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46話 樹木龍と木龍人と火龍人

 

 ━━━精霊の森━━━


「大丈夫だったか!?」


 緑色の髪をした女性ウィンディがカルミナに声をかけ、


「ああ、大丈夫だ」


 カルミナがそう答える。


「じゃあ、手にする資格を得たんだな」

「ああ、この通りな」


 カルミナは右手の黄金の剣を見せながらそう言った。


「ほう、それがカリバーンか」

「そうだ」

「それにしてもお前髪が随分と伸びたな、これは…切るか?」


 その言葉でカルミナは自分の髪に手を当てる。

 腰あたりまで手を伸ばし、髪が伸びている事を確信する、伸びた銀髪は根元に行くほど緑になっている。


「なんでだ!?」


 髪色の変化に動揺するカルミナを無視するかのように、ウィンディは、


「多分魔力のせいだろうな、お前が寝ている間に加護を与えておいたから」


 と、さも当然の様に言い放つ。


「そうか…ありがとな」

「…思ってた反応と違ったな」


 ウィンディは頬を掻き照れながらそう言った。


「そろそろ約束の一ヶ月が経つ、お前はどうする?一人で行くか?」

「そうだな…一緒に来るか?」

「ばーか、こっちが聞いてんだ、まっ、あたしは着いてってもいいがな」



 カルミナ、ウィンディ、クイーナ、シルフィア、計4人の中異変に気付いたのはウィンディ、続けてカルミナが。


 異変、と言うより、脅威が近付いていることに気付く。

 大量の龍、それも統率の取れた、まるで軍隊の様な、数にして約150の鎧龍(アーマードラゴン)


「やべーぞ、カルミナ!クイーナとシルフィアを連れて逃げろ!」


 冷や汗をかいたウィンディがそう叫ぶ。


「お前一人でどうにかなる数じゃねえ、俺も残る!」

「違う!こんだけの数の龍が来たら目覚めちまう!」

「は!?」

「いいから逃げろ!」


 地面が動き、木々は倒れ、凶星は目覚める。

 森に木霊する呻き声が地獄を見せる。


「ウィンディ!どういう事だ?これは?」


 凶星はウィンディに問いかける。

 凶星の名は『樹木龍 ブラット』体長1000メートルを超える巨大な龍。

 その姿は蛇の様に長く、エメラルドグリーンの鱗に身を包まれている。


「どうもこうも見た通りですよ?」

「…俺を目覚めさせておいて、見た通りです、だと?ふざけているのか?」


 怒るブラットに対し、上空を飛んでいる龍達は困惑している。

 主であるセシルから下された命令は「邪魔な森を消して来い」それだけだった。

 それなのに、これはどういう事だ?森を消すだけのはずが自分達が束になっても勝てないであろう龍神種が現れたでは無いか。

 撤退すべきか?だが、主の命令は絶対だ。


 なまじ調教されているが故判断が鈍る、その結果数を半数にまで減らす事となる。


「羽虫がぁ、うっせーんだよッ」


 ブラットの尾が弧を描き龍を襲う。

 その尾は雲を裂き、大地を抉る。

 一撃で、いや、ブラットにとっては攻撃ですら無いのかもしれない、

 その行為で150は居た龍は60にまで減らされる。


 龍達の心は一つだった、

 逃げなければ、このままでは殺される。


 ちりじりになり逃げていく龍達、だが遅すぎた。


 ウィンディは話しながら、森に張っていた結界を無くし、上空に居る龍を囲む様に貼り直していた。



 ”叢樹ノ縛リ”


 その結界は対象を選び出入りの自由を制限する魔法、無理やり出ようとすれば体体魂を引き抜かれる。


「ギャァァァァ」


 恐怖から龍は叫び、ブラットが咆哮する。

 ブラットは高濃度の魔力をブレスとして放ち、羽虫《鎧龍》を消し飛ばす、ギリギリでよけれた龍も致命傷に至っている。

 更にブラットは追撃を加えようとするが、ウィンディに止められる。


「これ以上やると森が壊れる、あとはあたしがやる」


 ”宝龍剣 グレイプニル”に魔力を流し残りの龍目掛けて振る、魔力が光る刃となり龍達を切り裂く。

 鎧龍の中でも特出して頑丈な上位個体、黒鎧龍が一匹のみが生き残った。


 そして音速を超え飛び去った。


 だが、一瞬で炭になり落ちる。

 攻撃の主、フェルナは地面に降り立つなりそう言った。


「カルミナを迎えに来た」


 ウィンディにそう声をかけ


「カルミナ、随分と強くなったな」


 フェルナはカルミナに微笑んだ。


「ありがとう、ユキノはどうだ?」

「ユキノは強くなったぞ、我とタメを張れる程度にはな」


 フェルナは自慢げに雪乃の事を話す。

 親が子の成長を話すかのような、柔らかい笑みを浮かべて。


 ブラットとウィンディは別の話をしている。


「なぜノヴァの娘がいる?」

「カルミナを連れてきたのは奴だ」


 ブラットは体を縮め、2m越えの大男になっている。

 鱗で包まれた体に毛皮を纏っている。


「そうか、奴から来たのなら問題は無い、が、カルミナとは何者だ?」

「あいつが連れてきた、勇者の片割れだ」

「加護は付けたのか?」

「付けた」

「そうか、なら俺も手助けをしてやろう」

「何をする気だ!?」

「スキルを与える」


 ブラットはおもむろにカルミナの後ろに立ち、頭に右手を乗せる。


「耐えろよ」


 刹那カルミナの意識が飛ぶ。

 崩れ落ちる体をブラットが左手一本で支える。


「なっ?!」


 フェルナは動揺を隠せなかった。

 無理もない、話している最中にいきなり後ろからカルミナを気絶させられたのだ。


(あ、あったけー、なんだこれ?)

『聞こえているか?』

(は!?)

『聞こえてるようだな』

(あんた、誰だ?)

『俺はブラットだ、龍神種の”樹木龍 ブラット”とも言われてるがな』

(な!?)

『面白そうだからお前にスキルをくれてやろう、そうだな、”樹龍ノ戯”なんてのはどうだ?』

(どんなスキルなんだ?)

『簡単に言うなら、そうだな、”思考速度上昇A” ”大地の魔力” ”闘龍陣”ってところだな』

(最初の二つはまだ分かる、最後のはなんだ?)

『あ〜、これは、俺の分身体を呼び出せるスキルだ、お前は間接的に俺の加護を受けてるから、そうだな、81分の1位の強さの俺を呼び出せる、まあ、時間稼ぎ程度にはなるんじゃねえか?』

(そんな貴重なものを、ありがとう)

『気にすんな、俺はこのスキルを通してお前の事を見てられるから、暇つぶし程度に授けただけだ』

(それでもだ、ありがとう)

『お前、中々頑固だな』

(そうかな?ウィンディと1ヶ月居たからなふてぶてしくはなったかもな)

『ちげえねえ』


 声からでも分かるほどブラットは笑っている。


 少し談笑をした後、カルミナに意識が戻る。


「大丈夫か?」

「安心しな、こいつはこんなんじゃ死なねえよ」


 ウィンディの問いにはブラットが答える。

 まるで自分が育てたかのように。

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