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プロローグ③ 能力を手にしてしまいました

俺は夢を見ていた。


「母さん!いい野菜が採れたよ!」


「あらまぁ。立派な野菜達ね」


「レイトが一人で育ててた野菜なんだよ」


「それは凄いわ!レイトは立派な農業士になれるわ」


「うん...」


この三人は俺と俺の母さんと俺の父さん。


俺の名前はレイト。母さんの名前はイーシャ。父さんの名前はレト。


村では農業をしていた俺と父さん。この日、まだ俺が8歳の頃は過去最高の立派な野菜が採れたっけな。採れた時は物凄く喜んだ。


「それじゃあ、その野菜を今日のおかずにしましょうか」


「絶対美味しいよ!」


「なんせレイトが採った野菜だもんな!美味しくないわけないだろう!」


「ふふふ」


父さんと母さんは俺の頭を撫でる。母さんに野菜を渡す。そしてキッチンに行き、調理を始めた。


父さんと俺は椅子に座って出来上がるのを待っていた頃。父さんが話しかけてくる。


「レイト。ずっと前から聞いておきたかったんだ。お前はその......農業士にはなりたくは無いのか?」


父さんは真剣な顔で俺の顔を見てきた。俺は本当は......この頃道に迷っていた。

この頃まだ幼かった頃もあるが、俺は親の跡を継いで農業士になるか、それとも......別の何かの職業についたりとかもしてみたいとは思っていた。でも、両親の期待を裏切るわけには行かないと言う気持ちがあった。


「.......」


「レイトよく聞け?お前の人生はお前が決めるんだ。いつだってお前の人生は冒険だ。俺達がお前に期待しようともレイトが......本当になりたい何かを見つけたらそれはレイトが決めるべきだ。でも......今は、そんな難しい事を考えなくていい。お前はまだ子供だ。人生これからだ。でも良く覚えとけ?────俺と母さんはお前の生き生きしている姿を見れればそれでいい。生きてくれさへえくれれば俺達はそれでいい。だから俺と母さんが死ぬまではお前の生き生きした姿を見させてくれ」


「......うん....」


俺はこの頃、父さんを抱きしめた。この時に誓ったのだろうか。絶対に生きて父さんと母さんを守りたい。村のみんなも守りたいと思ったのは。父さんの温もりはとても心地良かった。今でも忘れない。


──────────────────


「んんぅ.....」


俺は寝巻きから起き上がる。俺は昔の夢を見ていた。母さんと父さんが一緒にいる夢を。今は懐かしいと思える。みんなはもう......居ないのだろうか?......それはそうか。こんな空間で何年経ったのか分からないぐらいに修行しているのだから。


「絶対に能力を〝開花〟させるぞ...!!」


能力とは──生まれ持った才能の様なもの。能力を持っている者達は鍛錬する事によりもっと上手く扱えるようになる。そして能力は適性で決まる。


能力と自分の相性で能力は決まる。脳筋の人は肉体強化ができる能力だったり。お花が好きな人はお花を武器にする能力だったり。能力と自分の個性が似ている事から、適性で能力が決まるのではという推測を研究者達は立てた。その推測は間違いなかった。


そして能力とは能力を使えない人間でも持ち合わせているのではないだろうかと言う説が立てられた。能力を使えないのは、能力との相性が合わないからなのでは?と言う説も。能力を持っていない人達は鍛錬を試みた。何年。何十年経とうとも能力は一切開花されなかった。その説は無いと断言された。


でも、それをこの空間で試す価値はあると思う。この空間に居ても歳をとらないし、もし万が一の場合が起きてもメンタル強化や肉体強化などは既に行っている。


俺は能力を開花させるにはどうしたら良いのか考えた。とはいえ過去にも同じ事をした人達が言っていたが、まず自分の中にある何かと触れ合う必要がある必要がある気がすると言うのを村長の家で見たことがある。


まず、瞑想をする。自分の何かと触れ合ってみる。でもその何かが見つからない。真っ暗なまま何も......


能力者はどうして能力を扱えるのだろうか。そこから俺は考えた。ずっと。ずっと。ずっと.......


そしてある事に気付く。


「能力と言うのはもっと深い場所で眠っているのではないか...?」


俺が見てきたのは脳の限界まで。でも能力はその先に見えてくる筈なのだ。これまで幾度となく限界を超えてきた俺だ。今更ここでもう無理です、なんて事は言えない。俺は行ける気がする。俺の能力が眠るその先を見ることだって....必ず。


その先を見つければ能力は真の力を発揮できる。でもその行為は自殺行為と一緒。脳が破裂する。でも俺は行ける気がした。理由はわからない。でも、そう思えるのだ。




あれからずっと能力を見つけていた。でも、脳が悲鳴を上げ、苦しい生活を送っていた俺は遂に見つける。


「あった.....!!」


その場所は美しくクリスタルが1つ浮いていた。そのクリスタルの輝きは美しく、俺はそのクリスタルに無意識に触れてしまう。


──触れた瞬間、クリスタルにひびが入る。どんどん、パリパリとクリスタルが割れていく。クリスタルの中身は今までより美しく輝きを放っていた。


俺はその輝きに手を伸ばす。その手から話さないように俺は強く握った。そしてその輝きは俺を包む。温もりを感じた。その温もりは嘗て父さんを抱きしめた時と同じ温かさ...久しぶりの温もりに俺は安心した様に、意思を手放した。



ずっと意識を失っていた。どのくらい寝ていたのかはわからない。でも俺は薄らと覚えている。クリスタルに触れて...綺麗な輝きを放った何かを手で掴んだ......


でもそこから覚えていない。その後何が起こったのかも。そうだ!と思いながら自分の中に何かあるかもしれないと思い、瞑想する。


すると、今までになかった光が俺の中で光っていた。


「これが...能力...」


遂に俺も能力を手にしてしまったのだろうか.....これで俺も能力者なのだろうか...!!


「よっしゃぁぁあああああああ!!!」


俺は感動のあまり、大きな声を出しながら波を流した。


「やっと...やっと...」


能力が使える...!!


俺は嬉しくて嬉しくて叫ぶ事しか出来ない。能力を持ち合わせていなかった俺が能力を自力で手にした。これは凄いことだ。俺一人でここまで.....


「こんなことしてる場合じゃない...能力が本当に使えるか確かめなきゃ...」


俺は夢にまで見た能力を早速使ってみる事にした。どうやって能力を使うのかが問題だった。


「はっ!」


手を翳す。でも何も起こらない。そりゃそうか。自分の能力が何なのかも分からないんだから。


能力者は生まれつき自分の能力が何なのかを知っている。でもその能力の正体が俺には分からない。


だから一先ず、自分の能力と向き合うことにした。俺は能力に話しかける。


「お前は....俺に──どう使って欲しい?」


でも返事もない。何も起こらない。俺は続ける。


「俺はお前をこの手で手にした事を嬉しく思ってる。前までの俺は能力を諦めかけてた......でも、俺はお前を見つけた時は、すごく嬉しかった。俺は能力に憧れていたんだ。とある本に描いてあった。能力と心を通じ合えば、必ず強力な力となる。俺はお前と心を通じ合って、共に──歩んで行きたい。だから俺に返事を聞かせて欲しい」


.......すると通じたのか、光が点滅する。それはまるで「自分なんかでいいの?」と。


「お前が俺の為に力を使ってくれ。俺はお前と在りたい。お前の能力を俺は使いたい。どんな能力でもお前は俺の──力だ」


光はどんどん増していく。俺に応えるように光がどんどん大きくなっていく。頭の中に能力の名前と使い方が流れ込んできた。


«復元»


なんでも元の状態に戻せる能力。ただそれだけの能力。でも──強力な能力でもあると思える。


「これからよろしくな──«復元»」


こうして俺は能力«復元»を手に入れる事に成功した。

──これから俺の物語が始まっていく予感がした。



プロローグはこれにて終わり!次回からが本編と言えましょう!


次回もお楽しみに!

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