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36話 迷宮 69階層~

 

 ━━━フェレノア地下迷宮 69階層━━━


「ハスディア様、ただいま戻りました」


 ハスディアの前に跪く、三人の悪魔、ガリル ペルスェポネ エンフィールド。


「御苦労、ガリルはメリザの護衛、エンフィールドはソーンズを補助しろ、ペルスェポネお前は下にいる奴の相手をしてやれ」

「「「ハッ」」」


 ハスディアは三人に命ずる。



 雪乃は目を覚ます。


「おはよう、どうかしら? 目覚めは」

「……最悪だな」


 目覚めた雪乃にメリザが問い掛ける、答えは、最悪。

 理由は体の節々が発する起き上がるのすら戸惑うほどの激痛。


「そう、回復魔法かける?」

「頼む」

「わかったわ」


 そう言いメリザは雪乃に回復魔法をかける。


 回復魔法は肉体的負傷などは割かし簡単に治せるが、精神的負傷や魔力の乱れは治せない。

 雪乃の痛みの原因は魔力の乱れ、約二週間、それは雪乃がこちらの世界(ヴォーシュテリア)に来てから経過した時間だ、その間に雪乃が負った怪我、実に百箇所以上、戦闘回数は十を超える。

 それは雪乃の身体ではなく魂を着実に蝕んでいた。

 そこに強制的に魔力を流し込み、再生を促す。

 雪乃の魂は痛みを発した、


「ァッ!?」


 雪乃は叫ぶ、痛みを紛らわせる為に。

 それに気づいたメリザが回復魔法を止める。


「どうした!?」


 こちらに向かってきていたガリルがメリザに問い掛ける。


「分からないわ、いきなり苦しみだして……」


 メリザは戸惑いつつも状況を説明する。


 ガリルは状況を説明され、原因を推測する、一つか二つ、原因と呼べる物が分かる。


「恐らく原因は二つのうちのどれかだろう、一つが魔力の暴走状態だ、それか、こっちの可能性は低いが、雪乃の魔力が体の容量を超えているから体に痛みが生じた」


 ガリルは冷静に、原因を挙げる、しかし正解はどちらでも無い。

 転生による魂の磨耗、そして、度重なる戦闘による傷、身の丈に合わない魔法の行使、それら全てが合わさりこの状況を作った。


「雪乃は目覚めたか?」


 ハスディアがゆっくりと歩きながら雪乃の前に座り込む。


「それが」


 ガリルがハスディアに状況を説明しつつ、メリザが補足を入れる。


「ふむ、あれだな、確か、なんつったけな、えーと、マナ何とか」


 ハスディアは軽く見積もっても五千年は生きている、その中で身につけた知識は文字にして約十億を軽く超える、その中から一つの言葉を探し出すのは砂漠の中で微生物一匹を探し出すような至難の技だ。

 しかし断片でも探し出せれば後は引きずり出すだけ、と思っていたのだが、メリザがそれを知っていたようで、そこまでは至らなかった。


「! もしかしてマナアレルギー!?」


 マナアレルギー、それは、大気中に含まれるマナに対して体の免疫構造が何らかの危険を見出し、対処し起きる現象。

 ヴォーシュテリアに住まう物ならまず発症しない、起きるとすれば産まれより魔力を持たないもの。


「そう! それだ!」

「なるほど、確かにこれならこの状況も理解出来る」


 カルミナの体に雪乃の魂、普通であればマナアレルギーは起きるはずも無い、しかし、度重なる戦闘により体は疲弊している。

 そして、魔法による攻撃で雪乃の生存本能がマナを危険視した。

 現在雪乃の体では、ある変化が起きていた。

 それはマナを危険視した体が、自らを作り替えている、魔法の効かない体へと。


「しかし、どうしたものか、通常であれば魔力を持てば解決するのだが…」

「いや、その必要は無い」


 倒れていた雪乃から声が聞こえた。


「!? 大丈夫なの!?」

「ああ、何とかな」


 メリザは驚きつつも雪乃の体の心配を怠らない。

 ガリルはメリザの評価を上げる、元は、回復魔法に特化した精神的に脆いエルフ、だったのが、精神面も強く回復魔法、状況整理にも長けた存在、へと。


「どうやら新しく、スキルを手に入れたらしくてね、マナアレルギーも大丈夫みたい」

「話し聞こえてたんだ」


 雪乃は苦笑いしつつ、そっちかよ、と嘆いた。


「そうか、なら、良かった」


 ハスディアは雪乃の頭に手を乗せ撫でる。


「はいはい、ありがとよ」


 雪乃は照れたように、ハスディアの手をどける。


「で? それはどんなスキルなんだ?」


 ハスディアは真顔になり雪乃に問う。


「魔法無効」

「は?」

「え? だから、魔法無効」

「「はぁ?」」


 最初はメリザ、二度目はガリルとフレナドールが雪乃に対し、何だそれ!? のような意味を込めた溜息を見せた。


「ハッ、ハハハハッ、やっぱりお前すげえよ、何だよ魔法無効って」


 ハスディアはゲラゲラと笑いながら膝を叩く。


「そんなに凄いのか?」

「ハハハッ、いいか? 魔法無効って事はほとんどの攻撃が効かねえっつうことだ、お前は物理攻撃を捌く腕を持っている、そこへ魔法無効はお前に攻撃が当たることはほとんど無くなる」

「…まじか」

「まじまじ、多分今のお前なら俺様といい勝負が出来るぞ」


 ハスディアは笑いながら言う、その言葉はあながち間違いではない、ハスディアは基本的に魔法に頼った戦いをしている、単純な力で言えばハスディアが上なのだが、技術面で相性が悪い。

 ハスディアは動、雪乃は静、相反する二つ、一度交わればどちらかが必ず死ぬだろう。



「ハスディア様、終わりました」


 ペルスェポネが下からハスディア向かい歩く、そしてその右手には猿のような頭が握られていた。

 ここ、69階層の敵は輝猿コウエン、光の魔力により巨大化し、知性を獲た猿。

 しかし、悪魔公爵デュークデーモン相手には分が悪い、善戦はしたものの、ペルスェポネの”黒ノ言霊(ダークスペル)”の”冥雷”により、四肢を砕かれ、頭をもぎ取られ、絶命した。


「御苦労、お前は俺様とユキノのサポートに入ってもらう。

 ガリルは引き続きメリザの補助、エンフィールドはソーンズと共に索敵してろ」


 ガリルの”多重空間制御”は無菌の空間やマナ濃度の濃い治療に適した空間も作り出せる。

 それを見越してのメリザの補助、なのだろう。

 そしてエンフィールドはユニークスキルの”鳥籠”を持っている、このスキルは結界や索敵に適したスキルであり、精霊による索敵と違い、敵の種類、強さ、居場所が的確に分かる。

 しかし、精霊索敵と違い建造物の構造までは分からない、だからソーンズの精霊索敵と合わせて完璧な索敵をするために、エンフィールドをソーンズと合わせた。


 そしてどちらも、護衛の役割を持っている。

 ガリルは言わずもがな、フレナドールと同等かそれ以上。

 エンフィールドの能力は未知数だが、範囲保護魔法、そして細身剣レイピアの腕も高い、護衛なら十分な戦力だろう。

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