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第一話 捕らわれた悪夢

リェナと希の章です

私は真っ暗な暗闇の中の何処かを歩いていた気がする。


「ねえ、ルーナ?どこなの?意地悪しないで出てきて…」


ここは、月の一族の産みの親である華救夜の住まう半月。

彼の神が宿る大樹が少し遠くに見える、いつも薄暗いこの場所。綺麗に加工した四角い石を3、4段重ねた石造りの墓石がたくさん並んでいる。物によっては1番上の石に少し角が丸みを持たせた物もある。

ここは、月の一族の墓地地帯である。


「ルーナ!!」


ここの空気は何故かいつも冷たくひんやりとしている。この下に眠る彼らの願い(こえ)はきこえない。

何も言ってくれない兄姉(きょうだい)達は、産まれたときからとても怖いと思っていたの。


「ルーナ、クレシエンテ…?」


見たことのない、今まで無かった場所にある真新しい墓石…そこには自分の双子(片割れ)の名前が彫られているようだった。


「え、どういうこと…?」


訳が分からず、私は目の前のルーナクレシエンテの名が彫られた墓石に手を伸ばした…。






「ルーナ!!」


目を開けた瞬間、いきなり認識した光が眩しい。気が付けば、ここは自分とルーナクレシエンテの部屋。どうやら私は、天井に手を伸ばしながら飛び起きたらしい。

隣に目を向けても、いつもいるはずの片割れ(ルーナ)の姿はどこにも無い…。


「リェナ?起きたのか?」


部屋の外の廊下から、私を心配する深都の声が聞こえた。少しすると襖が開いて深都が部屋の中に入ってくる。

それと同時に、弾けたように脳内に映し出される、ルーナクレシエンテが深紅の炎皇に負けて倒れた瞬間…その時、私は何もできなかった後悔だけを思い出した。


「ねえ、ルーナは!?ルーナはどこなの!?」


とてもとても怖いの。私は立ち上がって深都の服を力任せに掴んでそればかりを聞く。

どうしても深都に“大丈夫だよ”って、ちゃんと助けたと言って欲しい…自分でも、どうにもできないくらい不安でしかたないの。


「リェナ落ち着いて…」


深都がとても頼りになる兄のように優しく、頭を撫でながら声をかけてくれる。深都の手に、少しだけ安心できる私がいるの。

でも、その声色の中に自分を慰めてくれる想(・)い(・)以外が混ざっていることに気付かないほど、私は“月の一族”として劣ってはいないと思う。


「否定は…してくれないの?」


私がそう深都に問えば、複雑な色を混ぜた、悔しそうな…いつもと違って頼りなさそうな深都の顔が目の前にある。


ーーーああ、私は深都(兄)を困らせている。


「ルーナは…?」


深都の顔が見えにくくなっていく、視界が歪む。私の頬を何かが伝い落ちていく。

ルーナクレシエンテがどうなったのか、双子として月夜の神である華救夜に産み落とされたからなのか妙に解るのに、どうしても聞いてしまう自分がどうしようもないと思う。


「ちゃんと話すから、まずは座って」


深都にそう言われ、私は頷いてから彼の左手を掴んで布団の上に移動して座る。深都は畳の上にそのまま胡座をかいて座ったため水色のクッションを渡したが、私が掴んでいない方の手で“要らない”と言われてしまった。


「リェナ、俺はお前に謝らないといけない」


深都の瞳が真っ直ぐに私を見る。すごく真剣で、これから深都に言われることに心の中で聞きたくないと怖がっている自分を押し隠す。

それを読み取ったのか、顔に出ていたのか、深都は私に優しく微笑んでから話してくれた。


「まず、リェナが倒れた戦いから話すと…」


深都が先に話したのは、あの時の戦闘の結果。そして、“ルーナのことを任せて”と言った深都はそれを果たせなかったこと…それどころか、蛍が無影の雷皇の攻撃を受けてひどいケガをしてしまったらしい…蛍は、大丈夫かしら。

それに、ルーナクレシエンテは、やっぱりアース皇国(敵)に捕らわれてしまった。


「蛍は無影の雷皇の攻撃を受けて2日寝込んだけど、もう平気だよ」


深都に私の考えていることはお見通しらしい。蛍が無影の雷皇の攻撃を受けてケガをしたと聞いて心配だったけれど、もう大丈夫みたいで良かったと思う。

それにしても、あの蛍が2日も寝込んだなんて…どれだけひどいケガだったのだろう。あれ、それじゃあ私はどれだけの時間、ここで寝ていたのだろうか…。


「4日くらいかな。霊力の回復に時間がかかっていたからね」


また深都に、私が言葉にして聞くよりも早く答えられてしまった。本当にこの深都(兄)には敵わないと思うわ。

深都が私の頭を優しく撫でてくれる…いつもはしないのに、こういう時だけ深都は私を子供扱いするの。


「ルーナは生きてる…だから、一緒に助けてほしいの」


私がそう言えば、深都は“分かっている”と頷き、ルーナクレシエンテを助けるために皇都の諜報部隊に情報を集めさせていると言った。

そして私にも、捕虜にした疾風の氷皇の尋問をして欲しいということだった。

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