ダンジョンへ
明日から騎士として働くミスト。今日は身体を動かすためにダンジョンにやってきていた。ミストはとりあえず推定Aランクのダンジョンに入ることにした。ダンジョンのランクは深度によって変わる。最深部が何階かでそのダンジョンのランクが決まり、100〜120階層であればAランクである。
なぜ推定かと言うと、誰も最深部までは到達しておらず、現時点までのモンスターの強さと量、階層の広さ、ダンジョン環境などから推測されているからだ。
ミストはダンジョンへと入っていく、人目のつかぬ所に来たミストは
「【転移】」
一瞬で消えた。
次にミストが姿を見せたのは52層だった。
「これが限界かなぁ。ここ何層なんだろ...」
とりあえず探索してみる。転移することはできるが、それなりに強そうな魔物が近くにいるので倒すことにした。
「グランドトロールね。」
1つ目巨人の魔物トロールの上位種で5m程ある。トロールの方もミストに気付き、全力で走ってくる。5mの巨体は綺麗なフォームで急接近してくる。約100mの距離を12歩で埋めてきたグランドトロールが勢いそのままにミストを蹴ろうとする。
ミストが持つのは一振りの愛剣、大上段に構える。グランドトロールのつま先がミストに当たる直前、
「【身体強化】」
ミストは剣を振り切る。グランドトロールはそのままミストを通り抜ける。ただし、ミストの左右に分かれていた。
ギャャァァアォォオオオ!!!!
つま先から綺麗に分かれていき、斬撃は足を通って胸に行き肩から出ていった。ミストを間に挟んで血で作られた道ができる。血を吹きながら断末魔をあげる。次第に体が溶けていき地面に吸収されていった。
「お、ラッキー。」
溶けずに残った魔石と大きな目玉を収納バッグに入れる。こうして残った物、いわゆるドロップアイテムが高額で買い取られる。魔物としてランクが高くなるとドロップ率は高くなるが、会敵率が低くなるのでなんだかんだバランスが取れているな思った。
ちなみにグランドトロールはランクとしてはBにあたるが、快適率はSランクと同じくらいである。Bランクのドロップ率は40〜50%、Sランクの魔物は大規模ダンジョンに10体程、小さいダンジョンにはいないこともあるほど希少である。
「この階層にはもう何も無いな。下の階も何も無いな。もっと下は...」
ミストはずっと地面に視線を送る。しばらくしてミストの姿は一瞬にして消えた。
◇
「まただいぶ降りたな。さてと...やりますか。」
転移したミストのすぐ側には視界に収まらないほど大きなネズミがいた。ダンジョンの1階層分が丸々使われた部屋に全長100m、全高40〜50m程ありそうなネズミは、常に何かを齧っていた。よく見れば、所々に壁があった痕跡がある。
元々ここも他の階層と同じように通路があり、部屋があり、さまざまな魔物が生息していただろう。それを変異なのか新種なのか知らないが、この大ネズミが齧り尽くしたのだろう。今も地面から生まれたばかりの魔物を掴み上げて齧っている。
「大きいだけだな。」
ミストはゆっくり近づいていく。捕食のために下がっている頭に剣を振る。ご飯に夢中で気付かないまま頭を切られ溶けていった。
「うっわー、何これ。」
ドロップアイテムとして残ったのは特大の前歯だった。しかしさっきまで見ていた歯よりもさらに大きくてすぐには気付かなかった。多分皮膚で大部分が隠れていたんだろう。
「持てるかなぁ...って軽っ!」
自分より数倍ある歯を片手で持つことが出来た事に驚きつつもどこにしまうか困ってしまった。もう少し潜ってみたかったが、これはこれで貴重な物だ。仕方なく探索を終了することにした。
「【転移】」
◇
ギルドの個人金庫にドロップアイテムを保管したミストは寄宿舎に帰ってきていた。今回のドロップアイテムは中々手に入るものではないので売らずに持っておくことにした。
「明日からかぁ。」
お風呂に入る準備をしながら、明日からの騎士生活に想いを馳せる。
「さっお風呂お風呂。」
ミストは大浴場に向かった。この寄宿舎には個室にシャワー室が無いため、1階の大浴場まで降りなければならない。
「サンダル買お。」
そう思いながら大浴場に着いた。新人が多いとは言え、王国を守る騎士が使う大浴場は文字通り大きく、シャワーがズラーッと並び、サウナや水風呂もあった。これが入りたい放題だと考えると騎士になった意味があったんだと実感できる。
風呂から上がり1度部屋に戻る。洗濯する魔道具を買ったので部屋の中ですることができる。
だいぶ場所を取られるが...
洗濯が終わるまでに夕飯も終わらせようと思い、今日は寄宿舎の1階にある食堂に行く。どれだけ食べてもタダなのでみんなブクブク太るらしい。
「トンカツ定食キャベツ抜きで。」
「ウチにそんなサービスないよ。」
最初にキャベツを盛らなければ良い話じゃん!
「分かりました食べます。」
「好き嫌いしてたら大きくなれないよ。」
「いや、キャベツに飽きたんです。」
「キャベツはいくら食べても飽きないよ。」