きこえる願い事は…
私達が生きる世界は、とてもすごく、寂しくてかなしい。争いばかりの世界。
私達月の一族と地球星のアース皇国に生きる地球人達はもうずっと、数えられないくらい大昔から争い続けている。
いつまでも誰かを憎み、疑い、そして仲間を守るために、生きるために敵と命をかけて戦っているのだから。
でも、あなた達となら…もしかしたら“幸せ”や“優しい気持ち”を感じられるかもしれない。
あたたかい世界に生きる未来が欲しい。
地球星の衛星である3つの月。その中の1つ、満月の都に建つ和城の屋根の上から地球星を見下ろすのは月の一族の産みの親である華救夜の娘である双子。ルーナクレシエンテとルナリェナである。
彼女達は月の一族の中でも強い能力を持ち、黒と金色という真逆の色を持って生まれた。
「ねぇ、リェナ…」
ウェーブのかかったロングの黒い髪と黒い瞳を持つルーナクレシエンテが、くせがかったロングの金髪とライトブルーの瞳を持つルナリェナにかなしそうな色を映した目で問うた。
「私にも、ルーナと同じ声がきこえるわ」
言葉でなくとも、彼女達はお互いを理解できる。そのためルーナクレシエンテからの問いを受け止めたルナリェナは、あえて言葉でそれに答えた。
この地球星には、争いから生まれるかなしい願いばかりがこの月には届く。人間の願いの想いを糧として生きる月の一族に…。
「どうしてこの世界は、こんなにも…」
「さびしくて悲しいの?」
ルーナクレシエンテが声にしなかった想いを、ルナリェナはそれに続けるように声にした。
そして2人は、静かにまた地球星を見詰めた。
ーーーああ、どうして私達は強い霊力を持って生まれ、戦うのだろう…