第一話 囚われの悪夢
ルーナと雅己の章です
ーーールーナ…ルーナ!!
何も無い。上も下も、それに右も左も理解できない…真っ暗な暗闇の中で、私を呼ぶリェナの声だけがするわ。それだけが唯一で、この空間には何も無い。
私の体は…?
ここはどこなのよ!?
足掻いても足掻いても、意味なんて無いわ。
だって、この空間には何も無いのだから。
それに、私が本当にルーナクレシエンテであるのかすら分からないのよ!?
リェナ!! リェナ!!……………
っ…ねえ、リェナはどこにいるのよ!?
いつも、ずっと一緒にいるリェナがいないなんて…
私のこと嫌いになったの?
ねえ、リェナ!
返事をして…?お願いよ…
リェナ!!
いつの間にか、さっきまで聞こえていたはずのリェナの声がしない。
聞こえなくなった?それとも、私が作り出した都合のいい幻聴だったのかしら?
ねえ、リェナ。
私のこの“不安”は、いつもみたいにリェナに届いているのかしら…?
◇◇◆◇◇
冷たくて固い…そう思うのに、どこかあたたかい。誰かが私の頭を撫でている?
でも、どうして…この手は深都の手?
いいえ、違うわ。
私の頭を撫でているこの手は、随分と懐かしい気さえする…いったい誰だったかしら。
なぜだか思い出せない。とても大切な人だった気がするのに。
そんなルーナクレシエンテの目が覚めると、目の前には見慣れない光景が広がり、どうやら土の上に無造作に寝かされていたらしい。冷たい感覚のある両手と両足は鉄の鎖で拘束されていて、その鎖の先はそれぞれ違う位置で土の壁に打ち付けられている。
ここは地下を掘っただけの牢獄だろうか…土が完全にむき出しているし、地面もそのままで何かを引きずった跡が残る土が足元に広がっている。それに、戦闘をしていたときより体が汚れているような気がする。
もう一度、前方に目を向ければ鉄格子の横には見張りの者が数人いるらしい。
「・・・・・っ」
まだ、彼らに自分の意識が戻ったことを気付かれてはいないようだ。少しだけ、自分の体に違和感を感じて目を向ければ、微弱な“魔力”の残骸がある。
おそらく、死なない程度に回復系や治療系の魔法でも使われたのだろう、残っている敵の魔力がとても気持ち悪い。
ーーー私は、真紅の炎皇との戦いに負けたの…?
これから、私はどうなるのだろう…ここは敵の地であり、地下牢の中なのよ。とても怖いの、リェナ。
ルーナクレシエンテは声もあげず、涙をぐっと我慢して俯いた。




