表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/7

1. 逆さ虹の森での相談とコマドリのチッチ

誤記の修正をしました。

これは冬童話2019の企画内イベント設定を用いた物語です。


 あらゆる動物たちが、共通の言葉を発していた頃の古い話。


 深い森。それはどこにも他に通る道がないところ。


 その、まだ名がないある森で、長い間たくさんの雨が降り続き、それが大水おおみずとなって幾日いくにちも流れていた。この大水が地面や木々を飲み込んで、どこもかしこも水でひたされて、この世界が終わってしまうのかと思われるほどだった。


 森に住む動物たちは、この状態を嘆き悲しんだ。食べ物も乏しくなるし、ここから出て行くすべも場所もない。だけど、そうなる前に、黒くて重く垂れていた雨雲に切れ間が見えた。そして、久しぶりに、寝坊助顔のお日様が顔を出した。その優しい光が差す反対側の空に、それは目も見張るほどの、美しい虹が現れた。


 だけど何らかの加減で、そうなったのだろう。普通に、雨上がりで見るような、同心円の上半分ではなく下半分の虹が現れていた。さらに不思議なことに、そのU字型の逆さ虹が残像のように昼も夜もずっと現れていた。長い年月としつきった今も。


 ほら。見てごらん。逆さ虹が、この森のあの木の上に、その美しい姿をさらしているのがわかるよね?


 それでいつしか、この森のことを、“逆さ虹の森”と呼ぶようになっていた。


 そう。あの木の上の逆さ虹は、この森のシンボルとなる。そして、この森の空に逆さ虹がある限り、雨は適度に降って、あの大水を防いでくれているという話が、“逆さ虹の森”の動物たちの間に広まった。


「ああ。ずっとこのまま逆さ虹さんにいて欲しいわ」と、困ったような顔をして、いつも一緒にいる仲間に話を振る、コマドリのチッチ。「それには、プレゼントがいいよ」と、それがさも当然であるかのように、狐のコン太が、そつなく答える。


「そうね。プレゼントがいいわ。そうしたら、逆さ虹さんは、ずっと、いてくれるにちがいないわ」と、チッチがにっこりと笑い、とても嬉しそうに応じる。


「いいね。賛成、賛成」と、陽気にはやし立てる、リスのコノ。


「おう。俺っちも賛成だな」と、とても元気よく発言する、アライグマのランダ。「ああ。そうだね。逆さ虹さんにプレゼントをあげたら、きっと喜んでくれるよ」と、おずおずと追従ついしょうするようかのように答える、クマのペンタ。


「僕は、食べ物のプレゼントがいいと思うよ」と、当然のように自分の好みを提案する、ヘビのニョロ。「あら。それだったら、食べ物もいいけど、歌や楽器をかなでるのもいいと思うわよ」と、コマドリのチッチが、いたずらっぽく笑って返す。


「じゃあ。プレゼントと一緒に、パーティを開こうよ」と、小さな可愛い肢をぴょんぴょんと飛び上げながらはしゃぐ、リスのコノ。


「とてもいいね。パーティを開いて、たくさんの食べ物であふれさせようよ。そうしたら、おなか一杯、食べることができるから」と、しょくこだわる、ヘビのニョロ。


「パーティもいいわね。だけど、どうしたら、逆さ虹さんは来てくれるかしら?」と、はたまた、困ったような思案顔をする、コマドリのチッチ。


「なんなら、俺っちが、逆さ虹さんを、引っ張って、ここまで連れて来るか」と、自信たっぷりに、どんと胸を張る、アライグマのランダ。「そんなことをしたら、たぶん、逆さ虹さんは、怒って消えてしまうと思うよ」と、消え入りそうな声で、遠慮がちに反対をする、クマのペンタ。


 そうだ、そうだと、ペンタの小っちゃな声でもちゃんと聴いていて、ランダ以外の他の仲間は、彼の意見に同意する。


 アライグマのランダは、最初こそは不機嫌な顔をして、不貞腐ふてくされいた。だけど、他の仲間が、ランダにもお願いしたいことがいっぱいあるからと説得をしたので、ランダは次第に機嫌が良くなって、再び元気に仲間の内に入っていた。


 そう。逆さ虹さんを連れて来る。そんな重要なことを乱暴なアライグマのランダに任せる訳にはいかない。それで、逆さ虹さんが消えてしまったら、本末転倒になってしまう。


 それで、プレゼントすることを最初に提案をした、キツネのコン太に白羽の矢が立った。それに対して、お人好しのコン太は、仲間の中で、少しだけ年長でもあるので、反対をしなかった。


 それで、キツネのコン太が、逆さ虹さんをパーティに招待するために連れて来て、プレゼントを渡すことに決まった。


 もちろん、他のみんなは、手分けをして、逆さ虹さんを招待するためのパーティのセッティングやプレゼントの内容とかの準備をすることになっている。


 そんなこんなで、“逆さ虹の森”の動物たちは、おんぼろ橋のたもとで集まり、にぎやかに相談をしていた。


 あれから、それなりに年月が経っているので、あの大水の記憶が薄れつつある。その記憶をつなぎとめる、数少ない大水の名残なごりが、このおんぼろ橋だった。


 このおんぼろ橋の下を流れる川。この川は、魚が多く住んでいるので、食べ物に困らない。だけど、あの大水はこの川が氾濫はんらんしたのが原因だった。


 この川が氾濫する前は、ちゃんとした立派なつり橋だった。あの時、長い間たくさんの雨が降り続いた。そして、この川の水かさが増して勢いのある濁流となり、鉄砲水で、この橋も水につかってしまった。仕舞には、この川そのものが、大氾濫して周辺を襲う大水となった。それ以降、このつり橋は、おんぼろ橋となっている。


 だけど、この橋には、積極的な修復をほどこしていない。さらに、川を渡るのに不便がないように、他の場所に新たなつり橋をもうけてもある。そう。あの大水に対する記念碑的な役割を、このおんぼろ橋は、たくされていた。


 それで、大水のことを思い出した、コマドリのチッチ。彼女は、逆さ虹さんが消えたら、また大水が出で、森のみんなが困ると胸を痛めていた。コマドリの胸が赤いのは、そういったことに胸を痛める優しさが表出されたものだといわれている。チッチもご多分に漏れず、そのような心優しい心の持ち主だった。


 コマドリのチッチが、この“逆さ虹の森”を大水から守って欲しいという願いを込めたプレゼントを逆さ虹さんにあげましょうねと話をまとめた。そして、彼女が言い始めた今回の相談は、お開きとなった。


童話なので、小さな子供たちが読んでも大丈夫なものをと思って書きました。

この物語は、5-6話くらいの連載で完結する予定です。

こちらは、小説を書き始めてまだ間もない初心者です。多少辛口でも大丈夫です。感想をお待ちしております。

よろしくお願いします。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ