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異世界行ったら……  作者: 片馳 琉花
第3章 黒の大陸 編
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8.利き水

「薬草って回復薬の元になるだろう?だから私たちは元々普段から薬草自体は摂取してるんだ。ただ、その場合大抵回復薬に加工してある。薬草をそのまま口にする、ということはあまりないんだ」


エレンがそう説明を始めると、ロバートが昔を思い出しながら同意する。


「あーたしかに。初めにハヤテが肉と一緒に薬草入れるって言った時はビックリしたもんなぁ。薬草そのまま食べるの?!って」

「だが、ハヤテはそのまま料理に使った。調べてわかったんだが、実は薬草は加工せずそのまま体内に入れると、多少その摂取した者の魔力の質を変える。と言っても大袈裟なものではなく、摂取した薬草の効能によって疲労感が減ったりだとか、体の中の魔力の流れが良くなっていつもより魔法の威力が上がるとかそういった小さなものだがな。しかも効果はそんなに長く続かず数日で元に戻る」

「え、でも緑珠にいた頃、料理に薬草結構使ってたけど、誰もそんな『魔力の質が変わったー』なんて言ってる奴いなかったぜ?」


初めて肉を焼いた日からヘンリー先生とマシュー先輩がやたらと薬草増やして、それをソフィアさんがかなりの頻度で料理に使ってたから、そんなことになれば誰か気づくと思うんだけど……


「さっきも言った通り、効果としてはささやかなものなんだ。その日の体調が少しだけ良かった、で済むような。ただ()()()にハヤテはその効果が持続しやすいんだろうな」

()()()?」

「あぁ、私は瘴気耐性だと思ってるんだが、そこはおいおい検証していくつもりだ。で、その誰も気づかなかった魔力変質に気づかせてくれたのが森林竜(シルワドラコ)だ。実験にあの森林竜(シルワドラコ)の協力を頼みたいんだが、いいだろうか?」

「ドラコの?実験って何するんだ?」


さすがに実験体とか解剖とかするつもりなら絶対に協力はさせたくないけど……

と、こちらの警戒心とは裏腹に、エレンの提案は肩透かしを食らうようなものだった。


「水?水を飲ませるだけ?」

「そうだ。色々なタイプの水を飲んでもらって、まずは森林竜(シルワドラコ)の好みを見る。その後、各水の成分を分析してどう言ったものを森林竜(シルワドラコ)が好むのか、それは何によって変わるのか、というところを見たい」

「まぁ、水飲むくらいなら……ドラコにとって好みの水がわかればなるべくそれをあげたいし」

「ありがとう、協力に感謝する!」


そう言うとエレンはテキパキとラベルの貼られたビンに色々な種類の水を入れたものを箱詰めにして渡してきた。

水はここにいる全員が魔力で出したもの(にーちゃんは、アレルギーが出るので水の魔石を使って出したもの)、薬草を溶かしたもの、回復薬を溶かしたもの、瘴気水、水に魔力を溶かしたもの(さっきの空き時間に、にーちゃんが闇の魔力の実演で作っていたキラキラの水を、たまたまエレンが見つけてそれも突っ込まれた)、これらを後でドラコに選んでもらうんだそうだ。

ヘンリー先生とドミニク所長は別の実験があると言って研究室に残り、結果として黒の大陸に向かう四人でドラコが留守番をしている、宿泊棟の部屋へ戻った。


部屋の中に入ると、真っ先にエレンが口を開く。


「先程私は瘴気耐性があるからハヤテの体質的に魔力変質が起きたあと持続しやすい、と言ったが恐らくワタリビトの体質、というのもあると思っている」

「え、てことはにーちゃんも魔力の質が変わりやすいってこと?」

「あぁ。だから森林竜(シルワドラコ)が選ぶのはハヤテの水とシノブの水……と思っていたんだがなぁ……」


部屋に戻り、寝ていたドラコにちょっとだけ起きてもらって目の前に先程の水の入ったビンを並べてみると、ドラコの選んだ水の順番上位は、瘴気水、俺の水、キラキラ水だった。にーちゃんが出した水は、まさかの最後。


「まさか、シノブの水が最後になるとはな」

「何基準かわからないよねぇ」

「なんか僕、無駄にショックなんだけど……」


なかなかの上位に君臨した俺は何となく浮かれ気分だ。

他の三人も結果を見て各々の感想を述べている。

にーちゃんはちょっと泣きそうだった。


「興味深い結果になった。協力ありがとう、ドラコ」


エレンがドラコにそうお礼を言うと、利き水(?)を楽しんでいたようにも見えたドラコも短いしっぽを振っていたので嬉しかったんだと思う。

にーちゃんは一番最後が悔しかったのか、エレンに頼んであのキラキラの葉っぱの薬草を数枚わけてもらうと、水の魔石で出した水にひたすらそのキラキラの薬草の魔力を移した水を何本か作っていた。


ちなみに、今回一番ドラコの食いつきが良かった水は、俺の出した水ににーちゃんがキラキラの魔力を移した『闇騎士(ダークナイト)特製、キラキラハヤテ水(命名ロバート)』だった。


「……ロバートの命名センス、やばいな……」


そう俺の横で呟いたエレンの言葉は、ロバートには内緒にしておこうと俺の心にひっそりとしまった。


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