第3.5話 兄から与えられた姉のお守り役
俺達月の一族の産みの親である華救夜が何かやり出した…オレは、自分達の母親が何を考えているのか理解できなかった。
そう思うのはオレだけじゃなく、特にいつも姉弟達に命令を出してくる兄達が一番警戒している感じだった。
「紀里弥」
捕虜についての話し合いが終わり、自分の管理する部屋に入ろうとしたところで、オレによく命令を出してくる兄、深都に声をかけられた。隣には不機嫌そうな蛍がいる。
どちらの兄も、オレにとっては尊敬する兄達だ。
「何?また敵情視察とか?」
いつものパシリかと思いつつ聞けば、どうやら違うらしい。
深都がルーナ姉のことと同じくらいに頭を悩ませているらしいと言うのは何となく伝わってきた。
「兄貴と話し合った結果、一時的に前の部屋に戻ることになった」
そう言ったのは蛍の方だ。深都はリェナ姉にあの捕虜としてとらえた皇子を近付けたくないと考えているらしい。
それで、夜は自分の目で監視する気らしい…2人の兄達の考えは理解した。
蛍が元々いた部屋は、今はオレが管理する部屋だ。
「何で蛍が戻ってくるんだよ?どうせなら2人であの皇子を監視すればいいだろ?」
ただでさえ、弟ばかりで人数の多い部屋だ。蛍が寝るところなんてない。蛍が戻るとなると、今のオレと同じ理由で深都が蛍を部屋から追い出したように、弟の誰かを別の部屋に追い出す必要が出てくる…大部屋はすでに広くはないのだから。
「今まで通り紀里弥が好きに決めていい」
オレの考えていることが分かったのか、深都はそう言うが蛍の方に視線を向ければ嫌そうな顔でオレを見てくる。
どうにかしろと…2人の兄の顔色をうかがわなければならないオレの気持ちも、きっと伝わっているはずだ。
「分かったよ、どうにかするよ!」
オレはもう、そう言って兄達の圧に耐えるしかない。このまま部屋に逃げたいのは山々だが、話しはまだ終わっていないようだった。
今のは前置きで、本題はこれからみたいだ。いったい何を頼まれるのだろうか…。
「リェナのことだけど、紀里弥はどう思う?」
どうとは、どういう意味だろうか。聞かれている理由も、理解できなくはない…だが、どう答えるべきか何だか迷う。
「情報戦なんて、絶対にあの2人には任せられないだろ?」
「蛍…俺は今、紀里弥に聞いているんだ」
オレの答えなんて、兄達と同じ結論。そう思うのと同時に深都は深いため息をついていた。
そうだよなと言う顔をして深都は言う。
「俺達がいない間、リェナを頼む」
やっぱりと言うか、何と言うか…昼間この家にいてリェナ姉のフォローができて、なおかつ疾風の氷皇を監視できるのはオレしかいないだろう。
「分かった。オレがリェナ姉を見てるよ」
リェナ姉に情報戦なんて、出きるわけないんだから…そう思うのはやっぱり兄達も同じらしい。危なっかしくて任せられないと伝わってくるのが本音だからだ。
「何かあったら通信術で連絡してくれ」
深都がそう言うとオレは頷いて、また戦場に行く兄達を見送った。
兄達のいない間、オレがしっかりして、どうにかしようと思う。それに、この兄達にオレができるということもアピールできる良い機会だから最大限に利用しよう。




