第三話 疾風の氷皇に仕掛ける色仕掛け…?
今日もまた、夜が近づいて来る。
疾風の氷皇の監視を深都に代わるまでもう少し…夜戦に私とルーナがいなくなって数日がたつけれど、戦場は大丈夫かしら。それとも今日こそは夜戦に呼ばれるかしら?
それにまだルーナも帰ってこない。生まれた時からいつも一緒だったルーナがいなくて…いなくなって、初めて思う“寂しい”はいったいいつまで続くのかしら。
「だからさ、リェナ姉!普通は、そこまで男に距離を詰められてたら嫌がって当たり前だからね!」
紀里弥はまた、おかしなことを言うわね。あれからずっと紀里弥達の部屋で疾風の氷皇の監視を続けていた。
それなのに紀里弥は、ずっと不服そうな顔をしているわ。何故かしら…私には分からないわ。昼戦や訓練から帰ってきた弟達も同じような反応をしてくるのも不思議ね。
ちゃんと情報を聞き出すために色仕掛けなるものをしているのに…まさか、私に色気がたりないのかしら!?
「純黒の姫君がこの距離でいいと言っているのですから、いいでしょう」
「お前は黙っていろ!変態!!」
疾風の氷皇の腕が私の肩にまわり、のりそうになる度に、疾風の氷皇が私の手をとって話そうとする度に紀里弥は怒って彼の手を叩き落としたりしている。
何度も何度も飽きないのかしら…なんて思っていると、紀里弥は“あーもう!”なんて心の中で叫びながら、何故か後ろから私に抱き付いてきた。
「お前が入り込む隙間なんてないから、もっと距離をとれ」
「可笑しなことを言いますね。おれを監視しているのに距離を置いてもいいのですか?」
「どうせ魔力を抑えられているお前なんてオレでも捕まえられる」
少し前から紀里弥が甘えてくることなんて無くなっていたのに、何だか珍しいこともあるみたいで嬉しいわ。
そう思って私が笑っていると、紀里弥は小さかった子供の頃みたいにぎゅっと抱き締めてくる。何故かしら、疾風の氷皇も心の奥底で私と紀里弥がくっついているのが気に入らないと思っているらしいわ…これはいい傾向よね。
「言ってくれますね、小さなナイト君」
「オレを子供扱いするな。この変質者!」
何だか紀里弥の疾風の氷皇に対する評価と言葉がきつくなっていっているわね…でも、だんだんとこの2人が兄弟喧嘩をしているみたいになっていくのを見ているのは何だかおかしいわ。
「その反応は明らかに子供でしょう。姉君をおれに取られるのが嫌だから、そうやって抱き付いているのでしょう?」
「そんな訳あるか!お前が場所をわきまえずにリェナ姉に手を出しているからだろ!?オレだってやりたくてやってる訳じゃないんだ!」
「あらあら、仲良しねぇ」
私がそう思って言うと、紀里弥も疾風の氷皇も心の中で物凄く呆れられているらしい…でも、彼らの表情は何故だか心から聞こえてくる声とは違うようだわ。
それともう1つ増えた、私を物凄く呆れて見ている心の声が聞こえるわ。もう、失礼ね。
「あなたを取られたくないなんて、可愛い弟ですね。純黒の姫君」
「そうでしょう!紀里弥は可愛いでしょ?」
疾風の氷皇に、紀里弥を可愛いと言われて嬉しくないわけがない…心の奥底では違う感情を隠してそう言う彼は見ていてとても地球人らしいと思う。
さあ早く、疾風の氷皇は私にアース皇国の情報を喋るのよ!
「リェナ姉!!」
あら、また紀里弥は怒っているわ。それに、私達に近付いてくる気配が2つ…どうやら今日の夜戦にも出なくていいらしい。
そう心の中で話してくるのは、さっきから私に疾風の氷皇の監視が全くできてないと呆れていた蛍と、今この部屋に来た深都だ。
「リェナ、いい加減にその男から離れるんだ」
ひっ!?…そう、とてもとても低い声で、怖い声で言ってきたのは深都だ。私は何も悪いことなんて、ここ最近はいたずらだってしていないわよ!?
そう思って動かずにいると、深都が笑顔で私と疾風の氷皇の間に割り込んでくる。
「お前は、もう少し男について学んだ方がいいだろ…姉貴達の言っていたことを何1つ理解していない」
そう言いながら、さらに呆れた顔を向けられ、もう部屋に戻って寝ろと言うのは蛍だ。何やら深都と疾風の氷皇は作り物みたいな笑顔をして、ちょっと自分には理解できない感じの会話をしている。
私が疾風の氷皇から“華麗な色仕掛け”で情報を聞き出すはずだったのに…これでは深都に私の仕事を取り上げられてしまうわ。
「リェナ姉になんて、誰も情報戦なんて期待してないから」
そう言ってきたのはさっきからいろいろと失礼な紀里弥だ。蛍もその言葉に同意しているらしく、弟達の部屋から連れ出された。
もう、どうして深都も蛍も紀里弥も私に任せてくれないのかしら…私だって疾風の氷皇に色仕掛けを使って情報を聞き出すくらい簡単にできるわよ!
「頼むからリェナ、お前が落とされるなよ」
そう言う蛍の目も私を疑っているわ。そして、その隣の紀里弥まで私を信用していない…どうしてそんなに信用されていないのかしら。
これは私がちゃんと出きると言うことを証明しないといけないわね。




