三話 加減が出来ました
何故か完結表示になっていました...
まだまだ更新していきますので
よろしくお願いします!!
『死ね!』
俺より大きい怪人はバカ正直に正面から突っ込んでくる。怪人の顔はご馳走を食べる時みたい顔で右ストレート。
両手で俺を掴もうとするが、俺はするりと避ける。
『小癪な、人間!』
「そろそろ俺のターンだ」
俺は今まで何の考えもなしに避けていたわけではない。強く地面を蹴りながら避けても大丈夫か戦闘中に試していた。
だが、強く蹴った場所は少々、穴が出来ている。まだまだなのだが、ちゃんと加減が出来ていることに喜びを感じる。
俺は剣を構える。怪人の攻撃を受け流し、剣で切り付ける!
グサッ!!
怪人は俺の剣で右腕を切られる。
『あ、あ、あ、俺の、、、右....腕が......お前、絶対、殺すぅううう!!!』
怪人は先ほどの顔と違い、物凄い殺気を出しながら睨みつけ、俺に襲いかかる。
しかし、左腕での戦闘は慣れていないのか、先ほどの右ストレートより遅く見える。
俺は剣を納め、右ストレートを怪人にくらわせる!
怪人はそのまま地面に倒れ、死んでいるのが確認できた。
......
...........
................
「よっしゃああああ!!!」
加減がちゃんと出来ている。これまで幾度となく力を加減しても殴っただけでも怪人はバラバラになっていった。
でも、今回久しぶりに怪人と戦うに辺り、少しは成長しているかと実感できるかと思って怪人と戦いに来たのだが、想像以上に成長出来ていた。
もっと時間を掛けて修行していくのかと思ったが、そうでも無かったらしい。(謎の空間に居た頃にした修行と比べている)
でももう少し試して行こう。一回だけじゃまだ確実に出来てるとは言い難い。
俺は次の怪人の気配の所まで向かった。
その場所はフツ村から少し離れた場所の山。その山頂に怪人がいる。俺はここから勢いよくジャンプをする。
地面は少し穴が出来たぐらい。普段こんなに高いジャンプをしないから一応は大丈夫だとは思ったが、あの事件を思い返すとまだ修行はしていた方が良いと思える。まずまだ修行をやめる気はない。完璧に手加減などが出来るようになるまでずっと修行はしていくつもりだ。
俺は山頂まで一気にジャンプし、着地した。怪人は俺の存在に気づいてないのか、寝ている。
俺は物を触る時と同じ加減で怪人の顔を叩いた。
すると怪人はもごもごしながら起き上がる。
『なんだぁ?』
怪人は目をさすりながら辺りを見渡し、俺と目が合うまで数十秒。
『に、人間!?』
そして俺が人間だと気づくのに数十秒。怪人は驚いて居るようで嬉しそうでもあった。
『なんで人間が居る?そうか。俺様の餌になりに来たのか』
.....どうしてそう言う思考になる。
「なわけ。ちょっと試し相手になって欲しくてな」
『試し相手だ?俺様を相手に?ぐはっはっはっはっは!人間如き、俺様の手にかかれば赤子同然。それに俺は今、お腹が空いていた。喜べ人間。俺様の餌になるんだからな!』
怪人は高笑いをしながら俺を掴む。そして怪人は言う。
『お前を食べたら〝あいつ〟にリベンジだ....喜べよ人間』
そう言いながら怪人は大きな口を開け、俺を食べようとした。そしてガブリ。
だが、怪人は不思議に思った。喰った感触が無いことに。
それはそうだろう。怪人が大きな口を開けている時にするりと逃げたのだから。居ないのも当然。
『いつの間に....ちょこまかと....餌は餌らしく喰われろぉ!!』
そう言いながら俺に向かって大きな口を開けた怪人が襲いかかる。
俺は怪人の体勢を崩し、蹴りを一発。怪人は吹き飛ぶ。
だが、怪我をしただけで大してダメージは受けていない。
『面白いな人間.....試し相手だったか?....俺様をナメてると痛い目見るぜぇ!』
バァァン!!
怪人が俺に拳をぶつける。しかしその拳は俺は避けた。だが、地面に拳が当たる。その威力は凄まじく、地面がえぐれる程に強力。
怪人は回し蹴りを繰り広げる。その蹴りが俺に当たる。
ドゴォン!
俺は吹っ飛ばされ、尻をついていた。
「やるな怪人....でも、あくまでこれは俺にとって自分の力を〝試している〟だけだ。そろそろ俺の攻撃も、もっと試してくれよ」
そう言い俺は続く。無数の打撃が怪人に打ち込まれる。
『ぐはぁ!!!』
ドンドンドンドンドンドンドンドンドン!!!
怪人はこれでも倒れない。力加減も充分できている。一先ず力加減を無意識で出来るようになるまで頑張らないと。昔の俺と比べて普通にコップとかお皿を持とうとしても割ったりしてしまう。これを毎日気をつけながら生活している。謎の空間に居た頃は普通にお皿とか持てていたのだが....
『まだまだぁ....!!〝あいつ〟は絶対俺様が倒す!のに!お前如きに苦戦しているなど有り得んのだ!ぐらぁあああ!!』
怪人は本気で殴りにかかってきた。
俺は先程より力を込める。そして拳と拳のぶつかり合い──のはずが、俺の拳で怪人の腕が吹き飛ばされる。
「これで腕は引き飛ばせる力か....もっと励んで上手になろう」
そう言って俺は目の前で腕を抑えながら泣いている怪人を見やる。
『お願いだ!もうしない!殺しはもうしない!人間ももう殺さない!だから、助けてくれ!殺すのだけはやめてくれぇ...!!』
命乞いをする怪人に俺は言う。
「〝殺しはもうしない〟〝人間ももう殺さない〟って事は、今まで人間を殺していたと言うことか?」
『ぐっ...』
「俺が言える事じゃないけど、そんな権利無いけど、今まで殺した人間をどうしてきた?喰ったんだろ?命乞いをして許されると思っているのか?俺はこれから神都に向かい、罪を償うつもりだ。地獄の様な日々は耐え抜くつもりだ。でも、俺とお前は違う。お前は喜びながら、快感を得ながら人間達を殺してきたんだろう?俺はそれを許さない。死を償ってお前も死ね」
バァァァァァアン!!!
山頂には少し大きなクレーターができた。怪人はバラバラになって死んでいる。
俺はこれからどうするのか.....学園ライフはもう、送れないだろう....
俺はこのまま神都に行き、罪を償うつもりだ。
....俺は俺が許せない。事故だったにしろ、俺は数億人と言う命を奪った。復元で元に戻ったにしろ、殺してしまったのは事実。死でもなんでも受け入れるつもりだ。
両親にはこの事をまだ話していない。今日、話そうと思っていた。決意が決まったその日に話そうと。
村の人達に嫌われても...いい.....家族にも嫌われても....い....い....
やはり嫌われるのを俺は恐れているのかもしれない....なんでこんなにも苦しいんだろう....
俺は自分の村、自分の家に静かに帰っていった。
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