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悪役令嬢の中身

君のそばにいたいけど 1

作者: 茶トラ

「クロちゃん、いないーーー!!!」


うわーん、という盛大な泣き声とともにセレネは屋敷中を走り回っている。

事の起こりは数日前。

婚約者様の家で、愛犬が子供を産んだと子犬を見せてくれた。

コロコロとしたとても愛らしい子犬たちに見事に心を奪われたセレネ。

その中でも特に、少し巻き毛気味の真っ黒な毛並みに金色の瞳をした子犬を気に入り、離れなくなった。

テコでも子犬の前から動かなくなった、セレネに対して、婚約者様は苦笑しながらも、その子犬をセレネに委ねてくれたのだ。

「可愛がってあげてね。」

という言葉に対し、何度も何度もセレネは頷き、その言葉どおり、全力で可愛がった。

そう、全力で…。


─4歳児の全力は侮ってはいけなかったのだ。


それこそ、おはようからおやすみまで。

片時も離さず、子犬を可愛いがるセレネ。

手加減というものを知らないセレネ。


先に子犬がバテた。


何度も注意はしたのだ。

ギューっと抱きしめてはいけません。

子犬が嫌がったら離しなさい。

子犬はセレネより小さいのだから、触り過ぎてはいけません。

構い過ぎると疲れちゃって病気になっちゃいますよ、と。

それは、もう何度も何度も。


その度に頷いた。

ごめんなさいもした。

我慢するとも言った。


それでも、子犬をみると、振り切れてた。

このままでは、子犬が死ぬと思った。

危ないと感じた。


だから、私は。


セレネの隙を見て、子犬を婚約者様の元へと返したのだ。


後悔はしていない。

これで良かった。子犬の安全は保たれたのだ。

今は大泣きしてるけど、そのうちセレネも落ち着くはず。

セレネがもう少し大きくなって、手加減を覚えてから、また動物は与えればいい。

それまでの、我慢。

だから、いくらセレネが泣き叫ぼうとも…。


「クロちゃん、セレネの、クロちゃ…。」


大粒の涙をポロポロとこぼしながら、屋敷のすみや、小部屋など、子犬が紛れ込みそうなところを探し回るセレネ。


「クロちゃん、どこ?クロちゃん…。」


セレネには婚約者様のお家まで迎えに行きそうなので、内緒にしておこうかとも、思ったけど。

これでは、ずっと探し回りそうだから、説明して諦めさせないと。


「セレネ、あのね、クロちゃんは、クロちゃんのお母様のところへ帰ったの。」


「…え?」


「クロちゃんはね、まだ小さいでしょ。大きくなるまでクロちゃんはやっぱり、お母様のところで…。」


「…やだ。クロちゃんいないの、セレネ、やだ。やだー!」


私の説明の途中で、再びセレネは泣き叫んで部屋を出て行ってしまった。

あぁ、頭が痛い。どうやって、セレネに納得してして貰えばいいのだろう…。



※※※



「クロちゃん、クロちゃん…セレネのとこ、もどって、きて。クロちゃん…。」


姉にもうクロちゃんはいないと言われたが、なおも庭を探し回っていた。

ひょっとしたら、セレネに会いたくて、逃げ出してきているかもしれないという、希望をもって。


何度も姉に注意されて、わかってはいたのだ。

触り過ぎてはクロちゃんによくない。

セーブ出来ていない自覚はあった。

そして、その結果がこれだってことも、なんとなくだけど、わかっている。

たんに、セレネのワガママだって、わかっている。

だけど、だけど。

大好きなんだ。

クロちゃんのこと、大好きなんだ。


「クロちゃん…。」


花壇や木陰になっているところをひと通り見回した。

植え込みにも突進して、葉っぱがいっぱいついても、泥だらけなっても探した。

だけど、何処にもいない。

またも、大泣きしそうになるのを我慢して、最後の一廓を探そうとしていた時。


ガサガサっと音がした。


「クロちゃん!!」


音に反応し、勢いよく振り返ったセレネの目に飛び込んできたのは、1人の男の子だった。


少し癖のある真っ黒い髪。

褐色の肌に金色の瞳。

将来大きくなりそうな、年の割には手足が長い、10歳くらいの男の子。

その男の子が持つ色は、クロちゃんと全く同じで…。


「クロちゃん、セレネとおなじすがたになってもどって、きてくれたーー!!」


問答無用で初対面の男の子に勢いよく抱きつくセレネだった。

後半は近日中にアップ予定。

少し?前の近況報告に小話上げてます。

よろしければ、読んであげてください。



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― 新着の感想 ―
[一言] この人間のクロちゃん(?)、王族兄弟のライバルになりそうな予感がしますね。 続き楽しみにしています。
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