第二話 リェナのいない戦場
魔法などによる暴力シーンがあります。
私が敵の牢に入れられて、いったいどれくらいの時間がたったのかしら…リェナ達はどうなったの?私がいなくても、ちゃんと戦っているのかしら。とても心配だわ。
「他のことを考えているなんて余裕だな!」
そういえば、ずっと目の前にいるアース皇国の騎士団の男から、拷問を受けていたのを忘れれいたわ。目覚めた時には土の上に転がされていたけれど、今は鉄の鎖の長さを調整されてつま先立ちで吊るされているらしい。
冷たい錆び付いた鉄の鎖がこの私を牢獄に繋いでいる。こんなにボロい鎖に霊力も封じられているなんて本当に生意気だわ。
それとも、この痛みや仕打ちから逃れるためにリェナ達のことを思っていたのかしら。
「ユエのくせに!泣き叫べよ!!」
そう言うのと同時にパシッーンと牢の中に音が響き渡る。捕虜である私ではなく、拷問を始めた時から地面や壁ばかりを打つこの男の鞭さばきは、それほど“うまい”とは言えないのよね。
これなら紀里弥の方がうまく鞭を扱うと思うわ。鞭の使いかたなんて分からないけど、あの子は見かけによらず腹黒いもの。少し、本気で怒った時の深都に似ているから…。
「俺にやらせろ、こいつには借りがある」
少し離れた所で看守をしていた騎士団の男が言う。するとまたこの牢獄に鞭の打たれる音が響き渡る。
今度はちゃんと私に当たったようで、左の頬がヒリヒリと痛い…捕まった私に向けられたのは月の一族に対する憎しみの込められた鞭による拷問。
「お前のせいで兄貴は…!!」
更に向けられる、私の体を痛め付ける鞭。それでも私はこの男達の思うように泣きわめいたりしないわ。代わりに、侮辱的に微笑み返してあげるのよ。
「ふふ、そっちの男よりはマシにムチをさばくのね」
私にそう言われた彼らの顔は更に憎しみの願いを強めて歪んだわ。容赦なくムチをふるっているが、コントロールが鈍って私の体に当たらなくなってきている。
目の前の皇都騎士団の想いは何処かとても、無影の雷皇に家族を殺られた私達と同じような気がしたのよ。
◇◇◆◇◇
ぴちゃぴちゃと水の落ちる音がする。と言うか、冷たいし少し寒いわ。
そう思っていると、痛いくらいに冷たい水が顔から頭にかけられて重力に従って下へと私の体を伝い落ちていく。
ーーーああ、私はさっきまで何をしていたかしら…
いつの間にか腫れていた重たいまぶた。やっとの思いで目を開ければ、私はまだ拷問の途中だったらしい。ぼやけて見える目の前には先程と同じ顔が並び、どうやら1人増えているらしい。
「起きろ。月の一族の姫」
殺意のこもった低い声、初めて聞くはずなのに初めてではないような妙な感覚がある。
何故かしら?どことなく深紅の炎皇と似ているような気がする。そんな風に思わせる、髪や瞳の色は違うのに。深紅の炎皇は青がかった黒髪に青色の瞳で、この目の前の男は黄色のメッシュの入った黒髪に金色の瞳。兄弟かしら。
「っ………………?」
喋ろうとして、私は声になっていないことに気づく。”何かしら?“と私は言おうとしたのだけれど、思うように声が出せないわ。すると目の前の男は右手の人指し指に魔力を集めたかと思うとそれは“雷”へと姿を変えた。
まずい、と思った時にはすでに遅く雷魔法による痛みが身体中を駆け巡っていた。
「っ、いギャーーーーーー!!!」
痛い、痛い、身体中が麻痺したみたいに悲鳴を上げる。意識がまた遠くなる。そんなところで雷魔法の痛みは唐突に終わりを告げた。
ーーーこの男は無影の雷皇、だわ…
「何だ、ムチなどでは悲鳴もあげないし命乞いもしない女だと報告を受けていたがちゃんと鳴けるじゃないか。月の一族の姫」
「ぅぐっ……………」
無影の雷皇は私の方に近付き、私の顎の下に手を出すと無理やり顔を上げさせられた。とても双剣を召喚して切り裂きたいくらい屈辱だわ。
「さあ、月の一族の情報をはいてもらうぞ!」
そう言うと無影の雷皇はまた雷魔法を私に向けて放った。それでも、痛くて何度も悲鳴を上げても、私は家族の情報を教えたりしないわ。
幾度その攻防を繰り返しらだろう…もう、私が敵に捕らわれてどれくらい時間がたったのだろう…ああ、もう、解らない。




