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第八話 脱走×皇子付き=デート!!

深都の命令でリェナ姉と敵の捕虜こと、変態皇子を連れてアース皇国に潜入したわけだが…オレは早くも2日目にして頭を抱えていた。

軽く頭痛がするくらいには、わざわざ別の部屋にしたのに同じ部屋でくっつきまくっているリェナ姉達はオレの存在を忘れているんじゃないかと思わせてくれる。


「お前も深都に面倒を押しつけられたな、紀里弥」


オレの心の声は目の前の、()()()()()()()()()に筒抜けだったらしい。今は1階の客間でお互いの報告を聞きあっていたところだ。


「ルーナ姉も捕虜になったわりに、()()()みたいなことをしているわけだ…」


目の前の兄の心から情報を読み取り、リェナ姉と同様にルーナ姉にもオレは呆れるしかない。

この兄はアース皇国に潜入している月の一族の中では特殊な方に分類されている。オレはこの兄の他には知らないが、月の一族としては一度死に、その記憶を持ったままアース皇国の地球人に生まれ変わっている状態の潜入部隊がいるらしい。


「こっちも一樹が面倒を押しつけてきそうな気配がしているからな~」


ーーーあのベースは一番頭がキレるからな…俺には考えていることが全部は理解できない。


「お前も俺ならできるはずだろって、深都に言われたんだよ…」


「お前もそのベースだったな。そうそう、深都もお前くらいの時に一樹にいいようにパシられてたからな~」


その“一樹”という、深都達よりも遥かに上の世代らしい同じベースの兄にオレは興味が湧いてきていた。

でも深都も今のオレみたいにパシられてたってことは、同じベースで考え方が一緒ってことだから…月の一族(うち)の伝統行事か。

そこまで考えて、やっぱり嫌になる。オレはさらに家出したいと改めて思うくらいだ。


「あと、ルーナのことは心配しなくてもいい。あの城の頭は一樹で、ルーナとリェナに甘いからな」


「確かに深都もあの姉達に甘い気がしてた…って、これも同じベースだからか…!?」


「そうだろうな。華救夜が子を産み落とす周期的にお前は一樹の時期だから、たぶん妹ができたら溺愛だぞ」


ーーー()()()()()に、な


そんな意味深なことをオレに読ませないで欲しい。でもこれは、分かっててやってるよな…。

何処か蛍を思わせる…て、この兄はきっと蛍と同じベースなんだろうなとオレは思った。






◇◇◆◇◇

他の潜入している奴から情報を得るために、オレはアース皇国の民を偽って皇都に出掛けていた。

厄除けの面を作る職人を偽って潜入している奴と話し、それから果物屋をしている奴と話した後…オレはそろそろ潜入に使っている家に帰りたくないが、帰ろうと思いながら商店街を歩いていた。


「ふん、これもかわいいと思うわ」


「そうか…店主、これも買おう」


え?ルーナ姉の声…?

小物や装飾品を扱う露店の前で、リェナ姉達に負けないくらいの恋人同士みたいな甘ったるい空気を醸し出しているルーナ姉と、何故か深紅の炎皇の姿がそこにあった。

いったい何故…ルーナ姉まで()()をしているというのか?


「オレは疲れて幻覚でも見てる、のか…?」


本当にオレは目の前の光景を受け入れられない。見間違いであって欲しいと思って、何度も何度も自分の目を擦っているのに…その行動に意味はないらしい。


ーーーこんなに買ってもらって大丈夫なのかしら?それよりも、早く深紅の炎皇から逃げないといけないのに…でも、このまま深紅の炎皇と一緒に、買い物をするのは楽しいと思ってしまう自分がいるのよね。


ーーー俺が寝ている隙に逃げ出すなんて生意気な女だな。逃げようなんて思わないように好きなものをすべて買い与えれば、逃げようなんて思わないよな?


ルーナ姉達から聞こえる心の声は、オレに数日前のリェナ姉の危うさを彷彿とさせてくれる…って、城から逃げて来ても深紅の炎皇が一緒に付いて来たら意味ないし、これってもう完全にデートだろ!

このままだと、ルーナ姉もこの下衆皇子の毒牙にやられてしまう…ルーナ姉もリェナ姉と同じでチョロいから!オレがどうにかしないと!!

でもどうする?このまま出て行っても…オレに何ができる?またリェナ姉にくっついていた時みたいにルーナ姉にくっつくのか!?

それで何になるって言うんだ…!


「この後、仕立て屋に行ってお前の好きなドレスも買ってやる」


ーーーこいつの紅いドレスを脱がせて、俺の赤い色をしたドレスを着せてやる!


深紅の炎皇の邪な心の声を聞いたオレは飛び出していた。ふざけるな!そんな下衆な変態野郎の側にルーナ姉を置いておけるか!!

このアース皇国で貴族の男が女にドレスを贈るって意味はなあ!


「お前みたいな下衆皇子にルーナ姉をやれるか!」


オレは下衆皇子にそう言い捨てながら、ルーナ姉の手を取って逃げた。

あいつ油断しすぎだろ!って思うくらいには、まだ反応できていない。今のうちに距離を稼げるのはありがたいことだ。


「え!?紀里弥!?え!?どうして!?」


まだ状況が読み込めていないルーナ姉はずっとこの調子だ。こんなんで本当に大丈夫なのかと心配になる。

こっちの情報を取られているんじゃないかと…でも、深都がルーナとリェナには作戦情報は最低限にといつも言っていたから抜かれた有力情報は無かったと信じたい。


「深都の命令でアース皇国に潜入中なの」


深紅の炎皇の追跡から逃れるために、あえて人混みの中を走り抜けて潜入に使っている家に辿り着いた。

あの強大な魔力の塊の気配は感じない。オレは周りに深紅の炎皇の姿がないことを確認して安堵しなからルーナ姉の掴みっぱなしだった腕を離した。


「この家がオレ達が使ってる隠れ家」


「え…?深都が紀里弥にこんな危険なことを命令したの?」


事情をよく理解していないルーナ姉が、オレを心配してくれているのが伝わってくる。

少しだけ姉に心配されるのが嬉しいと思いながらも、早く家の中に入ろうと思う。あの下衆皇子に見付かるわけにはいかない…そう思って家のドアを開けた瞬間、背後に突然現れた大きくて強力な魔力の塊。


「ちっ…深紅の、え…ぐはっ!」


ルーナ姉に伸ばされた手を遮ろうとした瞬間、オレが構えるよりも早く深紅の炎皇の拳がオレの顔面に迫って来ていて反応が完全に遅れたオレは殴り飛ばされていた…アース皇国に潜入するために抑えていた霊力が瞬時に使えずに、もろにくらったオレは家の中の壁に勢いよく音を立ててぶつかり、跳ね返っても受け身を取れずに床にも体が叩き付けられていた。

頭がグラグラする…立ち上がることも、この体制から体を動かすこともできそうにない。ルーナ姉だかリェナ姉だか分からない声がたくさん、オレの名前を呼んでいる。くそ、オレがルーナ姉もリェナ姉も、守らなきゃいけないのに…何で、こんな…。

オレの目の前は、徐々に暗闇に落ちていっていた。

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