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第一話 戦う理由…

地球星の3つの衛星の1つである満月の和城。

自然をそのままに魅せる造りをした中庭を通り抜けた先にある闘技場で、ルーナクレシエンテとルナリェナはアース皇国の皇都軍(てきたち)と戦って生き残り、勝つための術として稽古をしていた。


「はあっ!!…少しはやるようになったわねリェナ!」


己の強い能力(ちから)を抑えた姿である金髪のウェーブのかかった綺麗な長い髪をなびかせながら双剣を武器として召喚するルーナクレシエンテが、大弓を武器として召喚するルナリェナに攻撃をしかけたが、ルナリェナは己の強い能力(ちから)を抑えた姿である長い黒髪を乱してルーナクレシエンテの攻撃をギリギリでかわす。


「私はルーナみたいに強くないわ!それに接近戦はルーナの方が…くっぅ」


だが、双子でありながら得意不得意は分かれてしまったらしい。距離を取ったルナリェナが大弓を構えるひまを与えず、ルーナクレシエンテは能力を抑えた今のライトブルーの瞳に自信を映し、強い力を抑えて自分と同じ色になったルナリェナの茶色の瞳に映る敗北の色を見て容赦なく5連撃を叩き込んだ。


「もう、手加減してよ。痛いわルーナ!!」


「いやよ。リェナに負けたくないもの」


地面に座り込んだルナリェナにルーナクレシエンテが手を差し出し、その差し出された手に自分の手をのせてルナリェナは不満そうにして立ち上がる。

そして、2人はまるで魔法の鏡でも見ているかのようなお互いの顔を見て笑った。


「ルーナ、次は的当てをしましょう!」


「そうね…止まっている的ならしてあげてもいいわよ」


次はルナリェナが自分の得意分野の稽古を始めようとするが、ルーナクレシエンテは負けたくないから意地悪を言った。

これはいつものことだ。華救夜から月の一族として生まれた時からお互いの違うところばかり目についたのに、ここだけは同じだった。


「もう、ルーナ!」


意地悪言わないで!!と、ルナリェナが言うと、双子の姉であるルーナクレシエンテの腕をつかんで的当てをするためにまた奥にある射撃場へと向かったのだった。




射撃場でルーナクレシエンテとルナリェナの的当ての勝敗がつこうとしていた頃、射撃場の出入り口の方から誰かが走ってくる音が聞こえた。


「ルーナ…」


「分かってるわ、リェナ」


不規則に動き回る的を矢で撃ち落としながら、ルナリェナは双剣を盾にして追尾型の的をかわすルーナクレシエンテに目を向けた。

結局、射撃ではなく双剣を召喚して跳び跳ねて的を切り落としているルーナクレシエンテはルナリェナの側に着地すると稽古をやめてちょうど射撃場に息をきらせて来た者に視線を向けた。


「ルーナ!リェナ!よかった、ここにいたのか…」


彼女達を呼ぶ彼は同じく月夜の神である華救夜から先に産み落とされた2つ歳上の兄であり、月の一族として強い能力(ちから)を持つルーナクレシエンテとルナリェナの“可愛いお願い”という名のお世話係もなぜかしている深都だ。

彼が呼びに来たということは、地球星での戦いに何かあったか、もうそろそろ夜戦の準備の時間かのどちらかだろう。

深都はアース皇国との戦いでは前線に出ることは少なく、後ろで作戦の指揮をとる参謀を主にしている。


「どうかしたの?海上での戦いに何かあったの?」


ルーナクレシエンテが聞けば、深都は息をととのえながら答えた。

ルナリェナも静かに言葉の続きを待った。


地球広海(アースこうかい)の港に、あの魔力量からして皇子2人が現れて前線が大幅に押し返されている」


「2人の皇子?それは誰なの?」


「無影の雷皇ではないのよね…」


ルナリェナが誰だか見当がつかないという顔をして聞いた。ルーナクレシエンテも2人と聞いて困惑の色を隠せずにいる。


「そうだ。無影の雷皇の弟皇子だと思う」


「無影の雷皇だけでも正体がつかめなくてやっかいなのに、2人も出てくるなんて!」


「幸いもう日が落ち始める時間だ。あと2時間ほど持ちこたえれば太陽神(ソル・ディオス)の加護も遠退く」


深都がそう言うと少し安心したようにルーナクレシエンテとルナリェナの顔から緊張がとける。

3人は顔を見合わせ頷くと、射撃場を出て行った。夜戦は月の一族の独壇場となるのだから、昼間みたいに苦戦も負けも私達は知らない。






半月の都、月の一族の産みの親である華救夜が宿る大樹の前にルーナクレシエンテ達は来ていた。ここから宇宙空間を通って地球星に行くには個人の霊力だけでは難しいため華救夜の神力(ちから)が必要になる。


「これからだと着くのは夕方くらいよね。私達が勝ちに行くわよ」


ルーナクレシエンテが自信ありげにそう言えば、ルナリェナはクスリと笑って答えた。


「それもいつものことじゃない。昼間はアース皇国が優勢で、夜は私達が前線を押し戻すだけ…」


華救夜の宿る大樹に近付き、3人は手を当ててその大樹に宿る華救夜の神力(ちから)を借りる。


「そのバランスが崩れれば、決着はすぐについたはずの戦争だ」


深都も複雑そうな悲しい顔をして言う。

お互いを憎み合っているはずなのに、まるでその理由を現代(いま)月の一族(わたしたち)は知らない。仲間を殺されるから、私達も敵を殺すだけ…それの繰り返し。

アース皇国の人達は、その理由をちゃんと理解して戦っているのだろうか。


「行くぞ、2人とも」


華救夜から借りた神力(ちから)を元に、宇宙空間を移動する術の準備をしながら地球星へと近付く。

深都の合図で飛行術式を展開し、今回の戦場である地球公海の海上に浮く本陣へと向かった。

*ルーナクレシエンテとルナリェナは、強い能力を抑えると瞳と髪の色がお互いの色に変わります。


 ルーナクレシエンテ

黒髪・茶色の瞳→金髪・ライトブルーの瞳

 ルナリェナ

金髪・ライトブルーの瞳→黒髪・茶色の瞳

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