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異世界行ったら……  作者: 片馳 琉花
第2章 王立騎士団 編
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53.合流

疾風(はやて)の元を去り、急いでマシロの元へ走る。

普段ならそろそろ倒れてる頃なんだけど何故か今はまだどうにか動けている。


(これってもしかして……)


──あぁ。鎧の効果だな。今は主が体内に取り込んだ緑珠の欠片の魔素を鎧に溜め込んだ魔力で無効化している。ただもうすぐその魔力もなくなりそうだから一度どこかで魔物から魔力を取ってこい。


やっぱり闇の鎧のおかげだったのか。てことはこれを着て、魔力がある限りは僕は倒れないってことかー!まぁ、魔力が必要なのがネックだけど……


キョロキョロと僕が近寄っても安全そうな魔物を探す。すると少し先の開けたところで何かが動いた。そっと様子を伺うと、炎がトサカのように頭から生えている熊を見つけた。


──火炎熊(イグニスウルスス)だな。この辺ではあまり見かけないはずだが……


(ねぇ、アレは無理だよ!もっと小さい魔物探そうよ……)


──いや、そろそろ魔力が尽きそうだ。他を探す時間もない。幸い一頭しか見当たらないからおそらく群れと離れたんだろう。なぁに、先程森の狼(シルワルプス)に遅れを取らなかったんだ。それに……あぁ、大丈夫。


何が大丈夫なのかわからないけど、確かに頭が少しクラクラしてきた。このままではこの場で倒れるのも時間の問題だし行くしかないか、と腰をあげる。

右手に魔力を集中し、森の狼(シルワルプス)を倒した時の長剣(ロングソード)を作り上げると背後から火炎熊(イグニスウルスス)に斬りかかった。


ザンッ!


僕の振るった剣は火炎熊(イグニスウルスス)の横を掠め地面に刺さる。


(あれ?避けられた?!)


気づかれたことに動揺し、反応が一瞬遅れてしまった。その隙に気づいた火炎熊(イグニスウルスス)が咆哮をあげ、僕に炎を放とうとした瞬間上からバケツをひっくりかえしたような水が降り注ぐ。


「今だ!やれ!」


その声に応えるように、水を浴びトサカの炎が消え炎の咆哮が出来なくなった火炎熊(イグニスウルスス)に切りかかる。今度は上手く攻撃が入り、そこから鎧の魔石が魔力を吸い出していた。


「助かったぁ……」

「全く、戦闘中に気を抜くな」


僕を助けてくれた人が木の影から姿を現す。


「エレン?!どうしてここに……」


声の主は王都にいるはずのエレンだった。


「ケイレブから、『しばらく王都を離れるからシノブをよろしく』と言われていたんで昨日の朝シノブの部屋に行ったんだが部屋は空っぽ、ベッドの下の闇の鎧もない。厩舎に行ってみればマシロもいない。これはもうケイレブの後を追っていったんだなと思うだろう」

「う……バレてる……」


正確にはケイレブを追ったんじゃなくて守護の森の周辺にいる疾風(はやて)を探しに行きたかったんだけど……まぁそこは言わなくてもいいか……?疾風(はやて)の説明もしないといけないし。なんてことを思っていたらエレンがとんでもないことを言い出した。


「……そんなにケイレブと離れたくなかったのか?」

「は?」

「ケイレブから離れるのが寂しくて思わずあとを追ったんだろう?」

「ちょ、待って!すんごい誤解してる?!」


このまま放っておいたらどんどん変な誤解をしそうだったので、エレンには疾風(はやて)の話をすることにした。


「シノブと同じワタリビト?」

「そう。さっき緑珠にいるのを確認してきた」

「そうか。んで、話はできたのか?」

「それが……」


そこまで話して、僕はマシロのところに行く途中だったことを思い出した。


「あ!エレンごめん、とりあえずマシロのところに戻っていい?」

「あぁ。それならさっき街道が倒木で塞がれているところがあっただろう。そこで待ち合わせよう」

「わかった」


エレンとわかれ、マシロの元へ急ぐと当のマシロは泉のほとりでのんびりと日向ぼっこをしていた。


「マシロお待たせー!エレンが来たからそっちに行くよー」


とりあえずマシロにかけていた荷物から薬を取り出すと一気に飲み干した。頭痛も収まったところでマシロを連れ、街道の倒木のところでエレンと再度合流する。


「シノブ、おかえり」

「ただいま」

「話を戻すが、そのワタリビトと話は出来たのか?」

「それが、さっきウッカリ緑珠の欠片に触っちゃって……」

「大丈夫なのか?!」


バッ、とエレンが僕の手を掴む。


「あ、大丈夫大丈夫!もう薬飲んだから!ただその薬をマシロのところに置いてっちゃったから慌てて戻ってきたんだ」

「また薬を持ち歩いてなかったのか?!」

「あ、やば!」


エレンの綺麗な顔が般若のように変わっていく。

うわー、綺麗な顔が怒るとめっちゃ怖いんだよー……


「ごめん、ごめんなさい!」


──鎧の収納空間にでも予備の薬を入れておけばよかろう。


「あ、そっか!鎧にしまっておけばいいのか!」

「ほら、これしまっとけ」


エレンはそう言うとカバンから回復薬を取り出し、胸の魔石の近くへ差し出した。


シュンっ。


上手く収納出来たようで、エレンの手元から回復薬が消える。


「これでひとまずは安心だな」

「エレンありがとう。ところで、さっき火炎熊(イグニスウルスス)に襲われてる時よくあそこにいるってわかったね。街道から少し外れてたろ?」

「あぁ、あれか。シノブの後を追って私も出てきたものの、この倒木のところでどうするか迷っててな。シノブどこに行ったんだって思ってたら何となくこっちにいる気がして」

「何となくで場所見つけたのすごくない?!」


──何となくでは無い。シノブを助けるよう呼んだのが伝わったんだろう。


(伝わった?何に?)


──()()()()


その石、と言うのがエレンの首元の魔石のような気がしてそこを見つめる。

エレンも僕の視線で気づいたのか、首元のネックレスを引っ張り出した。


「この石のおかげだったのか。助かったよ、闇の鎧」


──なに、礼には及ばん。主も危なかったしな。


「たしかに。あれはギリギリだった」


ん?ん?


「ちょ、ちょっと待って?!え?あれ?!なんかエレンと鎧の魔石、会話が成立してない?!」

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