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異世界行ったら……  作者: 片馳 琉花
第2章 王立騎士団 編
111/226

51.見つけた

今回からシノブの独白に(カッコ)つけてます。

時間を見つけて徐々に他の話も直していきます。

(どうしよう……どうしよう……)


焦る僕の心中を知ってか知らずかマシロはずんずん検問所へ近づいていく。

そして門の前で止まると、チラリと門番を見下ろしていた。

門番がましろの(たてがみ)へ手を伸ばすと、すい、とその手をマシロは避ける。


「チッ、なんだよ。馬まで俺の事バカにしやがって。アイツら追うんだろ、さっさと行けよ!」


バン!と門を開けると、マシロを後ろから追い立てた。マシロは驚く素振りすら見せず、開いた門から外へ飛び出す。


「……はぁ」


門が見えなくなったところで安堵のため息が漏れた。


(……よかった……僕に気づいたわけじゃなかったんだな……)


先程の門番はマシロのことを『ケイレブ達が連れていたけど追いつけず置いていかれた馬』と認識していたみたいだ。

ケイレブたちの後を追っていて助かった……


その後は特に慌てる場面もなく、ランプの町を抜け森への街道へ出ることが出来た。まもなく昼に差しかかる、という時頭に声が響く。


──主よ、森に入ったら魔力を摂取したい。手頃な魔物がいたら近寄ってくれ。


(手頃な魔物?!いや、そんなの僕じゃ区別つかないよ……)


──なに、近くまで来れば鎧の闇の魔力でどうとでもなる。時に主。何か武器は持ってきたのか?


(……え?)


言われて、僕は丸腰のまま王都を飛び出してきたことに気づく。


(嘘だろ?!)


思えばいつも森に行く時はエレンやケイレブ達が魔物を狩ってくれて、その魔力を鎧の魔石が吸い取っていく、という流れだった。

僕自身で鎧の時に武器を振るったことは一度もない。

まさかこんな根本的なことに気づかなかったなんて……


そんな僕の態度で全てを悟ったのか、呆れを含んだ声で鎧の魔石が呟く。


──肝心なところで詰めが甘いな。まぁ、多少魔力を食うが、武器がないことも無い。魔力に関してもその分魔物から魔力を摂取すればいいだけだしな。


(武器がある?)


──ちょうど向こうに鹿(ケルウス)の気配がある。馬を降りてそちらへ向かえ。


鎧の魔石の指示に従い、マシロから降りるとその方向へ気配を消し近寄る。

するとそこには木々の合間に湧き出た水を飲んでいる鹿の魔物、鹿(ケルウス)の姿があった。

じりじりと近寄り、手を伸ばせば届きそうなところで鎧の魔石からまた指示が飛ぶ。


──右手に魔力を集中させろ。剣でもなんでもいい。手に武器のイメージを持て。


(武器のイメージ?うーん……)


イメージをしろと言われると、余計なことが頭に浮かんで集中できない。

何となく気もそぞろに周囲を見渡していて、ふと木にまとわりついた蔓性の植物の実がスイカに見えて、思わずスイカ割りのイメージを持ってしまった。


ニュル……


その時、右手に集中していた魔力が形を持ち始め気づいたら長い棒状のものを握りしめていた。


(これって……)


──なんだ、長剣(ロングソード)などをイメージするかと思ってらただの棒っきれとは……


うん。これは紛れもなくスイカ割りに使う棒だね。


──まぁいい。剣で傷でもつけてくれれば早く魔力を吸えるんだがその棒でも構わん。鹿(ケルウス)の身体、どこでもいいからそれで触れろ。


言われるがまま、水飲みに夢中になっている鹿(ケルウス)の脇腹の辺りにそっとその棒で触れてみる。


ピクっ、と触ったところで鹿(ケルウス)は反応したけど周りに気配を感じないと再び水を舐め始める。


おお、僕の気配、野生生物にも気づかれないのか……


思わぬ所で感動していると、徐々に鹿(ケルウス)の足の力が抜けていき、その場に足を折ってしゃがみこんでしまった。そのままパタリと倒れる。


(え?!死んだ?!)


──いや、限界まで弱らせて身動きを取れなくさせただけだ。肉が必要であればこの棒っきれを剣でもナイフでも形状を変えればとどめを刺すことは出来るが……?


鎧の魔石がそう提案してくれるけど、あいにく僕は動物を捌くことが出来ないし、捌けたとしても持ち帰る手段がないから鹿(ケルウス)はそのままにすることにした。


──まぁ他の魔物に見つからなければ魔力が自然回復したら起きられるだろう。


よかった、無駄な殺生はしたくないもんな。人を襲ってるとかだったら別だけど。


──この調子で魔力を集めろ。その武器生成も回数をこなせば精度が上がるし、魔力も蓄積できる。一石二鳥だな。


黒の大陸に行くのに魔力は必要だし、魔力から武器が作れるなら尚更練習は大事だ。

鎧の魔石の提案通り、僕は定期的にマシロを降りては近場の魔物の魔力を鎧の魔石へ与え続けた。

夜は、ケイレブたちのいる休息所の近くで見つけた別の小さな小屋で夜を明かした。

次の日の朝、日の出とともに小屋を出て守護の森へと足を踏み入れる。

辺りにケイレブ達の姿は見えなかったけど、この森も街道が走ってるみたいだしこのまま道沿いに行けば疾風(はやて)がいる場所に出るかもしれない。

確かこの森の先には村と、緑珠守護団の駐屯地があるって聞いたことがある。

ケイレブ達はその緑珠守護団の駐屯地に今行ってるみたいだけど疾風(はやて)もそこにいるのかな?それとも村の方かな?

てか守護の森を出たあと、緑珠守護団の駐屯地ってどう行くんだろう?地図持ってくればよかったなぁ……

でも地図ください、なんて言ってる暇なかったしなぁ……


守護の森を出たあとのことを考えながら街道を進んでいると、


──主。


少し緊張感のある声で鎧の魔石に呼び止められる。


(なんかあった?)


──森の狼(シルワルプス)の気配がする。それも複数だ。厄介なことに人の気配もする。


(それって魔物に人が襲われてるってこと?!)


──おそらく。


(なら、助けなきゃ!どっち?!)


鎧の魔石に方向を教えてもらい、そちらへ向かう。途中から木の間隔が狭まりマシロが走れなくなったため、安全そうな泉のほとりでマシロを放す。


「すぐ戻るから、マシロここで待ってて。でも危なくなったらすぐ逃げるんだよ?」


ヒヒン。


マシロの返事を聞き、(たてがみ)をひとなですると僕は森の狼(シルワルプス)の群れのいるという方へまた走り出す。


闇の鎧の力のおかげか、身体がものすごく軽いので木々の間をするすると駆け抜けていくと、視界の先の方に狼の姿をした魔物の群れを見つけた。その目線の先には頭を庇うように蹲る人影が。


(助けなきゃ!)


そう強く思い、無我夢中で右手に魔力を集中させるとその形状を確かめないまま森の狼(シルワルプス)達に振りかざす。


ザシュッ!


今回の魔力の形状は長剣(ロングソード)だったようで、切っ先が触れた森の狼(シルワルプス)達は切り口から鎧の魔石に魔力を吸われ、みるみる動きが鈍っていく。


(ふぅ……間に合った……)


人心地つき蹲っていた人を振り返ってみると、そこに居たのは懐かしい顔。


疾風(はやて)だった。


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