嬉しくなる。
「ありがとうございます!ドラコを連れて行っていいならこちらも助かります!」
「よかった、それならその方向で準備をしよう。そしたら急だけど明日、出立式を行うからよろしくね」
「「「明日?!」」」
俺とロバートとにーちゃんの声が見事に仲良く重なった。