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異世界行ったら……  作者: 片馳 琉花
第2章 王立騎士団 編
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50.チャンス到来と、ピンチ

「ふーん、誤解、ねぇ」


ニヤリと意地悪な笑みを浮かべ、ケイレブは僕の部屋の備え付けの椅子に腰を下ろした。


多分これ誤解とわかっててからかってるな?


「だから、さっきからそう言ってるでしょ!……それよりも何か用があったんじゃないの?」


そう僕が尋ねると、「あ、そうだった」とケイレブの話を逸らすことに成功した。


「急なんだけど、俺、明日から王都(ここ)離れることになったわ」

「え?離れる?」


本当に急な話題に僕も驚く。


「そー。なんか緑珠のほうで守護の森に最近異変多いらしくてさ。ちょっと様子見てくることになった」

「異変?」

「森の様子がおかしいんだと。魔物たちも普段のナワバリと違うところにいたり、なんて言うか落ち着かないらしい」

「え、なんかあったのかな?」

「なー?森の主(スフェーン)って言う守護の森のヌシみたいのがいるんだけどソイツも変な動きしてるって聞くし、心配だから自分の目で確かめてこようかと思ってさ」


ケイレブが王都(ここ)を離れる……

僕がここに来てからずっと一緒だったからなんか変な感じだな。


黙り込んだ僕を見てケイレブは、またさっきのニヤニヤした笑顔で僕の顔を覗き込んだ。


「そんな寂しがるなよー、すぐ戻ってくるからさー」

「別に寂しがってはいない!」


反論する僕のおでこをピシリとデコピンすると、ケイレブは立ち上がった。


「ま、そういうわけだからシノブ、しばらく大人しくしてろよ。俺が戻るまで出歩くな、と言いたいけど流石にそれは可哀想だから研究棟行くくらいはいいけどさ。その代わり、ちゃんと薬は持ち歩けよ」

「わかった」

「じゃ、俺準備あるから部屋戻るわ」


ぱたん、とケイレブは僕の部屋を後にする。


……ケイレブがいない?

もしかしてこれはチャンスかも。


以前行った守護の森で、疾風(はやて)の荷物を見つけてからずっと一人で出かける隙を探していた。

ただやっぱりここではケイレブかエレンが僕に付いていて中々一人になれる機会がなかった。

もしケイレブがここを離れるなら今がチャンスかもしれない。

幸い闇の鎧も手元にあるし、多少なら馬にも乗れるようになった。

明日ケイレブが王都(ここ)を出たら、コッソリ後をつけていこう!


翌朝、陽がまだ登る前にコンコンと僕の部屋がノックされた。


「シノブ、起きてるか?」


ガチャ、と開いたドアの隙間からケイレブが顔を出す。

僕は布団の中から頭だけを出し返事をした。


「ケイレブおはよう……もう出かけるの?」

「おう。とりあえずシノブに声だけかけていこうと思ってな。あ、起きなくていいよ、まだ寝てろ。んじゃ、行ってくるわ」

「ん。行ってらっしゃい」


布団から手だけを出しフリフリと振ると、それを見てケイレブも手を振り返し、ドアを閉めた。


よし!


少し間を開けて布団から抜け出す。

身体には腕のガントレットと兜以外闇の鎧を既に身につけていた。

遠ざかる足音を聞きながら素早く兜とガントレットを装着すると、そっと気配を消してドアを開ける。

薄暗い廊下にはまだ誰も出歩いていない。


僕は部屋を抜け出すと厩舎へ向かった。


ケイレブは緑珠のメンバーだと言うニコラスとハッサンと共に既にここを出発したようだ。

厩舎を覗くと、僕が乗馬の時にいつも相手をしてくれていた白い毛並みの馬と目が合う。


「マシロ、おはよう」


気配を消して近づいてもその白馬には僕だと言うことがわかるらしく、伸ばした手にそっと鼻を擦り付けた。


マシロ、と名付けたその馬はとても賢く、乗馬初心者の僕でも扱えるからとケイレブが引き合わせてくれた。

「真っ白い馬だねー」と僕が呟いたため、「コイツまだ名前ないんだよ。んじゃ名前マシロな」って言うテキトーな感じで名付けられてしまい申し訳なかったけど、一緒に過ごすうちにその名前がとてもしっくり来てるなと思っている。


「ねぇマシロ。朝早くからゴメンなんだけど、僕を乗せてもらってもいいかな」


ヒヒン、と小さく鳴くとマシロは立ち上がり僕の横へ来てくれた。


「ありがとう」


ケイレブとの特訓で鞍をつけるのを散々やらされていたからか、かなり手早く鞍をつけることができた。

そのままヒョイとマシロに跨る。


「守護の森まで行きたいんだ。お願いできるかな?」


そうお願いすると、「任せろ」とでも言っているかのように一度後ろ足で立ち上がり勢いをつけるとそのままマシロは走り出した。


しばらく走ると、視界の先の方でケイレブ達の姿を捉える。


「マシロ、少し速度を落として。ケイレブ達に追いつかないように」


その言葉を理解するように、マシロは少し距離をとって走ってくれる。

ほんとに賢いなぁ……


そのまま少し距離を置いてケイレブたちの後をつけていくと、検問所へたどり着いた。ケイレブ達はいつものように検問所の水晶玉へ魔石の登録を済ませ直ぐに検問を抜けていく。

そっと近づくと、今日の検問の担当はケインさんではなく、前にエレンに舌打ちをしていたあの人だった。


……どうしよう、ケインさん以外の時に魔石登録して通るのは嫌だな……闇騎士(ダークナイト)の正体バレちゃうし……


僕の持ってる魔石も臨時の通行手形も名前の表記が『シノブ』になっている。

闇騎士(ダークナイト)の鎧を着てて名前がシノブだと正体バレちゃうんじゃ……


そんなソワソワしながらもマシロはそっと検問へと足を進めていく。

そしてあの時ケインさんにジョン、と呼ばれていた人が顔を上げた。


「なんだお前、さっきのケイレブ達に置いていかれたのか?」


ヤバい、どうしよう……

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