6話 修行前夜
━━━宿屋リルフ━━━
「喜ぶがいい、我自らお主に修行を付けてやろう」
ギルドから帰り宿に着いてすぐにベットの上に仁王立ちしそう言った。
「……いきなりですね」
「うむ、お主も、お主の中にいる奴も力の扱いが完璧ではない、故に危うい」
「それを制御するための修行?」
「そうじゃ、特にユキノは魔力が多いが扱いが雑だからな」
「?ユキノはフェルナの前では魔法を使ってないと思いますが?」
「何を言っておるのだ?奴は魔力で常に体を巡り守っておるぞ」
「え?そうなんですか?」
「無意識で魔力の制御をしているか…鍛えがいがありそうだ」
黒い笑みを浮かべ言う、最早魔王にすら見える。
しかし、空気の読めないフェルナのお腹がグゥーっと鳴った。
「まあ、腹ごしらえが先だな」
何事もなかったかのように言い放つ。
「…そうですね」
「今日通った道に美味しそうなのがあったのだ、そこに連れて行け」
「宿でも飯は取ってあるんですけど…」
「なんと!至れり尽くせりでわないか」
「まあ、口に合うかは分かりませんけどね」
「構わぬ、千年ぶりの食事だ、不味くても食えれば良い」
数分がたち、食事が運ばれて来た、
「どうぞ、野菜のスープとパン、少量ですが肉も付けております」
メニューは、キャロッテとポテンを煮てハーブで香りを調えたこちらではメジャーな料理、パンは少し固めだがスープに付けて食べると美味、ハーブで生臭さを消しペップで味を付け、焼いたワイルドボアの肉。
「おー、これ程までに料理は進化したのか、いい匂いだ」
目を輝かせ、今にも涎を垂らしそうになりながら言った、
一口スープを口に入れると、野菜の甘味が口全体に広がる。
「美味いな、特にこのハーブとやら、たしか、霊山の近くで生えるロリアという草の葉か」
「そうなんですか?ここらで採れた物だと聞いてますが」
「ん?あぁ、そういうことか、ここが霊山の跡地か」
「跡地?」
「千年前の魔王との戦いで更地になった所の1つだな」
会話が終わり、食事に集中し始めた。
(なあ、修行って何やるんだろうな)
知らん、戦闘系だろうな
(んー、まあ、考えても仕方ないか)
そうだな
「さて、修行内容じゃが、お主には精霊の森で私と同じ龍人に修行を付けてもらえ、精々死ぬなよ、本当に死ぬなよ?」
食べ終わり、口を拭き、心做しか”本当”を強調してして言った
「…そんなに危険なんですか?」
「ああ、奴は馬鹿だからな力加減とか出来んのだ」
「……怖いなぁ」
消え入りそうな声で呟く。
「そして、ユキノは我と模擬戦だ、模擬と言っても手加減はしないからな」
(勘弁してくれぇ)
「ん?別々ですか?」
「ああ、精霊の森は肉体無しで行けるから別行動ができるのだ」
「よく分かんないな」
「まあ、細かい事はどうでもいい、兎に角精霊の森に行くのだ」
「分かりましたよ、で?何処にあるんですか?」
「南に…一時間位だな」
「…随分と近いですね」
「そうじゃな、忘れておった、お主の戦職業は何じゃ?」
「俺は”剣士”ですね」
「無難じゃな、ユキノは何だ?」
「分かんないですね」
フェルナは顎に手を当て考えている
「しょうがないのお、ユキノ、こちらに出てこい」
”所有権の変更を確認”
「いきなり何ですか?」
「何がいきなりじゃ、さっきから会話は聞いておったろ?」
「バレてましたか」
「今からお主の戦職業を見る、我の魔眼でな」
「所で戦職業って何です?」
「たしか、仲間に前衛後衛どちらが向いてるかを知る為のものじゃったか」
「へー」
フェルナの目に魔法陣が浮かび、全てを見通されたような感覚になる。
「お主は…ほお、召喚士か…」
「それはどっちですか?」
「……お主次第だな」
戦職業は9種類あり、召喚士は特殊職と呼ばれ勇者、死霊使いに並ぶ珍しい職業、
適正者が少なくあまり前例の無い不遇職。
「そういえば、フェルナの職業は何です?」
「我か?我は無いぞ?あくまで人間の内での物だからな」
「へー」
「…よし、我は2、3日出掛けてくる、その間は適当にしてろ」
「何処に行くんです?」
「ちと国王に会いにな、来るか?いや、来い」
”所有権の変更を確認”
「え?いきなり行っていいところじゃ無いですよ?」
「知っておる、関係無いがな、それに預けてあった武器を取りに行かんとな、いいからユキノに変われ」
”所有権の変更を確認”
「………俺が行くんですかい?」
「ああ、勇者を知らぬ王などなんの価値もない」
何の迷いも無く言い放つ。
「それに変わっていれば…滅ぼさんといけないからな」
あまりにも真剣な表情で、何も言えなかった。
「……それは…何でですか?」
沈黙を破れたのは数分たってからだった。
「それが…父上との約束だからだ」
「…」
「まあ、変わるってのは、そうそうないから、その心配は無いな」
「そう、ですか」
「その前に精霊の森によっていく」
「変わった方がいいですか?」
「どちらでもいい、が、とりあえずはカルミナだな」
「分かりました」
”所有権の変更を確認”
「荷物はどうするんです?」
「持って行け」
「期間はどのくらいですか?」
「一ヶ月くらいだ」
部屋を空け、チェックアウトを済ませ、ブエサ大森林に向かう、
森に着きすぐに、フェルナは地面を掘り魔方陣を描く。
魔法陣が光り、フェルナの服装が真紅のゴシックドレスから、紅色のドレスアーマーへと変わる。
それに共鳴するかのように今までは無かった鱗状の痣が頬にでる、そして隠れていた四枚の羽を広げ、
「掴まれ、行くぞ」
「…どこに?」
「?精霊の森に決まっておろう」
「違う、どこに捕まればいいんですか?」
「…そうじゃったな、よし抱いてやる」
有無を言わせずカルミナをお姫様抱っこし、羽根を羽ばたかせた、
上空から見える美しい景色に見とれたのも束の間、景色が目まぐるしく変わっていく。
森から平原、山を越え、
一時間経ってようやく景色が安定する。
「着いたぞ」
そこには幹の太さが2m位の大木で形成された森があった。
「…ここが精霊の森ですか…」
「そうじゃ、ここの木は全てが天聖叢樹で出来ておる」
「それに、なんかマナの濃度が、濃くありませんか?」
カルミナの顔が青くなっている。
「ああ、濃いぞ、なにせここは樹木龍ブラットが加護を与えた地だからな」
その言葉を最後にカルミナの意識が失われる。
戦職業 9種類だよ
”前衛職”
剣士
拳士
聖騎士
”後衛職”
付与士
魔法使い
僧侶
”特殊職”
勇者
召喚士
死霊使い




