出発前夜
アルデリア王国 首都デーデンハルク 騎士団本部
「我が剣は我が国に!」
今日から王国騎士団に入団する新米騎士の中にミストはいた。各々が胸の内に希望を宿し、目前にいる国王に宣誓し、剣を掲げる。この時からミストの騎士生活が始まった。
◇
アルデリア王国はこの世界で3番目に大きな大国であり、技術大国と呼ばれるほどの先進国である。しかし、その広大な領土の中には、魔物と呼ばれる凶悪な生物を生み出すダンジョンが密集する場所がある。騎士には2つの仕事があり、このダンジョン群の管理と国防である。街の治安を守るのは衛兵の仕事にあたる。
ミストはこれから自分がどちらの職業につくのかを知らされる。希望はダンジョン群の方にした。ダンジョン群は少し前までは非常に危険な場所だったが冒険者が増えたことから魔物が地上に出てくることが無くなったので、のんびりしているだけで給料が貰える。それにダンジョンから獲れる素材は希少な物が多く、高く売れるため、冒険者には金持ちが多い。そのためダンジョン群の周りは街としても発展していて、王都と遜色無い暮らしができる。
「ミスト、君はダンジョン群だ。」
「はい、ありがとうございます。」
上官に言われて、ミストは笑顔でお辞儀した。口が開きっぱなしの上官を残してミストはすぐに出て行った。
「.....では次の、ガールド君.....」
◇
「えーーーっと、何がいるかな?」
ミストはダンジョン群のある街プーレシアに引っ越すために何を持っていくか、家の中で考えていた。
「家具はあっちで買い揃えるから置いていこう。服は...お気に入りだけ持っていけばいいか。それから...」
あっという間に荷作りは終わった。今の家は売り払うわけではないので持っていくのが面倒な物は置いていく。ミストは少しだけ寂しくなった部屋を見渡し、知人に手紙を出すことを決める。
「誰に出そうか...ユークとアルナ、あとはシャル婆にも出しておこうか。」
ユークとアルナは学生時代の親友、シャル婆は冒険者ギルドの幹部で、ミストが14歳から始めた冒険者生活の中で何度もアドバイスをくれた人だ。ミストの人間性はほとんどこの3人によって作られたと言っても過言ではない。
「これでよし、と...」
それなりに時間を費やして手紙を書き終えてポストに投函したら家に戻り、ダラダラと夕飯を作る。学生時代から暇な時はご飯を作ってユークやアルナに感想をもらっていたのでミストはそこそこ料理に自信を持っていた。
「いただきます。」
明日には出発して、なかなか帰ることが出来なくなる。ミストは大好物のビーフシチューを口に運ぶ。プーレシアに行っても多分食べるだろうけど、ここで食べるものとはまた変わってしまうだろうから、味わって食べるのだった。