第二話 私達の獲物
数えることが呆れるくらい長い間、平行線を保った争いに昨日は動きが生まれた。月の一族の勝利という歴史的出来事だった。
半月にある月夜の神である華救夜の宿る大樹の前に月の一族は集まっていた。
「ルーナとリェナの部隊にはこのまま地球広海の港を占領してほしい」
これから始める夜戦についての作戦内容を深都は話しいた。
最前列にはルーナクレシエンテとルナリェナ、そして今回は本陣の通信術士ではなく戦士として参加する蛍の姿がある。
「その後はそこを本陣にして皇都を落とすんだろ?」
蛍がいつものように兄である深都の作戦に口を挟んで付け加えると、皆がそれに了解だという苦笑をみせた。皇都の皇城を落とすのはそう簡単じゃないことを皆が理解していた。
それでもルーナクレシエンテとルナリェナは皆に笑ってみせる。
「私とリェナが本気になれば無影の雷皇も新しい皇子達も敵じゃないわ!」
「まだ新しい皇子達とは戦ったことないけれど、きっと大丈夫」
密かに皇都に忍ばせてある諜報部隊から、あの(仮)呼ばわりだった彼らも皇子だという確認がとれていた。第二皇子である雅己・アースと第三皇子である希・アース。
もう、彼らの呼び方は決まっている。彼らの操る魔法の通り、深紅の炎皇と疾風の氷皇だ。第二皇子が纏う色は“青い炎”だが、彼の皇子は優れた魔力操作で炎の色までも変化させられるらしいと言うのを情報として聞いている。
「深紅の炎皇は私の獲物よ」
「疾風の氷皇は私の獲物なの」
ルーナクレシエンテとルナリェナが同時に自分の獲物の名を口にした。深都も蛍も、皆が分かっているというように頷いたりすると大樹の周りに順番に集まって華救夜の神力を得て地球星に向かった。
地球広海の港。そのすぐ近くに月の一族は本陣を置いて深都が作戦参謀として指示を出している。ルーナクレシエンテ達は、アース皇国の港をこの夜戦で攻め落とす配置についていた。
〈右翼をリェナ、左翼をルーナの部隊で攻める。残りの中央と本陣の守りを蛍の部隊で頼む〉
「了解!」
通信術から深都の声を聞き、ルーナクレシエンテは双剣を召喚して真っ先に自分の部隊を引き連れて港へと前進した。
少しすると港と陸地がよく見える。どうやら地上には数で優位の皇都軍がずらりと並び、空中には皇都騎士団が複数の小隊に別れて配置されているようだった。
「ザコは任せるわよ!私は空にいる奴らを落とすわ!!」
ルーナクレシエンテは仲間達にそう言うと、誰よりも先に敵陣へ突っ込んだ。
月の光が降り注ぐ夜戦で、この私が負けるなんてあり得ない。誰よりも敵を沈めてみせる。
「紅玉の猛攻!!」
ルーナクレシエンテはさっそく自分の身体能力を上げて舞い踊った。ルーナクレシエンテの体は紅い光を纏い、通った道にはその残像が残る。
いくらエリートを集めたという皇都騎士団とは言え、今までより少し本気のルーナクレシエンテの敵ではない。すでにいくつかの小隊の存在は、無くなっていた。残るのはルーナクレシエンテが通った跡の紅い光のみだ。
「今日も勝たせてもらうわよ」
ーーー紅玉の刃!
ルーナクレシエンテが召喚した双剣の刀身が紅く輝き、攻撃力が上がった双剣で盾の魔法を使っている皇都騎士団ごと斬り裂いた。
敵の盾など、あって無いようなものだ。次の皇都騎士に狙いを定めていたルーナクレシエンテは不敵に笑った。
少し時間を遡り、地球広海の港。そのすぐ近くに月の一族は本陣を置いて深都が作戦参謀として指示を出している。ルナリェナ達は、アース皇国の港をこの夜戦で攻め落とす配置についていた。
〈右翼をリェナ、左翼をルーナの部隊で攻める。残りの中央と本陣の守りを蛍の部隊で頼む〉
〈了解!〉
通信術から深都とルーナクレシエンテの声を聞き、ルナリェナは大弓を召喚して仲間達に召喚武器を構えさせた。
ルーナクレシエンテが真っ先に前に出ることは分かっていた。だから、右翼から攻める私達は遠距離攻撃で敵を殲滅する。
「皆、準備はいいかしら?前方に見える皇都軍を全部貫くわよ!」
ルナリェナの部隊の大半は弓士などで遠距離攻撃が得意な仲間が集められている。そのため視力を強力に身体強化し、離れた港にいる皇都騎士団や皇都軍を隅々まで見ることができる。
ルナリェナは奥に控える疾風の氷皇に、あいさつ代わりに天空に向けて弓を引き放ち、無数の光の矢を敵陣に射ち込んだ。
「俺達もやるぞ!」
他の月の一族も各々の召喚武器を構えて敵陣に向けて撃ち放った。
ルナリェナは自分の射ち放った光の矢が敵を貫いているのを確認すると、また先程と同じ攻撃を威力を少しあげて射つ。
「まずは、味方が容赦なく倒れていくところを見ていることね」
この前のお返しと云うように、ルナリェナは自分の獲物である疾風の氷皇に見せつけるように笑った。
きっと、彼も目がいいだろうから精神的なダメージも与えられるだろう。
ルナリェナの部分を付け足しました。




