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一話 大切なものを知りました

復元の能力はやはり強力だった。壊れた剣は勿論。粉々になった物でも元通りに治った。


そして何より強いと思ったのが、飛ばした剣も復元を使えば戻ってくると言うこと。これは凄まじい能力だった。


復元には色々な使い方がある。それを何億年と研究し続けた。そんなある日、復元能力が〝進化〟した。


進化した復元はなにも無い場所から剣を具体化させていくと言う何とも強力な能力だった。俺からしてみればこれは凄い能力だ。一見地味かもしれない。でも、これだけで戦闘において凄く変わる。


俺はまた何億年と修行に励んだ。



この空間に来てから約50億年。俺はこの空間から出ることを決意する。


「早くこの空間から出て学園に通ってやる...!!」


その事を胸に空間を──斬る!!


バキバキバキバキ!!!


空間が壊れていく音が確かに聞こえた。時間が経つにつれて空間に大きなひびが次々と現れていく。


バキバキバキ...パリィン!!


空間が完全に壊れた。空間にあった家具も消えていく。やがて光が視界に入る。


「外だ....外だぁ!!」


俺は森に居た。見覚えがある場所。なんら変わっていない景色だ。


懐かしい。本当に懐かしい。幼虫が初めて外の景色を見るかのように俺の目には輝いて見えた。


「この場所は......俺があの空間にワープされる前に立っていた場所だ」


本当にここに立っていたのかは分からないが、ワープされる前に居た場所と同じだった。


「とりあえず、今の〝フツ村〟はどうなっているだろう...まさか無くなったって事は...ないよね....」


俺はまさかと思い、村の方に走った。走る時も音を一切たてずに村の方へ向かった。


フツ村は俺が住む村の名前だ。如何にも普通な村って感じの名前だ。


走り出してから数秒。目的の場所に到着する。俺の視界には──






見覚えのあるおっさん達がフツ村には居た。


「おっ。レイト.....ん?なんかやけにしっかりしたガタイになったな。鍛えてんのか?ははっ」


見覚えのあるおっさんは聞き覚えのある声をしていてそれで.....


「お、おい。なんで泣いてんだよ」


「....え?」


「え?じゃねーよ。涙出てんぞ」


「ほん...とだ....」


俺はいつの間にか涙をそっと流していた。


「あれ....おかしいな....なんで...だろう?」


「知らねーよ。とりあえず何だか知らねーが落ち着くまでこのベンチに座ってろ」


そう言っておっさんはベンチに座れと言わんばかりにベンチを叩いた。


俺はベンチに座りしばらくの間涙を流した。



落ち着いた頃、俺はおっさんに礼を言い、実家に戻る。

もしかしたら、母さんも父さんもいるかもしれない...!!


そう思いながら俺は実家に帰る。着いた場所は何とも普通の家だった。


「懐かしいな...」


この家こそが俺の家、俺達の家だ。俺はドアを開ける。


「ただいま」


「おかえりなさーい」


「っ!?」


この声は確かに俺の.....母さんだ。俺はすぐ様靴を脱ぎ捨て、キッチンに向かう。そこにはいつものように料理をしている母さんだった.....


「あら、どうしたのその身体?随分立派になったわね」


「あ....あぁ.....」


「あらどうしたの?──本当にどうしたの?」


俺はいつの間にか母さんに抱きついていた。母さんと俺は同じぐらいの身長だ。俺は膝をつきながら抱きついた。


俺は母さんの温もりを感じながら父さんが帰ってくるまでずっと泣いていた。


──ああ。こんなにも村のみんなが大切だったなんて....


俺はもし村が無くなったいたら。もし、村のみんなが居なかったら。俺はどうなっていただろうか。




あれから一日が経った。俺は昨夜、今までの出来事を両親に話した。謎の空間で50億年もの間強くなる為に一人で修行をしていた事も。二人は直ぐに信じてくれた。俺は驚きを隠せなかった。普通こう言うのは信じれないだろうと思ったから。でも二人は入った。『自分の息子だから』.....と。


俺はこの時知った。俺の両親も俺も普通では無かったかもしれない事に。

そして少し普通より行き過ぎた愛情が俺達家族にはあった事を。知ってしまった。


俺は能力者学園に通いたいと言ったら、すんなり受け入れてくれた。何故すんなり受け入れてくれたのかを聞いた。そしたら──


「お前がやっと自分で決めた道だ。俺らが全力で息子をサポートするのは当たり前の事だ。それに、お前が自分から言い出すなんてこれまで一度もなかった。だからきっと、これからお前の人生は大きく変わって行くと思う。そう信じてる。だから、頑張れよ」


と言ってくれた。──俺は改めて親の偉大さを知った。こんなにかっこいい事言えるのは俺の父さんぐらいだ。



そして現在。俺は謎の空間にワープされた場所に居た。その周りには木しかない。なぜこんな所でワープをしたのだろうか....理由は分からない。


でも戻ってきた世界には村の人たちもみんな居て良かったと思える。


そこで俺はこの状況を整理していく。


まず何故謎の空間に50億年ぐらい居たのにこの世界では時間が進んで居ないのか。いや、進んではいた。でも、あの空間だけがまるで時間が止まっているようだった。そう思えるのにも理由がある。まず時計が使えなかった事だ。時計の針は1ミリも動かない。そもそもあの空間は何だったのだろうか。

今はそんなのどうでもいい。とりあえず強くなれた。それだけだ。


そしてあの空間からこの世界に戻ってきた時に、感じた大量の悪意を持った何かがこの村の近くに住んでいるということが分かった。今でも視える。


とりあえずあれを対処するべき何だろうけど。とりあえず今は村に近寄ってくる様子も無いから放置だ。


そして今一番嬉しい出来事。


学園に通える事......!!


友達作って、一緒に勉強したり一緒にご飯食べたり、お泊まり会したり.....


憧れの学園......


楽しみでならない......


何人友達作れるかなぁ....もしかしたら素敵な出会いがあって.....そこからお付き合いをして....将来を誓って.....け、結婚....


「むふふ〜」


俺はウキウキな妄想学園ライフを想像してしまい、興奮が抑えられなかった。


「もしかしたら綺麗な人と.....け、け、け、結婚....」


完全に俺は結婚の事を考えてしまっていた。将来は綺麗な奥さんと俺の子供と一緒に......


やばい....興奮しすぎて落ち着かない...


んぅ〜!!楽しみだぁ学園ライフ!!


俺は思わず力が入る。そして地面を強く蹴った。


浮遊しながら妄想に浮かれていた時、ふと意識を妄想の中から意識を戻した。俺の視界に入ったものは....



──強く蹴った場所から段々地面がバキバキと割れていく光景だった。考えるより先に地面は次々と崩れていく。どんどん地面は割れていき、広がっていく。俺はその光景をずっと見ていた。


この後何が起きるのかも知らずに.....






そして気づいた時には世界が──破滅してました。



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