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第一話 隠された色

また、いつものようにルーナクレシエンテとルナリェナは真夜中の月の光の加護を受けて、皇都騎士団と戦っていた。


紅玉の刃(ルビーブレイド)!!」


ルーナクレシエンテの双剣の刀身が紅く光輝き、隊長格を的確に斬って地球広海に沈めていくと皇都騎士団に焦りの色が見えた。

それを見逃さず、容赦なくルナリェナが残りの皇都騎士団に向けて広範囲の術式を発動した。


牡丹一華(アネモネ)の小風!」


2人の前にいた皇都騎士団の3分の1くらいが地球広海に沈んだだろう。

それでも、毎日毎日倒しても次の夜には大量に現れる皇都軍は、本当に数が多い。唯一無二の月夜の神である華救夜からのみ生まれ落ちる月の一族と違って、地球人は親の倍以上に増えていくのが普通らしい…と、ルナリェナは深都に聞いた事がある。


「ねえルーナ、私達も子供をつくったら数に圧倒されなくてもすむのかしら?」


敵の数が多い事に、良い策はないかと真剣に考えていたルナリェナのいきなり通信術で飛んで来た言葉に、ルーナクレシエンテは構えていた双剣を勢いそのままに落として叫んだ。


「えっ!?何言ってるのよ!?リェナ!?…いえ、そんな事ッ、子供をつくるって…え、と?」


ルーナクレシエンテが顔を真っ赤にした百面相と意味不明な言葉を唱え続けている間に召喚していた双剣が消える。気が動転しているために霊力のコントロールができずにだんだんと浮遊術が安定しなくなり、重力に引きずられて地球広海の海面に頭から近付いていっていた。


「え、と…ルーナ!?」


突然に取り乱して無防備になったルーナクレシエンテに警戒しながらも、皇都騎士団はチャンスだと体制を立て直してから月の一族の最高戦力の1人であるルーナクレシエンテに総攻撃を仕掛ける。


「第弍部隊、各自攻撃魔法を用意!月の姫を落とせ!!」


「俺達も魔法で攻撃するぞ!第肆部隊の連繋攻撃魔法を見せつけてやれ!!」


皇都騎士団の格隊がそれぞれの魔法を展開してルーナクレシエンテに総攻撃を叩き込んだ。

“やられる”と周りにいた月の一族の皆が思う…だが、ルーナクレシエンテの集中を乱した張本人でもあるルナリェナだけはそう思っていなかった。


「ああ、でもそもそも月の一族は月夜の神である華救夜から生まれるから月の一族なのよね」


1人で静かに納得していた。そう言いながらルナリェナが大弓を構えて弓を引けば、光輝く矢が近付いてくる大勢の皇都軍を射ぬいていた。皇都軍の上に位置する皇族や貴族のエリート集団である皇都騎士団のメンバーとは違い、弱いながらも大多数で攻めてくるしかできない皇都軍は本当に小賢しいと思う。


「ちょっとリェナー!!」


“いい加減にしてよ!!”と何処かの世界に飛んでいっていたルーナクレシエンテが現実に戻ってきたらしい。見事に自分に向けられた魔法の攻撃達を、自分の生まれ持つ霊力だけで無効化していた。

ふわりと体勢を立て直して海面すれすれに降り立った。風に靡くルーナクレシエンテのウェーブのかかった長い髪は黒い色をしている。瞳の色もいつものライトブルーではなく茶色に戻っていた。


「この私が本当の姿を皇都騎士団(あなたたち)にさらすことになるなんてね…」


いつもと纏う色が違うせいか、ルーナクレシエンテの存在感はいろいろな意味で異様だ。ここにいる誰もが能力(ちから)の差をまじまじと見せ付けられて、皇都軍達の体が本能的に警告を発して震える。皇都騎士団はさらにその先を、この月の姫(バケモノ)から逃げるなんてことが本当にできるのかと…否、できないと理解する。

だが、これが本来の姿だというのに本人も何故か()()()を感じるのは不思議な現象だと思う。


「ルーナなら大丈夫だって思ってたの」


その瞬間、今この“支配された戦場()”にそぐわない空気を読まない明るい声が響きわたった。ルーナクレシエンテが本来の姿をしているため、強い霊力を抑えた姿でいるルナリェナが隣に並べば本当によく似た姿の双子である。

双子の姉妹らしく、ルナリェナはルーナクレシエンテに抱き付いた。


「本当にリェナのそういうところが嫌いよ」


そう言うわりにはルーナクレシエンテはルナリェナを嫌がってはいない。そんなルーナクレシエンテにルナリェナも、月の一族の皆が笑顔で笑う。ここが戦場だなんて忘れるくらい。

そして、この夜戦において能力値(戦力)と士気が格段に上がった月の一族はもう数えきれないくらいずっと平行線だった争いに“勝利”を飾った。

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