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異世界行ったら……  作者: 片馳 琉花
第2章 王立騎士団 編
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46.お披露目、からの衝撃。

「静粛に」


風の魔法を応用しているらしく、静かに話し出したテセウスさんの声は広間全体に響き渡る。


「皆の者、日頃の国の為の尽力感謝する。これだけの人数が集まることは滅多にないだろう。やはり壮観だな」


テセウスさんはぐるり、と広間を見渡した。

何かのスポーツの試合でも出来そうな広さの広間を、騎士団員たちが埋めつくす。

その団員たちは宰相であるテセウスさんがわざわざこうして騎士団員たちを集め、一堂に会する機会を作ったことに何かしら感じとっているらしく、みんな固唾を飲んでテセウスさんを見つめていた。


「忙しい皆の時間を長くもらうつもりは無い。結論を言おう」


ここでひと呼吸おき、テセウスさんはハッキリと言い切った。


「闇の鎧の適合者が現れた」


今まで静かに聞いていた団員たちの間にどよめきの波が起こる。


(シノブ)


風の魔力を通さない、僕にしか聞こえない声で名前を呼ぶと、繋いでいた手を引っ張られた。


これは覚悟を決めるしか……


テセウスさんの手を離し、僕は一歩前に出る。

すると、先程までざわついていた広間が一気に静寂に包まれた。


「このとおり。適合者が現れたことによって黒の大陸に上陸することができるようになった。次はこの適合者、一部では闇騎士(ダークナイト)と呼ばれていたか?彼と共に黒の大陸に向かう同行者を募るつもりだ。詳細等はこれからまた決めていくが、騎士団の皆にはまたそちらも協力して頂きたい」


シン、と静まり返っていた広間に再び歓声が巻き起こる。


「皆の者、頼んだぞ」


そう言うとテセウスさんは身を翻し広間を去る。僕は慌てて後を追った。

人員規制がされていたのか、テセウスさんの部屋まで誰にも会わずに戻ることが出来た。

部屋に戻るとテセウスさんは先程までのキリッとした表情からいつものゆるい顔に戻りソファに倒れ込む。


「あぁー、緊張した……人前に出てしゃべるのは苦手なんだ……」


苦手さを微塵も感じさせない堂々とした態度だったので僕は驚いた。


「え、あんなに慣れてそうだったのに?」

「まぁ人前に出ることは仕事柄よくあるからね。慣れているけど、それでもやっぱり苦手なんだよ……」

「まぁ僕も人と話すのは慣れてないからその気持ちわからなくもないですけど……」


部屋の中にテセウスさん以外の人がおらず、とりあえず入口の前で立っていると、


「私がこんなにだらけてるんだからそんなにかしこまらないで」


と、テセウスさんの向かいのソファに座るよう勧められる。勧められるままソファに座ると、何となく偉い人と二人きりで顔を隠しておくのもなぁ、と兜だけ外して机の上に置いた。


「ぷは」


その顔をテセウスさんが凝視していた。


「ウワサには聞いていたけど、ホントに別人だねぇ」

「え?ウワサ?!」


髪を切ったあとテセウスさんと会う機会がなかったので、髪を切った姿で話すのはこれが初めてなんだけど……ウワサって何?!


「シノブくん、ここのところ連日ケイレブと乗馬してたろう?」

「え、まぁ」

「あそこの厩舎って意外と王宮や、そこに出入りする人からよく見えるところにあってね。最近よく耳にしてたんだ。『厩舎に白馬に乗った黒髪の貴公子がいる』って」

()()()()()()()()()


なんのことかわからずテセウスさんの言葉をオウム返しに返す。


「城のメイドたちもざわついててね。そのうち求婚話も持ち上がるんじゃないかな?」

「球根?」


まだ理解が追いついていない僕に、テセウスさんが噛み砕いて説明してくれた。


「シノブくんに、結婚してくれって色んなところのお嬢さんから話が行くということだよ」

「え?!僕?!」


やっと意味がわかり、さらにわからなくなる。

え?結婚?僕が?

なにこのモテ期。


「私としてはシノブくんに好きにして欲しいんだけどね。ただ、そうなるとシノブくんの身辺を探る人達が出てくると思う。そうなると闇騎士(ダークナイト)の件がどこから漏れるかわからないし、もし万が一バレたりなんかしたら政治的にも色々絡んでややこしい事になりそうで……そこで提案なんだが、シノブくん、もし問題なければ形だけでもうちの娘の婚約者にならないか?」

「テセウスさんの、娘さん?」

「もちろん、シノブくんさえ良ければ本当に結婚してくれても構わないよ。私と薬草の話をして楽しそうにしてくれる君なら私も大歓迎だしね」


バチン、とウインク付きでいきなりそんな話をされても……

言われていることに理解が追いつかず、ひたすらテセウスさんの言葉の意味を頭の中で反復する。


え、テセウスさんの娘と婚約?でも確か27歳って言ってたよな?てことは子供もまだ小学生くらいでしょ?いやいやむりむり。


「お言葉はありがたいんですけど……そんな歳下はちょっと……」

「そうかぁ。うちの子もたまに楽しそうにシノブくんの事話してるからちょうどいいかと思ったんだけどなぁ。まぁ、もし万が一そんな話が出て困った時には『宰相の娘と婚約してるので』って私の名前を出して断ってくれていいからね。それを言ってもしつこくされるなら……ちょっと考えるから」


いつものにっこり顔なんだけど、何か黒いオーラを纏ったテセウスさんに圧倒され、僕は頷くしかなかった。


てか、僕の知らないところでそんなことになってるの?!

そんな目立ち方したくないんだけど……

明日から馬の練習研究棟のほうでやらせてもらおうかな……



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