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異世界行ったら……  作者: 片馳 琉花
第2章 王立騎士団 編
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57.お願い

「ワタリビト……え、シノブが?」


ぽかん、と口を開けケイレブは僕を指さす。


「ワタリビトって……?え、じゃあコンフィ二出身とかではなかったってこと?」

「コンフィ二?」


あれ、なんか聞いたことある……

あ!前にケインさんにそこ出身かって聞かれたんだ!


「違うよー」

「なんだ……じゃあ迫害にあったとか拉致されてきて守護の森に放置されたりした訳じゃないんだな?」


ベッドから立ち上がり僕の肩をガシッと掴むと、ケイレブはそう僕に確認をした。

僕は慌てて首を横に振る。


「迫害?!されてないされてない!僕は元いた世界でトラック……えーと、丈夫なでっかい馬車みたいのに突っ込まれて、気づいたらあの湖に落ちてただけ!」


拉致、と言われれば自分の意図しないところでこの世界に連れてこられているので近からず遠からずだけど……

迫害とかは全くない!むしろこの世界で会った人達はみんな僕に親切だった。

全力で迫害されていないことをアピールしていたら、ケイレブは力が抜けたように再びベッドに座り込んだ。


「そういう事か……よかった……」

「よかった?」


何故か安堵の表情を浮かべるケイレブに僕はオウム返しで返事をする。


「俺とバリー副団長、シノブは迫害されてコンフィ二から拉致られてあの瘴気の湖に放り込まれたと思ってたんだ……あ、コンフィ二って魔力のない人が集まる村な。魔力がないと、まぁつまり差別されたり迫害されたりすることがあるんだよ……でもそっか、シノブ、迫害とかされてたわけじゃないんだな、よかった」


僕がワタリビト、ということよりも、迫害を受けていたわけではないという事実の方がケイレブにとって大きかったみたいで、ひたすら「よかった」を繰り返す。

こんなに心配かけてたのか……もしかして僕がここに来た頃、人と接するのが苦手だったことで勘違いさせてたのかな?

こんなに心配かけてたのならもっと早く打ち明けておけばよかった。


「ケイレブ、今まで黙っててごめん」


僕がそう頭を下げると、ケイレブは明るく言った。


「いや、いいよ。ワタリビトってなかなか言い出しづらいのはわかるし。それよりワタリビトって言葉、誰かから聞いたのか?」

「うん、ケインさんから。ケインさんには何故か僕がワタリビトって何となくわかったみたいで……」

「あぁ、ケインか。確か昔知り合いにワタリビトがいたって聞いたことがある。それでか。……ちなみに他に誰が知ってるんだ?」

「あとは今はエレン。でも、テセウスさん達にも近いうちに話そうかと思って……」

「そうだな、その方が色々融通聞くこともあるだろうし、あの人たちなら話しても信用できると思うぞ。つーかエレンも知ってたんだな」


ケイレブは少し驚いた顔をしている。


「エレンは、僕とケインさんが話していたところをたまたま聞いていたみたい。でも他の人に話したりしないで黙っててくれたんだ」

「まぁペラペラ話すやつじゃないしな。そうか、だからシノブと黒の大陸に一緒に行きたがってたんだな。シノブ、次の魔力の揺らぎが発生したら元の世界に帰るんだろ?」

「うん、そのつもり。その為に黒の大陸の宝珠の異変、直さなくちゃ」

「なら少しでもシノブと一緒にいたいってなるよな。エレンも黒の大陸に行く方法があればいいんだけどな」

「え?」


あ、もしかしてさっきバタバタしててケイレブにはまだ伝えてなかったかも……


「ケイレブ、あのさ、エレンも黒の大陸に行くことになったんだ」

「は?!」

「エレンも闇の魔力、使えたんだよ」

「マジかよ!」


驚くケイレブに、僕は本題を話すことにした。


「んで、ケイレブにお願いがあるんだけど……」

「お願い?」

「本当は僕が自分でもう一度行きたかったんだけど、黒の大陸に行くのに時間がなさそうだから……あの……僕が守護の森にケイレブの後を追って行った話に繋がるんだけど」

「あ、そうだ!それ聞きたかったんだよ」


ケイレブは、床に座ったままの僕を見て椅子に座るよう言うと、自分も予備の椅子を持ってきて僕の横に座る。


「僕がケイレブの後を追ったのは、一人で守護の森に行きたかったからなんだ」

「守護の森に?」

「前に守護の森に行ったことあったでしょ?その時、あの森で僕と同じワタリビトの荷物を見つけたんだ」

「え?シノブ以外の?」

「うん。それで今もあの近くにいるんじゃないかと思って。もしいるなら、黒の大陸の問題を解決したあと一緒に元の世界に戻れることを伝えたくて」


ケイレブは僕の話を聞き、腕を組んで頷いている。


「なるほどな、確かに元の世界に戻るならその時しかねぇわ。つーことはアレか?お願いって俺にそのワタリビトを探して欲しいってことか?」

「いや違くて……あのワタリビトはもう見つけた、から、その人を王都に連れてきて欲しいなって……」

「見つけた?!」


身を乗り出し驚くケイレブに、僕はお願いを伝える。


「うん。緑珠守護団にいる疾風(はやて)。彼をここに連れてきて欲しい」

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