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アナザーフェイス③

今目の前にいるのはリリアではなく、澪薗だ。


「あ、あの…」

「お、おう。」

「その……全部リリアが説明した通りなのでーーーーー!!」


そう言い残して澪薗は一目散に走って逃げて行ってしまった。


「いや…まだ聞きたいことあるんですけど…」


そうつぶやき、透はいつも通り一人で家に帰った。


次の日、透はリリアからの情報を基に考えを巡らせていた。

いや。言ってしまえば、透にとって情報など興味がなかった。

なぜなら、自分よりもはるかに強い奴らと戦えるだけで透には十分だからだ。


そんなことを考えていると家のインターホンが鳴った。


「お兄ちゃんお客さんだよーー。」

「おう。今行く。」


客が来るとは珍しいなと思いながら、玄関に向かうと、透は予期せぬ客人を目にした。

そこに立っていたのは澪薗だった。


「よ、よう。」

「き、昨日はどうも…」


そう言って澪薗は小さくお辞儀をした。


「あのーどちら様ですか?」

「申し訳ございません。自己紹介が遅れました。田倉澪薗と申します。

 透様には先日お世話になりました。」


そう言い再び一礼。


「透…様?どういうことお兄ちゃん?」

「あ、ああ話せば長いんだ。悪いけど茉莉、お茶を入れてきてくれないか?」

「うん。分かった。」


透は秘技「ごまかす」を覚えた。


「あ、俺の部屋でいいか?」


そう聞くと、澪薗は無言のまま頷いた。


部屋でお互いが何も言わず正座をしていると、沈黙を断つように茉莉がお菓子とお茶を持ってきた。


(茉莉。ナイスタイミングだ。)


「ご、ごゆっくりどうぞ。」


そう言って茉莉はすぐに一階へ下りて行ってしまった。


そして誰もいなくなった。


もちろん冗談である。

そんなしょうもないことを考えていると、澪薗が口を開いた。


「その……昨日は勝手に帰宅してしまい、申し訳ありませんでした。」


そう言って澪薗は正座のまま頭を床につけ、土下座をした。


「え、いやそんなの全然気にしてねーよ。いいから頭をあげてくれ。」


透は焦って、土下座を辞めさせた。


「私を許して下さるのですか?」

「いや。許すも何も澪薗は悪いことなんかしてないじゃないか。」

「いえ。私だけではなく、リリアも透様に失礼極まりないことをしてしまいました。

 せめて、私の方からお詫びを!!」


そう言い、再び土下座。


「いや。だからもういいってば。俺は澪薗もリリアも全く恨んでなんかないから。」

「透様がそこまで言って下さるのでしたら、その言葉有難く頂戴いたします…」

「ああ。そうしてくれ。それで、今日はどんな用件で来たんだ?」


澪薗の表情が先程までの弱気なものから、急に真剣なものに切り替わった。


「実は透様、本日は大事な話をするためにお伺いいたしました。」

「というと?」

「そ、その…まず確認なのですが、昨日リリアがお話しした通り、透様には世界中のアナザーフェイスと戦っていただきたいのですが、それで宜しいでしょうか?」


澪薗は少し恥ずかし気に言った。


「そーだなー。戦いたい気持ちがある反面、まだ分からないことがたくさんあって不安な気持ちもある。だから、とりあえず戦っていく中で神に挑むかを決めるつもりなんだが、それでいいか?」

「もちろんです。そこまで強制するようなことはしません。」

「そうか。ありがとう。」

「お礼を言うのはこちらの方です。私に協力してくださって本当に感謝しています。」


そう言って深々とお辞儀をした。


「ああ。とりあえずこれから頑張っていこうぜ。」


「あのー…その…活動するにあたって一つ問題がありまして…」

「どんな問題だ?」

「実は、アナザーフェイスとの戦いでは必ずクラン同士の戦いでなければならないのです。そして、クランは5人で構成しなければなりません。」

「お、おいそれってまさか…」

「はい。そのまさかです。私達はあと3人どうにかしてメンバーを集めなければなりません。そこで、透様に残りのメンバーを集めていただきたいのです。」


これを聞いた時、透の頭の中では一つの言葉が浮かび上がった。


GAME OVER


「おいおい待てよ。ただでさえ友達の少ない俺にどうやってクランメンバーを集めろっていうんだよ。」

「フフ、そのご様子なら問題はなさそうですね。」

「いやいや問題大ありだろこれは。」


澪薗がクスクスと笑う。


「何が面白いんだ?」

「いえ。失礼しました。ご友人が少ないということは、いないわけではないということ

 を裏付けているなと思いまして、つい。」

「あ……」

「やはり、当てがないわけではなさそうですね。フフ。」

「澪薗お前、無駄に鋭いって言われたことないか?」

「鋭くて当たり前ではないですか。ゲームをするにおいて、細かいことを見逃しているようではいけませんからね。」

「あ、ああ。そうだな…」


透は苦笑した。

ゲームで観察力が必須だということは透が一番よく分かっている。


「では、参りましょうか。」

「どこへだ?」

「決まっているではありませんか。メンバーの勧誘ですよ。」


こっちの都合はそっちのけで、勧誘をさせられることになってしまった透は今、絶望の中をさまよっている。


「早く行きますよ。透様。」


そう言って、澪薗が微笑みながら透の手を引く。

透はこの瞬間がまるでスローモーションのように感じた。

初めて異性に手を握られ、こんなにも美しく自分に笑いかけている。それはあまりにも一瞬の出来事だったが、透にとっては十分すぎるほどの素敵なひと時であった。


「お、おいちょっと待てよ。」

「どうかいたしましたか?」

「あ、その…いや、何でもない。」


「そうですか。では気を取り直して参りましょう。」


澪薗は透の様子を不思議に思ったが、そこまで気にしないことにした。


透は茉莉に外に出ると言い、澪薗と家を出た。


「それで透様、まずはどなたを引き入れるつもりなのですか。」

「そーだなー。とりあえず仲のいい鳥岡のつもりなんだが、どう思う。」

「どう思うかと聞かれましても、私はまだ学校の方々とはあまり知り合えていないので、どうにも言えないですね。」

「そうだよな。」


透は苦笑した。


「ですが透様が信じた方なら、私は問題無いと思います。」

「あまり高望みはしないでくれよ。あいつは確かにいい奴だが、少々頭のネジが狂ってるからな。」

「その点については問題ありません。」

「どうしてだ?」

「透様もなかなか頭のネジが狂っていらっしゃるからです。」


透は真顔でそう言ってくる澪薗がとても辛辣しんらつだと思った。


「まあ、否定はしないでおくよ。」


透は苦笑しながら言った。


「あ、着いたぞ。ここが鳥岡の家だ。」


透は慣れたように、凛生の家のインターホンを押す。


「どちら様でしょーか。」


凛生の間の抜けた声が聞こえた。


「俺だ。ちょっと時間あるか?」

「ああ。朝宮かーちょい待ちー。」


インターホンが切れ、数秒で凛生が家から出てきた。


「おっはよー。朝宮―。って、え!?澪薗ちゃん!?な、なんでこんなところに。」

「おはようございます。鳥岡様。透様からご噂は聞いております。」

「透…様?」


透は、なんで皆同じ反応するんだよと心の中で思った。


「そのー二人はどのようなご関係なんでしょうかー。」

「まあ。俺と澪薗は簡単に言えば、戦友だな。」

「戦…友…?」


「そのことに関して、鳥岡様にお話しがあります。」

「な、なんでしょうか!?」


透は、美少女を前にして動揺している凛生の姿を見て、ひそかに陰で笑っている。


「突然ですが、鳥岡様はゲームはいたしますか?」

「い、一応するっちゃするぞ。」

「得意ジャンルは何でしょうか?」

「え……秘密…」

「御願いします。とても大切なことなんです。」


澪薗の期待のまなざしに凛生が耐えられるはずもなく、凛生は白状した。


「ギャ、ギャルゲーだよ…」


凛生がそう言った瞬間、この世界の全ての時が止まったように感じた。

親友の透でさえ知らなかった事であった。


そして、澪薗は思いがけないことを言った。


「完璧です。是非私達のクランに入ってください。」

「「はい?」」


透と凛生が同時に反応した。


「クランってなんだ?」

「簡単に言えば、私達で協力してゲームの神を倒すのです。」

「お前らいい病院紹介してやろうか?」

「信じられないかもしれないが、澪薗の言っていることは本当だ。」

「いくら朝宮が言ってるからといっても、まだ信じがたいなー。」


「はあ。お前はもっと友達の言うことを信じろよな。澪薗。悪いが、リリアを出してくれないか?」

「しょうがないですね。これもクランのためです。」


そう言って、澪薗は目を閉じた。


更新が遅くなってしまい、本当に申し訳ありません。

これからもこの作品を読んでいただければ、嬉しいです。

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