表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

短編

ひつじの晩餐

作者: 梅桃

 今日も子どもに引っ張りだこだし。

 っていうか勝手にうろうろしてるだけだし。

 忙しい忙しい。

 ほら、また呼ばれてるし。

 夜の呪文。


 ひぃ~つじが1匹、ひぃ~つじが2匹…。



 だけど、あんまし意味ないと思うし。


「あー。どこまで数えたか分かんなくなっちゃったあ……」


 ね?

 そんでまた始めから数え直しだし。

 余計、寝れなくなるし。始めから数えなきゃいいし。


 つまんないし。

 面白くないし。

 あ。

 逆にこっちから呼んじゃえばいいかも。


 ──ねぇ君──


 いや、そっちのおっきい人じゃないし……。

 なんで おっきい人が気付いたのか分かんないし……。

 おっきい人と遊んでも 楽しくないし。

 おっきい人は現実的だし。


「えーっ。ここどこっ!?」


 夢の中だし?


「夢の中……?あいたたた…っ」


 自分のホッペつまんでるし。痛いに決まってるし。

 で、君の名前を知らないし。


「私? 瑠璃って言うのよ」


 瑠璃の人は、なんか動揺してるし。

 夢なのに変な人だし。


「夢? にしては現実的ねぇ」


 そりゃそうだし。夢の中だけど現実だし。


「分かるような分からないような」


 だから子どもの方が良かったし。

 疑わずに遊んでくれるし。


「そう言えば、ひつじ君はなに食べてるの?」


 急に話変わるし。

 夢を食べてるし。見たけど覚えてない夢は、大抵ひつじ達が食べてるし。


「そうなのっ?」


 そう。ねぇ、夢食べさせて欲しいし。記憶でもいいし。

 あ、でも食べたら忘れちゃうし。ひつじを呼んだ報酬の代わりだし。


 ──でも今日はひつじが呼んだなんて内緒だし。


「食べたら、忘れちゃうんだよね」


 まぁ思い出せそうで思い出せない感じだし。


「じゃあ、食べて欲しいんだけど」


 後悔しない? あとで返せって言われても返せないし。


「それでもいい。ちょっとでも忘れていられるんなら」


 じゃあ食べるし。食べて欲しいのはどんな事?


「虐められっこだった頃の事」


 お腹が太るなら何でもいいし。良くないけど……。

 いただきまーす。


 ……。


 ん? おかしいし。

 まぁ、いっかだし。

 頑張ってだし。



 あー何かすっきりした気分。何でだろう。

 未来が明るい感じだわ。

 兄貴の子どもを保育園に送って、仕事。

 自分の子じゃないのに、なんで面倒見なきゃいけないんだか。

 あぁ、面倒臭いわ。


「おはよう。今日はちゃんと仕事してよ?」


 声を掛けたら、新人の癖にキッと睨んでくる。

 何? 先輩に向かってその目は。


「ちょっと瑠璃さん。あなた、自分のしでかした事を他人のせいにして。どういう事かしら? しかも新人のせいにして!」


 えっ? だって自分の仕事に余計な事をしたのはこの子よ!? 冗談じゃないわ!


「指導するのは先輩であるあなたの仕事でしょう! 自分は楽をしたいからって、入ったばかりの子にこんな難しい仕事押しつけるなんて!」


 お局に話したわね!


「責任はちゃんと自分でとりなさい!」


──知ってる? あの先輩、チョー意地が悪いの。

──知ってる知ってる! あの子もかわいそうにね!

──いやだなぁ。一緒の職場。

──シカトしちゃおっか。

──というか消えてくれないかなー。


 そんな事があってから、私は孤立無援。

 誰にも相手にされなくなった。

 すがすがしい気分は何だったわけ!?

 わけ分かんない! 腹立たしいわね!



 虐められっこじゃなくて、虐めてたの瑠璃の人だし。

 ヤキモチさんだし、ワガママだし。

 虐められた振りしてただけだし。

 いつの間にか本当に虐められたって思い込んじゃったし。

 自分関係ないって思い込んじゃってるし。


 知ーらない。

 自分が変わらないと、ずっとずっと現実の悪夢が続くよ。


 あ。一つ言い忘れてた事があったし。

 嘘食べちゃったら、反動来るよって。


 良い嘘なら良い方に。悪い嘘なら悪い方にたーくさん。


 まぁいっか。どうせ食べちゃったら返せないし。

 食べたら返せないって言ったし。

 ひつじ、悪くないよね。


 ごちそうさま。


 あぁでも、美味しくなかったなぁ。

 今晩は、美味しい夢にありつけるといいなぁ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ