序論
ファンタジー世界の魔法とミステリーを組み合わせた探偵モノです。
こんな雰囲気も良いのではと書いてみました。
楽しんでいただけたら幸いです。
ここは人とエルフ(妖精)、ドワーフ(亜人)たち人類族と、数多いる動物、そして異形の者たちの暮らす世界。
そしてこの世界には不思議な力が存在していた。その力はそこに在る物、生き物はもちろん、植物や鉱物全ての物に宿っていた。
木々は豊かに育ち、その実は大いに膨らみ、そして生き物たちはそのおかげで豊かに暮らしていた。
それぞれの種族は栄え、子を産み、次第にその数を増やしていくと小さな集落がいくつも出来た。
豊かな自然はその恩恵を全ての種族にあたえ、小さな集落は村になり文化、文明が発展していった。
しかし平和な時は、それぞれの種族が増えるにしたがって争いの時代へと移り変わっていく。
時は流れ……
この世界にあるグレータス大陸で暮らす者たちはその力を使った魔法、そして剣術や武術で、部族どうしの争いに明け暮れた時代を過ごしていた。
しかし長く続いた動乱の世の中で、異形の者たちの中に大いなる魔法の力を宿した者たちが現れるのだった。そして異形の者たちは、力を宿した者を中心に魔族と呼ばれる様になっていった。
彼らは自然と共に生き、人類族とは違う文化を形成してゆく。
魔族たちは屈強な身体と魔力で、自然が豊かで険しい山々が連なる大陸北部にその生活圏を広げていく。そして大いなる力を宿した者を王に定めると、次第に魔族間での争いは少なくなっていくのだった。
一方、なだらかな平地の多い大陸南部に暮らす人類族は相変わらず争いを繰り返す日々を送っていた。
そんな中で、力を持った部族は弱い者たちを併合して国になり、やがて大陸にいくつもの国家を形成していった。
国家を形成した人類族は、やがてその数を大きく増やしていく。
しかし、増えた人口を維持していく為に他国から資源や食糧そして富を奪い合い、魔族たちとは違い相変わらず争いを繰り返すのだった。
やがて、力を持った国の一つが魔族たちの暮らす北部に目を付けると、人類族は魔族たちの暮らす土地へと侵攻する様になっていった。
豊かな自然と共に暮らす魔族たちは、肥沃な大地と自然を食い荒らす人類族を黙って見過ごす事はなかった。
始めは局地的に散発した争いは、やがて人類族と魔族との構図に変わっていき、両者は互いに相入れる事のない存在となっていく。
そして、人類族と魔族は長い争いの時代を迎える事となっていった。
彼らは、小規模の争いを繰り返したが、強大な魔力を持つ魔族の王とその眷属の力は人類族の侵攻を許さず、彼らの暮らす土地を守り抜くのだった。
その結果、強大な魔族の力は人類族を団結させ、いつしか北部の魔族を討伐する事が人類族の目的となっていくのであった。
王暦425年、大陸で最大勢力を誇るグレータス王国を中心にした人類族国家の中で、魔族とその王の討伐を目的とした騎士団が編成される。
翌年、王国と騎士団はその討伐作戦を実行に移す。
しかし、人類族は魔族とその王の圧倒的な力に敗戦を繰り返していった。
そんな中、各国から選りすぐりの魔術師、武芸者が招集され、人類族の英雄を集めた部隊が編成される。そして彼らを筆頭に騎士団は徐々に勝利を納める様になっていくのだった。
王暦444年、この年各国の選りすぐりの英雄の中に人類族最強の名を冠する者が現れる。
ある者は最強の武芸者、そしてある者は至高の賢者として歴代の英雄たちを大幅にしのぐ力を宿していたのだ。
そしてその年、人類族最高にして最強の七大英雄の部隊が誕生した。
それは人類族と魔族との数年にわたる大戦の始まりを告げるものとなる……。
数年にわたる大戦の後、人類族と魔族の間にはある協定が結ばれる。
それは北と南に分断されていた種族の垣根を無くし、共に暮らしていくという内容であった。
長く激しい戦いで疲弊した双方は、共存の道を選んだのだ。
繰り返す争いを歴史に編み込む様に重ねてきた彼らは、この時はじめて手を取り、お互いの命を紡ぐ事を決める。
しかし、悠久の刻を敵対してきた彼らが相利共生の道を歩む事は容易ではなく、変わりゆく世界について行けない者、異種族に対する偏見や憎悪を拭い去れない者も存在した。
変革を遂げた世界は、それらの者たちも内包し、それでも時を刻んでいく。
そして現在、一部の魔族を除き、グレータス大陸では人類族と魔族が共に暮らす時代を迎えていた。
彼らは文明を発展させ、かつてあった強大な魔法や魔力はその姿を消しつつあり、全ての者が平和を享受できる時代になっていく事を願いそこで暮らすのであった。
王暦640年、かつての大戦の傷跡もすでに無くなりつつあるグレータス大陸のある村では、元魔族たちが暮らしていた。
大陸北部にあるキュベル山脈に連なる山麓にその村はあった。
その村の住人たちは、人類族の暮らす街で数年出稼ぎをしては故郷に戻り、豊かな自然と共に暮らす日々を過ごしていた。
ある日、その村に人類族の男がやって来た。その男の名はジャクリーヌ・レイモンドといった。
彼は歴史の研究者でグレータス大陸の様々な場所を訪れては文化や文明を調べているのだと言い、今は大戦の真実を調べているのだと語った。
この村に住むゴブリン族の少年ナブーは、その旺盛な好奇心から、初めて見る人類族に大いに興味を持つ。
ナブーは、暇があればジャクリーヌの下を訪れては人類族の事、そして彼の研究している歴史の話しを聞くのだった。
そしてナブーは次第に人類族の文化や文明に強い関心を持つ様になっていく。
王暦643年、満13歳になったナブーはゴブリン族の成人の儀を迎え、他の大人たちと同様に人類族が大半を占める街へと出稼ぎへと行くのだった。
そして彼は街での出稼ぎの最中、ジャクリーヌとの運命の再会を果たすのであった。
閲覧ありがとうございました。
この序論は世界観の説明です。次からが本編となりますので是非是非ご覧くださいませ。