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第一話 皇帝主催(?)の晩餐会

ルーク・春樹・アースに連れられて秘密裏にアース皇国の城に戻って来たルーナクレシエンテ達は、雅己の部屋で3人のメイド達に皇帝との夕食会用にドレスに着替えさせられていた。このメイド達もまた皇帝ことグレイス・一樹・アースの息がかかった者達であり、ルーナクレシエンテ達にとっては()()()()()()に当たる存在である。


「ルーナもリェナも可愛くしがいがあるわね!」


()()()()()で元から可愛いもの」


「私達が昔やっていた髪型、今なら流行るんじゃないかしら?」


会話に花を咲かせながら、メイド達は双子の姉妹をこれでもかと言うほどに可愛く着飾る。

ルーナクレシエンテには紅いドレス、ルナリェナには水色のドレス…一見、婚約者である第二皇子と第三皇子の色であるが、本来このドレスを作らせたアース皇国の皇帝であるグレイス・一樹・アースは大事な大事な妹の色に合わせてドレスをデザインさせて金を掛けて作らせている。

もちろんのこと、ルーナクレシエンテのドレスは前回のお披露目会の時とは別のものである。


「ルーナ、この状況はいったい何ごとかしら?」


「私も、()()()()()は初めてだわ」


部屋の真ん中に、まるで着せ替え人形のように立たされている双子は同じように首を傾げては、この状況にされるがままになっている。

ちなみに、この部屋の主であるはずの雅己・アースは、隣の希の部屋に追いやられている状態である。


「できたわよ!」


「こっちも終わったわ」


自信満々にメイドの()()はお互いの力作を褒め合い、自慢する。

そんな時間が少し過ぎた頃、扉のドアがノックされる音で騒がしかった部屋の中は静まり返った。

メイドの1人が“あら、いけないわ”と“もう時間ね”と笑い合うと、残りの1人が完璧なメイドの所作で部屋のドアを開ける。


「失礼するよ。末の妹(いもうと)達の準備はできたかな?」


部屋に入ってきたのはアース皇国の皇帝と皇都騎士団団長である。

近くに部外者がいないことを確認してドアを閉めたメイドは、力作といわんばかりの表情で答えた。


「いいできに決まっているじゃない!お姉ちゃんの“メイド力”をなめないでよね、一樹」


「そうよ、お姉ちゃんは最強なんだから!」


月の一族の頃(昔の私)は何を着せても可愛いわよ!」


彼女達の姿はアース皇国の民として、それぞれ纏う色も姿も何もかも違うはずなのに…月の一族の双子であるルーナクレシエンテとルナリェナにそっくりに見えてしまう。

ここにはいない紀里弥がいれば、容赦なくツッコミをいれていそうでもあるが…。


「ありがとう、姉さん達のおかげだよ」


「また何かあったら言いなさい」


()()()()()()なら、ある程度は聞いてあげるわ」


「皇帝グレイスのお願いは聞いてあげることは難しいけどね〜」


そう言いながら、彼女達は部屋を出て行った。

皇帝に対してのメイドとしての振る舞いなのだろうとルーナクレシエンテは思いながら、彼女達を見送っていた。それに対し、ルナリェナはずっと不服そうな顔をしている。


「春樹はリェナに説明しなかったのか?」


「そう言うわけでも無いのだけれど…やっぱり月の一族として一樹お兄ちゃんの腹黒さが見えるのが問題なんじゃないかしら?」


「うっ…それを言われると、俺も返す言葉がないんだけど…?」


そんなことを話しつつ、一樹はルーナクレシエンテとルナリェナをエスコートして食事が行われる部屋へと向かう。

廊下を他愛ない話をしながら進み、大きなドアを黒い執事服に身を包んだ男性2人…これまた()()()()()()()()()()()がドアを開けていた。


「え!?…“一樹ばかり、妹達と手を繋いで、ズルい”…ですって?」


それに先に気付いたのは、月の一族の能力を通じて心を読んだルナリェナが…それに続いて、月の一族の能力を封じられたルーナクレシエンテが双子的な繋がりで少し遅れて気が付いていた。

この他にも、このお城の内外から、地球星(アース・スター)の至るところから()()()()()()の声がする…こんなこと、あっていいはずがないのに。


「まさか、お兄ちゃんがいっぱい…?」

「まさか、お姉ちゃんもいっぱい…?」


ルーナクレシエンテとルナリェナが複雑そうな顔をしてそう呟いている内に、まさにその()()に開けられた扉をくぐって部屋の中に入る。

すでに食事の準備はできている、らしい…この城に数日いるルーナクレシエンテですら知らない料理。まだ来たばかりのルナリェナには、さらに未知の食事である。


「一樹、お前の言う通りに皆で腕に寄りをかけて作ったぞ」


「ありがとう、拓摩。他の皆にも伝えてくれ」


昔、聞いたような気がする名前だとルーナクレシエンテとルナリェナは同時に思う。

他の部屋からも、妙に聞き憶えのあるような()が聞こえてくる気がする。


「こんなにいるなんて…まさか、月の一族の中にも地球人がいたりするのかしら?」


本当に、どういう状況なのだろうと頭を抱えたのはルナリェナである。遅れてルーナクレシエンテも同じ顔になっていた。


「月の一族に地球人が転生しているという情報は入っていていないから、心配しなくても大丈夫だ」


「それに、月の一族に地球人が転生したら初手でバレるだろ。生まれる前から月の一族の能力を制御できる奴なんているわけがない」


一樹の言葉(セリフ)に、それに…と言葉を続けたのは、ルーナクレシエンテ達を城に連れて来た後に騎士団長の仕事があると言って何処かに行っていたルーク・春樹・アースだった。

そう、よく考えれば春樹の言った通りになるだろう。恐らくそれができるのは、記憶と実力を保持したまま月の一族を2回や3回続けなければ勝手に溢れ出して聞かれる月の一族の能力を制御することは不可能だろう。


「そう、ね…」


「確かにそれは、すぐにバレるわね」


納得してしまった…というより、もうこんなヘンテコすぎる状況を理解するのに疲れてしまったと言う方が正しいだろうか。


「ルーナ、私もう考えることに疲れたわ…」


「それは私も同じよ。ずっと“捕虜って何だったかしら?”って考えていたもの」


何はともあれ、一樹お兄ちゃん主催?の夕食会は無事に開催された。

食事は美味しいのだが、これこら一樹お兄ちゃんの策略の駒として使われるであろうことは…ルーナクレシエンテにもルナリェナにも理解できていた。






時間は進み、夜。

皇帝の策略で用意された雅己の部屋に居座り続けるルーナクレシエンテに内心引いいていたルナリェナだが、その洗礼を自分も受けていた。そう、希の部屋へと通されたのだ。


「どうして、私が疾風の氷皇(あなた)(なんか)と…?」


ーーーいったい何故?何がどうして!?こうなっているのかしら!?


ルナリェナもまた、頭の中でぐちゃぐちゃと考えていたがちゃんとした言葉にはならず、最後には考えるのを止めていた。

そんなルナリェナを知ってか知らずか、疾風の氷皇と月の一族に呼ばれる変態皇子もまたこの状況に苦悩していた。


ーーー何故、雅己はこの状況で平然としていられるんだ!?


隣の部屋とは、また一味違う状態であった。

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