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四話 家族だからでした


夕暮れの時。俺は実家に辿り着く。ドアを開けて中に入る。


「ただいま」


「おかえりなさい」


「おかえり」


父さんと母さんが返事を返してくれる。俺は静かにリビングに向かった。


二人は座って休憩しているようだった。


俺は二人に言う。


「母さん、父さん....話さなきゃ行けない事があるんだ」


「話さなきゃ行けない事?」


「言ってみなさい」


母さんと父さんは俺の顔を見る。


俺も床に正座で座る。


拳を握りしめる。


「母さんと父さんは一年前....俺が謎の空間から帰ってきたその翌日に変な事が怒らなかった?」


「変な事...?....っ!!」


「あれか....突然、地面が崩れ、気づいた時には元通りになっていたあの事か...あれがどうした?」


その出来事で村が騒がしくなったのも知っている。俺はそれを黙って聞いておくしか無かった。まさか、あれは俺がやったとはあの頃は家族にも言えなかった....


恐かったから言えなかった...

拒絶されるのも、恐がられるのも...それが恐くて俺は....言えなかった....


でも今なら言える。もうあの事件から逃げない。自分がやった事を偽り続けて生きていくのももうやめだ。正直に話して皆に拒絶されるのもみんな、受け入れるつもりだ。


「あれは....その....」


でもいざ言おうとするとなかなか、口に出せないでいた...


やはり心のどこかでは思っているのだろう。嫌われるのが恐く、孤独な人生をこれから送っていくと考えると虚しいと。一人は嫌なのだと...


「俺が...やったんだ....」


「「.....」」


「あの日、学園の事で色々妄想してたんだ。友達が出来たらとか色々....そして興奮しちゃって...気づいたら....世界を....破滅させてしまったんだ....」


「「....」」


二人は無言。それもそうだろう。いきなり自分の息子が世界を破滅させたとか、無言になるのも当然。理解できないのも当然だろう。


母さんはそれでも笑顔を見せてくれる。


父さんも優しい表情で俺を見てくれる。


なんで母さんは笑顔でいられるんだろう?なんで父さんはそんなに優しくいられるのだろうか。分からない。


「なあレイト。お前はまだそれを引きづっているのか?」


「......え?」


「俺達はな前々から思ってたよ。あの日からずっと思ってた。気づいてた。お前がやったんじゃないかってな」


「....」


気づいていた....?俺が言う前から...?

でも尚更、なんで俺を今まで優しくしてくれていたのだろうか。この一年間、変わらず接してくれていた。嫌な顔せず、楽しそうな会話をして、一緒に居てくれた。許させ無いことをした俺に。何億人の命を奪ってしまった俺に。


「お前はあの日から笑顔が見せなくなった。何があったのかってのはすぐ分かる。それが親だ。それが家族だ。それにお前はあれから何かに励んでいた。あれは何なのかは俺には分からない。でも分かるんだ。お前はこの世界の為に何か、頑張ってるんじゃないかってな」


父さんの後に母さんが言う。


「レイト。あなたは私達のたった一人の息子よ。息子の気持ちが分からないなんて親失格だわ。それにねレイト。あの日気づいた時にはみんな元に戻ってた。犠牲者なんて出たかしら?」


珍しく母さんが真剣に俺に問うた。


犠牲者が出なかったのは能力«復元»のおかげだ。


〝俺の力じゃない〟。殺してしまった事には変わりない.....


「レイト。村のみんなもみんな元気だ。あの日の出来事はもう気にしてない。起こっちまったもんは仕方ない。でも、それを気にしてるのはお前ぐらいだ。だからレイト。もう忘れちまえ。何も起きなかったんだ。誰も死んでねーんだ。だからよ──楽になれよ」


「っ!?」


俺は父さんに抱きしめられる。優しく頭を撫でられる。母さんも俺を背中から抱きしめ、撫でてくれる。


「昔に言っただろうレイト。俺らはお前が生き生きした姿を見たいんだ。何かを抱えて虚しく生きてる様なお前の姿は見たくない。だからレイト。もう忘れろ。お前には俺達がいるし村の奴らもいる。だから──泣いていいぞ」


「っ....ぁぁぁああああああ!!!!!!!!!」


俺は父さんと母さんの温もりを感じなから今までの思いを涙に流した。世界を破滅させてしまった思いや申し訳ない気持ちも全部。


何故こんなにも二人が俺に優しくしてくれるのか、なんでこんなに暖かい温もりを感じられるのか。

それは──家族だから。




それから、落ち着いた俺は父さんの胸で泣いていたことが恥ずかしく、少し距離をとってしまった。


「お前の能力«復元»だったか?あれで俺達は元に戻ったのか?」


「....うん」


「ありがとうな。〝お前のちから〟で俺たちを生き返らせるなんてすげぇーじゃねーか」


「俺の力...?」


「あ?なんだお前の能力だろう?お前の力じゃねーか。それより腹減ったな。母さん、飯」


「わかりました」


あの日も二人は信じてくれた。能力を手にした事も。能力と心を通じあった事も全部。


──忘れていた。俺は能力と何を誓った?


俺は能力と共に人生を歩んでいくと誓った。

なのに、俺は能力を裏切った。«復元»も俺の力だ。

«復元»を俺の力ではないといつの間にか思っていた。


「ごめん....ごめん...」


俺は能力に謝るように胸に手を当て謝った。それが通じたのか心が暖かく心地よい気がした。


俺はあの空間で、〝俺〟はなんも変わってなんてなかったんだな。



能力は俺の力で俺は能力の使い手。能力«復元»をずっと裏切っていた分、能力〝復元〟とも、もっともっと通じ会いたい。その力も人の為に使っていこう。


なんで忘れていたんだろう。こんな事忘れるなんてどうかしてた。


俺はあの空間からこの世界に帰ってきてからと言うもの、ネガティブな考えになってしまった。それがどうしてなのかは分からない。でも、今は今を生きて、楽しい生活をして、母さんと父さんに心配されないような生活を送っていく。


なぜ力が欲しかったのか。人々を守るため、怪人を倒すため。だから、人々を守れるようなそんな人間になりたかったからだ。


俺は必ず人の為にこの力を使おう。強大な敵が襲ってきてもみんなを守れるようなそんな人間に。


まるで昔見た絵本のヒーローの様に。


ん、んんぅ?ちょっとこういうの難しいなぁ....^^;


ってことで帰宅編も完結!短かったですが、次回からは長くしていきます!今後ともよろしくお願いします!


明日をお楽しみに!

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