表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
汚された聖地 ~Life Goes On~  作者: 神波 由那
第1章
2/14

駿の迷い

さて、この女子高生を助けたはいいが、どうすればいいのか。

駿は頭の中を巡らせてみた。


「警察に突き出すことも出来るけどどうするの?」


彼女は首を振った。


「家には帰りたくない…」


だろうな、と駿は思うと同時に、この女子高校生を自分が警察につれていくのも

それはそれで厄介な気がした。

一応だが、駿はプロ野球選手だ。自らが女子高生を連れて警察に保護して貰うのには

些か抵抗があったからだ。


実家には泊められないのは分かっているので、さらに頭を使った。

(それでも大吾には少し協力してもらうか)

駿は考えた。


まだ夜はそれほど更けてない。

決断を下すなら早い方がいい。


「どうして私を助けたりしたの…?」


半ば、そして呆れた口調をわざと使って駿は答えた。


「見殺しにしたら俺のメンタルが傷つくからな。目撃者なんだから」


段々、彼女はバツの悪そうな表情を見せた。


プロ野球球団には、どこでもお抱えのホテルがある。

そこに泊まらせることにするか…

お抱えホテルだし、そこに女を選手が連れ込むことはよくある話だ。

事情はマスコミには漏れないだろう。

まあ、駿は綾に手を出す気はなかったが。


「どこにいくの?」


彼女は訊く。


「いいからついてこいよ」


強引に彼女のてを引っ張りながら、駿は歩き続ける。


まずは大吾を呼びだそう。


弟にLINEを送るために、駿は携帯を取り出した。


「警察にやっぱりいうの?それはやめて」


彼女は困惑した。


「警察には連れていかない。俺が困る」


彼女は先が読めないのかきょとんとし始めた。


しかし見知らぬ男性についていく女も女だ。


死にかけるだけの勇気があるのだから、知らない男性についていくのも

ある意味度胸が座ってるのだろう。


そう駿は考えていると、二人はコンビニの前に到着していた。

大吾との待ち合わせ場所でもある。


「まずここで好きなものを買えよ。代金なら俺が出すから。

 どうせそんなにお金も持ってないんだろ?」


「欲しいものって…」


彼女にはすぐに浮かばないらしい。


「ほら自分の食べれそうなものとか、あとはタオルとかちょっとした着替えとか…」


「…?」


そうこうしてるうちに、大吾がコンビニに到着した。


「兄貴、いったいどういうことなの?死にかけた女子高生を助けたとか?」

と言いながら、大吾は当の彼女を見つめていた。


「制服みると、この辺りの高校生ではないよね」


「家出したらしい。どこの子かは聞いてないよ」


あっけに取られている大吾に対して駿は言葉をつづけた。


「彼女も嫌がっているし、俺の立場から警察にも突き出せない。

 例のロイヤルホテルに連れていこうかと思ってる」

ロイヤルホテルとは、シャークスお抱えのホテルのことだ。

「で、どうしたらいい?」


「今から俺の名前で予約して連れていくから、お前は俺の道具と着替えになりそうなものを

 後からホテルに持ってきてほしい。くれぐれも親父達には、バレないように」


そのやり取りを聞いて、彼女は言う。

「ホテルに連れていかれるの?ヤリたいの?

 いいけど。どうせ死ぬんだったし…」


「だから、手は出さないよ…それだけは誓う」


彼女にも、駿にも先が見えない。二人が出会ってしまった以上。


12月の暮れだったが、俊の希望の部屋の予約はすぐに取れた。


駿はタクシーを拾うと、彼女を先に乗せ、行先を告げた。


「じゃあ、後で持っていくわ」

大吾がそういうと、タクシーは走り出した。


まるで見えない暗闇に向かうように…。


タクシーの中ではほぼ無言だった。ホテルまではすぐだった。

このロイヤルホテルは球団お抱えだけあって、かなりの高級ホテルである。


駿はツインの部屋を、一室だけ予約していた。

わざと2部屋取って別々にしなかったのは、また彼女が逃げ出して

自殺するのを防ぐ意味合いがあったからだ。


ロビーでバッグだけを抱え込んでいる彼女は、大して荷物がない。

「マジで死ぬためにここまで来たのか…」


駿は変な正義感に支配されていた。

何とかこの女子高生を救う方法はないのかと。


それは、まず話してみないと分からない。


やがて部屋に着くと、彼女の荷物は本当に少ないことが分かった。

(着替えもいるけど、女の子のはな…)

ここはとりあえず彼女には内緒で、女友達に頼るしかないかと考えた。


やがて大吾がやってきた。

「兄貴のトレーニングバッグと、着替えは持ってきたよ。

 だけどこの子の着る服はなくない?」


「なんとか考えるから、いいよ」


一番必要なのは、この女子から何らかの言葉を引き出す技術であることは明白だった。


しかし今日はくたびれているだろう。

男物のシャツと短パンを渡して、

「まずシャワーでも浴びてすっきりして、着替えて今日は早く寝な。

 話は明日からでも聞くから」


彼女はどうなってもいいと思っているのか、素直に従った。


「お、俺は着替えみないから」


そう付け加えたものの、彼女に届いてるのかさえ分からない。


彼女はこの高級ホテルのバスルームに、着替えとともに消えていった。


さて、彼女が出てくるが前に、先のことを決めなくてはならない。

駿本人もトレーニングがあるし、しょっちゅう見張れない。

いっそのこと軽い軟禁状態にするしかないのかと考えた。


この子には何があったのだろう…?


一番気になっているのはそこだ。

しかし、聞き出せることはできるのだろうか?

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ